惹かれ合う運命 [side 沙織]

[side 沙織]


 ……あれから1週間ほど経った。私たちは順調に交際を続けている。


 星野さんとはいろいろな話をした。その中で、1つ驚いたことがあった。


 それは、彼が『彦星』の生まれ変わりだったということだ。



 ──話は少し前にさかのぼる。


 6月も後半に差し掛かり、梅雨明けも近づいてきた頃。私たちはいつものように、2人で駅まで歩いていた。


 その時、隣を歩いていた星野さんが、不意にこんな話をしてきたのだ。


「そういえば、そろそろ七夕の時期ですね……」


 彼は、街頭のポスターを眺めていた。


「あら、本当ですね……」


 私もつられて見てみると、そこには『7月7日の七夕祭り』と書かれていた。


「そうか……。もうそんな時期か……」


 彼は独り言のように呟いていた。私は彼に尋ねる。


「星野さんは、七夕がお好きなんですか?」


「え?あー……。好きなのかはよくわからないんですが……。えっと……言ってもいいのかな……」


 彼は何かを悩んでいるようだった。私は首を傾げて彼の言葉を待つ。

するとしばらくして、彼はこう言ったのだ。



「こんなこと言っても、信じてもらえないかもしれませんが……。実は僕、『彦星』の生まれ変わりらしいんですよ」


 ……私は驚きのあまり、何も言えなかった。



(星野さんは『彦星』の生まれ変わり……?)


 私はその事実が信じられなかった。


(私は『織姫』の生まれ変わりだから……)



 ……私は星野さんと出会った時から、ずっと彼に惹かれている。そんな私にとって、この事実はとても大きな衝撃だった。

 でも、そうであるなら、私が彼に惹かれたのにも納得がいく。


 私が黙っているのを見て、彼は慌てながら言葉を続ける。


「あ!すみません……。やっぱり、こんな話しても困っちゃいますよね……」


「えっ!……ち、違うんです!何というか……驚いてしまって……」


 私は慌てて否定する。すると星野さんは、不思議そうな顔をしながら私を見た。


「えっと……。それって、どういう意味ですか……?」



「えっと……。その……。私は……『織姫』の生まれ変わりなんです……」


 私は恥ずかしくなりながらも、正直に打ち明けた。……すると星野さんは、とても驚いたような顔をしていた。


(もしかして引かれちゃった……!?)


 不安になった私だったが、星野さんは優しい声で話しかけてきた。


「そうだったんですか……。何か、運命のようなものを感じますね……」



 ……運命。確かに、彼との出会いは運命的だったと思う。


「……はい。私も、そう思います……」


 私も優しく微笑み返す。……すると星野さんは、少し恥ずかしそうにして言った。


「あの……。もし良ければ、また今度デートに行きませんか……?」


「はい!喜んで!」


 私は笑顔で答える。すると星野さんも嬉しそうに笑ってくれた。


「ありがとうございます……。それでは、来週の土曜日にでも……」


「わかりました!楽しみにしています!」


 そう言って、私たちは駅で別れる。



 そして家に帰ってから、私はベッドに倒れ込んだ。


(来週は星野さんとのデート……。うぅ……。ドキドキして眠れないかも……)


 こんなに幸せな気持ちになったのは久々かもしれない。……彼と出会ってからは毎日が楽しくて仕方がない。


(早く来週にならないかしら……!)


 そんなことを考えながら、眠りについたのであった。



 ……この時の私は、デートの日に星野さんからあんなことを報告されるとは、思ってもいなかった―――。

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