まるで他者の記憶を追体験したかのような読後感

まず第一に文章が非常に流麗で、それでいて読みやすいです。
難しい言葉も出てきますが、細かくルビが振ってあったり情景描写もディティールまで描かれていて、ふっとイメージが立ち上がるほどリーダビリティが高いです。
故に、感情移入しやすく、ファーストネームが明かされない主人公と読者は強く結ばれます。

内容といたしましては、安易に「恋愛」、「初恋」、「青春」、などと並び立てることも可能ですが、私はネタバレをしたくないので多くを語るつもりはありません。
ただ、正直に申し上げれば、奇想天外な主題ではなく、むしろ普遍的なテーマと言えると思います。それでも私がこの作品に★を三つ献上したのは、その「普遍的=ありがち」とも言える物語を「読ませる」筆者さまの筆力と、読後感がその理由です。

私自身、良い書き手さまと出会えて、今非常に興奮しております。皆さま、必読ですよ。