第21話 効率のいいレベル上げ

パチン



四人の準備が終わったことで、俺たちはダンジョンへ転移した。



そこは一種類のスライムしか現れない特殊なダンジョンだ。



「さぁ暗いから絶対に見逃すなよ」



暗い洞窟型のダンジョンの中に現れる素早さ重視のスライム。



「いたぞ!あいつだ。いけ!」



俺が命令した瞬間、セシルが自身にアクセルをかけて飛び出していく。

そのあとをガロが追いかけ、ディーが弓をかまえる。



しかし、三人が動じに動いたにもかかわらず、スライムの動きに翻弄されて捕らえることができなかった。



「えっ!何?あの動き?本当にスライム」


「ああ、スライムに間違いない。通称メタルなスライム。スライムの中で最速を誇り。最大の防御力を発揮する。魔法を無効化まで使いやがるから、倒す方法は物理攻撃のみだ」


「はぁあああぁぁ!!!何そのデタラメ性能?」


「デタラメじゃないぞ。あいつらは攻撃こそしてこないが、捕まるのが凄く大変なんだ。その変わり一匹倒せば」


「よし、捕らえた」



一番最初にメタルなスライムに攻撃を加えたのはガロだった。



「さすがは飲み込み一位」



ガロはメタルなスライムの動きを予測して、攻撃をヒットさせた。


続けて



「捉えた!」



ガロがダメージを与えたスライムにディーが矢を命中させる。


二人のダメージが致命傷になってメタルなスライムがはじけ飛ぶ。


どうやらクリティカルヒットを得られたようだ。



「おっ」


「えっ?」


「ひゃ!」


「うそ!」



四者四様にパーティーを組んでいる恩恵が受けられる。


四人で倒すことで、割り振られる経験値は少なくなってしまうが、それでもメタルなスライムから得られる経験値は、ゴブリンの1万倍だ



「レベルが三つの上がった」



ガロの声を皮切りに、互いにレベルを確認し合ってディーでレベルが二つ。

セシル、リリアで四つも一気にレベルを上げることに成功した。



「さて、あと何匹倒せるかわからないが、今日一日はここで狩りをするぞ。今のは運がいいと思えよ。メタルスライムは速度と強度がどのモンスターを倒すよりも厄介なんだ」



それから一時間近く走り回ったが一匹も倒すことが出来ない。



「どうだ?倒せそうか?」


「無理よ。早すぎ」


「最初の奴はいけたのに」


「全然当たりません」


「追いつけないよ~」



四人はバラバラにメタルなスライムを追い詰めようと躍起になっている。

だけど、それじゃいつまで経っても倒すことなど出来ない。



「お前らはもう少し頭を使えると思ったが、バカなのか?なぜ四人もいるのに同じ方向から攻めるんだ?囲い込むなり、相手の行動を制限するなり、作戦を考えろ。お前達はパーティーなんだ。


パーティーは個々の力の集合体じゃない。

力を合わせることで個々の力を超えた。

群の力が発揮出来るんだ。


だから、話し合え。お互いを知ることでお互いが出来ることが見えてくるはずだ」



俺のアドバイスを聞いて、最初に動いたのは素直なディーだった。



「僕らで力を合わせよう」


「合わせるって言ったって、ディーの兄貴。どうするんだ?」


「ねぇ、みんな。私がみんなに補助魔法をかけてもいいかな?」


「補助魔法?セシルさんは魔法が使えたの?」


「うん。先生から補助魔法を習ってたんだ」



セシルの意外な力にディーとガロは驚いていた。

今までフルメタルアーマーの印象が強くて、他への関心が持てないでいた。



「セシル。私にその補助魔法をかけてくれない?」


「いいの?」


「ええ。あなたを信じるわ」


「任せて」



セシルがアクセルをリリアにかける。


リリアは二度三度跳ねて早さを確かめる。



「行けそうね」



リリアは、レイピアを真っ直ぐにメタルなスライムに照準を合わせる。



「いくわ」



次の瞬間、弾丸のように飛び出したリリアの剣がメタルなスライムをかすめた。



「ちっ」


「スゲーじゃん。俺も俺も頼む」


「はい」



セシルはガロにもアクセルをかける。



「ウッヒョウーこれは面白いな」



ガロは気配を消すことも忘れてスピードにかまけて突進する。


そんな攻撃が当たるはずもなく。



「うわっ!」



そのまま壁に激突するガロ。



「なるほど。凄いな」



ディーは二人の動きが明らかに速くなったことに感心する。



「相手を遅くすることはできるのかい?」


「ごめんなさい。それはまだ覚えて無くて」


「覚えたとしても無駄だ。メタルスライムに魔法は効かない」



ディーの言葉に悲しそうな雰囲気を出すセシル。


俺がアドバイスを告げると、ディーは納得したようで次の手を考え始める。



「私の弓では、先ほどのように相手に一撃を加えたタイミングで当てることしか出来ない。その一撃すら当たらないとなると」


「あの、私がメタルなスライムを止めましょうか?」


「セシルが?」


「はい。メタルなスライムの進路妨害をします」



セシルはそのまま大盾を片方の道へ突き刺した。


リリアとガロに大盾の方へ待ち構えるように指示を出して、自分は反対の方からバックラーでメタルなスライムへ飛び込んでいく。



「今です」



メタルなスライムが逃げる進路に二人が現れる。


「はっ!」


「よっと」


二人の剣がメタルなスライムを切りつけダメージを与えることに成功する。


「はっ」


一瞬だけメタルなスライムが止まった瞬間。


放たれた矢がトドメを刺した。



「やった~二匹目」



セシルの声と同時に四人のレベルが上昇する。



「効率のいい狩り場だろ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る