疑問と進展 [side 文彦]
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俺は、今日の昼休みも『セボン』に行った。理由はもちろん、姫井さんに会うためだ。
(メッセージのやりとりも楽しいけど、やっぱり実際に会って話した方が楽しいからな……)
俺はそう思って、店に入った。……だが、そこに姫井さんはいなかった。
(あれ?今日はいないのか……)
俺は残念に感じたが、まだ来ていないだけだろうと思い、少し待つことにした。
……しばらくして、彼女がやってきた。
「姫井さん、こんにちは」
「あ……星野さん、こんにちは……」
彼女はなぜか、うつむきがちに挨拶をした。
もしかすると、体調でも悪いのかと思って俺は心配になった。
「あの……大丈夫でしょうか?」
俺はそう尋ねた。すると、姫井さんは少しビクッとして返事をした。
「……ぅえ!あ……だ、大丈夫です……はい」
「そう……ですか。それなら良かったのですが……。もし調子が悪いようでしたら、無理せず休んでくださいね」
俺はホッとした。……すると、姫井さんは小さくつぶやくような声で言った。
「……ありがとうございます」
俺は、その言葉を聞いて嬉しくなった。思わず微笑むと、彼女はバッと顔を背けた。
(えぇ!?……俺、なんか変なことを言っちゃったかな……)
俺は不安になった。すると、姫井さんは小さな声で言った。
「……星野さんって本当に優しいですね。私、星野さんのそういうところが好きで……」
俺は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
……好き? 誰が?……姫井さんが? 俺のことを? 俺は頭が真っ白になりかけたが、なんとか持ちこたえた。
(落ち着け……。これはきっと、俺の聞き間違いに違いない)
そう思った俺は、恐る恐る尋ねてみた。
「えっと……それってどういう……」
「えっ……?……あ!わ、私ったら何を……!?」
姫井さんは慌てるようにして、自分の口を塞いだ。……その頬は、ほんのりと赤く染まっているように見える。
(も、もしかしたら俺の勘違いじゃなくて……)
俺がそう思った時、姫井さんは恥ずかしそうにしながら俺の顔を見た。
「あ、えっと……その……。ごめんなさい!今のは忘れてくださると嬉しいんですけど……!」
姫井さんは、さらに顔を赤らめて下を向いた。……その様子を見ていて、俺はドキドキしてきた。
(姫井さんが、俺のことを好きだなんて……。嬉しいけど、信じられないな……)
俺はそう思いつつ、彼女に言葉を返した。
「えっと……。はい、わかりました……」
俺は少し迷ったが、そう答えた。……すると姫井さんは、慌てて話を変えてきた。
「……そ、それより!今日のおにぎりは、何にするんですか……?」
「お、俺はいつも通り、鮭にするつもりだけど……」
「そ、そうですよね!私もそれにします!」
そう言って、彼女は鮭おにぎりを2つ掴み取ると、そそくさとレジの方へ行ってしまった。
(なんだったんだろう……?)
俺は不思議に思いながら、自分の分のおにぎりを手に取った。
(でも、もしかしたら……)
俺はふと思った。
(……もしかしたら、勘違いじゃなくて、姫井さんも俺と同じ気持ちなのかもしれないな……)
そう思うと、なんだか急に落ち着かなくなってきた。……姫井さんのことが気になって仕方がない。
(でも、どうやったら確かめられるんだろうか……)
そんなことを悩んでいると、昼休みが終わる時間に近づいていることに気づいた。
(……うわっ、ヤバい!急いで戻らないと!)
そう考えた俺は、足早に会社に戻ったのだった。
そして、会社に戻っても姫井さんのことばかり考えてしまい、仕事が全く手につかなかった。
同僚からは「お前、どうしたんだよ……。なんか様子がおかしいぞ」と言われてしまったほどだ……。
(こんなんじゃダメだよな……。よし!気合いを入れ直さないと!!)
……しかし気合を入れてみても、やはり姫井さんのことを考えてしまう。
そしてまた同僚に「やっぱり変じゃないか?」と言われたのであった―――。
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