第26話 弟子ステータス 

オークダンジョンは焼け野原のように、煤と灰にまみれた抜かるんだ沼地が続く。


元々畑だった場所がオークに焼き討ちに遭い占拠されてダンジョンと呼ばれるようになった場所だ。


しかし、その範囲はゴブリンの洞窟型ダンジョンに及ばなくても、縦にも横にも広く


見通しも良いので隠れる場所も少ない。



特徴をまとめるなら


霧の発生場所。

罠が設置された場所。

夜営や休息取るために向いている場所。


ダンジョン内であってもオークの習性を理解していれば問題はない。



そのためのマップはガロに渡っている。



パチン



「さぁ行ってこい」



オークダンジョンの前で彼らを見送り、俺はもう一度転移を使うフリをして姿を隠す。



トレントの森をなんとか生き延びたことで、四人のレベルは更に二つ上がっている。


オークは平均レベル15なので、倒すことはできるはずなのだ。


ただオークジェネラルだけはレベルが25もあり、今のパーティーメンバーの誰よりも高いことになる。



だが、この試験を超えなければ本来の標的など相手にできない。



「オークだ」



ガロが一早く気づいてオークを発見する。


幸い、オークは一人で徘徊しているようだ。



「まずは戦闘してみましょう。相手がどれだけ強いのか知らないと」


「そうだね。まずは、僕がやる」



ディーは遠距離であることを考慮して、ファイアーアローで先制攻撃をしかけた。


オークの弱点として魔法耐性が低い。



ディーが放ったファイアーアローはオークにヘッドショットを決める。



「ガァ!!!」



オークはそのまま何も語らぬ骸とかした。



「あれ?」


「ちょっと!一撃で倒しちゃったじゃない」


「この前から思ってたけど。ディーの兄貴って命中率高いよな。弓もあんまり外さねぇし」


「そうかな?今までファイアーアローを飛ばすだけでも必死だったから」



そのあとも、二体三体とディーのヘッドショットが決まって他の三人はやることがない。


「なぁ、前から思ってたけどさ。ステータスの確認ってしてるか?」


ガロの発言によって三人が顔を見合わせる。


「先生が、レベルとか教えてくれるからしてなかったな」


「そうね。ステータスよりも、自分の能力を高めることが大事って思うようになってたわ」


「うん。何が出来るのか確認しなくても、自分の手札を把握してたから見てなかった」



三人とも訓練や指導によって、ステータスで見るスキルよりも己の力を信じるように育っていた



ネーム:ディー

オール:17歳

ジョブ:ファーストジョブ 魔法使い セカンドジョブ  狩人

レベル:23

体力 :78/100

魔力 :488/500

生命力:100/100

スキル:弓術レベル3、炎魔法レベル5、魔法の素質、炎魔法の素質、魔法強化、魔法操作術レベル1、命中率補正アップ、夜目、鷹の目

加 護:軍神の加護



ネーム:ガロ

オール:15歳

ジョブ:ファーストジョブ シーフ セカンドジョブ 冒険者見習い

レベル:21

体 力:188/200

魔 力:20/20

生命力:100/100

スキル:短剣術レベル2、暗殺術レベル1、盗み、忍び足、気配消し、気配察知、罠解除、罠設置、鍵開け、夜目、俊敏性アップ

加 護:軍神の加護


ネーム:リリア

オール:16歳

ジョブ:ファーストジョブ 剣士 セカンドジョブ 戦士

レベル:22

体 力:294/300

魔 力:45/50

生命力:100/100

スキル:剣術レベル6、肉体強化レベル1、筋力アップ、気配察知、冷静沈着

加 護:軍神の加護


ネーム:セシル

オール:15歳

ジョブ:ファーストジョブ 盾戦士 セカンドジョブ 付与師

レベル:21

体 力:1880/1000

魔 力:187/200

生命力:1000/1000

スキル:盾術レベル2、肉体強化レベル5、剛力、強運、付与魔法レベル1

加 護:軍神の加護



全員が互いのステータスを確認し合う。


俺の鑑定眼にはもう少し詳しく記されているが、それぞれが確認出来るステータスを口答で説明するならば、この程度が妥当なところだ。



「ヤベッ!セシル強すぎじゃね?」


「……そうね。そこまで強くなってるとは知らなかったわ」



ステータスを確認した各々は、セシルの異常な体力と生命力に驚きを表す。

指導を開始する前から、肉体強化、剛力、強運は持ち合わせていた。


彼女の人生が過酷でありながらも、生き延びることが出来たスキルだ。



「そっそうですか?ディーさんだった魔法に関しては飛び抜けてますよ」


「そうかな?でも、一ヶ月前の僕はレベル1で魔力も10無かったんだよ」


「えっ?」


「兄貴は努力の男だからな。今が強いのは先生の地獄のような特訓に耐えてきたからだろ?」


「地獄って……まぁ中級試験はかなり過酷だね。まだみんな初級試験を突破したばかりだろうから、これからが本番だと思えばいいよ」



ディーは魔力操作を覚えてから二週間近くの時間を費やしている。



初級試験は一週間で突破出来たのに、まったく進歩していない自分と、毎日少しずつでも秒数が伸びている実感とがせめぎ合いを行って、現在魔力操作レベル1を習得できたことは誇らしい。



「さぁ、改めて数字でもお互いのことを知ったんだ。これからはガンガン行こう。みんなは弱くない。臆病になる必要はないんだ。僕が遠距離、ガロが遊撃、セシルは守備、リリアさんは攻撃に集中していこう。普通のオークならそれほど脅威じゃないからね」


「「「はい」」」



他者と比較することで、自分が優れていることを知る。

また自分に出来て、他人に出来ないことを補う。

これがパーティーのあり方だ。

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