第19話 信条

【Sideハーフライン】



私の名はハーフライン。今まで事なかれ主義を信条に生きてきた。


揉め事を嫌い。


上司からの命令に従う毎日。


事務員として冒険者ギルドに務めたのは、少しでも臆病な自分を変えられるのはないかと言う思いがあったからだ。



だが、半年ほど前に全ギルドマスターが亡くなられ、新しく派遣されてたハンズ・バンギルドマスターは豪腕な方だった。



新人の扱いは最低限に、中級クラス、上級クラスの冒険者を優遇して難度の高いクエストや貴族からの依頼を優先して攻略させるようになった。


冒険者ギルドとしての評価は高くなってきているのだが、色々なところに綻びが生じ始めている。



冒険者ギルドに数多くのクエストが発注される。



低ランク、中ランクのクエストにも意味がある。

街との交流があり、市民からのクエスト依頼や職人たちからの材料発注、商人たちからの発注などだ。


小さな物でも、コツコツと仕事をすることで信頼を勝ち取ってきた。



それは、冒険者という荒くれ者たちを市民に受け入れてもらうためでもある。

そして、新人を育てるために必要な過程でもあった。



しかし、新人は日を追う事に冒険者ギルドを去り。

中級クラス、上級クラスの冒険者を指示する小間使いのような者達ばかりしか残らない。



そして、懸念していた出来事が起きた。



「えっ!シドーをクビにした?」


「そうだ。あんな新人しか指導できん講師は必要ない」



私は頭が真っ白になる。


素性こそハッキリしない男ではあったが、前ギルドマスターと共に新人教育に力を入れてくれていた同士であった。



彼がいる限りは新人が死ぬことは少なく。

教育の面では安心だと思っていたのに彼がいなくなった。



「おっお待ちください。彼がしている仕事は他の者ではできません」


「はっ?ハーフラインよ。お前は従順で忠誠高い男だと思っていたが、私に意見するのか?」



歳を取っても元Aランク冒険者、ハンズ・バンに睨まれては私は何も言えなくなる。



「いっいえ」


「そうだ。お前はそれでいい。お前の仕事ぶりは認めている。私に逆らわず今まで通り仕事をしていろ」


「はっはい!!」



すまない。シドー。私が不甲斐ないばかりに……



シドーが姿を消して、二週間近くが経った。



ますます悪化していく冒険者ギルドは、盗賊のような荒くれ者達が増えて素行の悪さが目立つようになった。近隣住民からも苦情があがってきている。



「近隣住民から苦情が来ています。冒険者が物を壊した。市民を威嚇した。納品された品物の品質が悪いなどです。対策を講じなければ大変なことになると思います」



私は恐る恐るではあるが、ハンズ・バンに苦情を告げる。



「バカかお前は?平民が何を言おうと意味があるとでも思っているのか?我がハンズ・バンギルドは高ランク冒険者を多く在籍させておる。貴族の方々への納品は概ね好調である。冒険者ギルドとしてのランクもあがり、売上も伸びているではないか」



ハンズ・バンは苦情よりも、売上だけ見て私の話を聞こうともしない。



「小事を私に報告するな。そんなものはお前で解決しておけ」



私への丸投げを受けたため、私は私の仕事を遂行するために動くことにした。



「承知しました。それでは小事に関してはこちらで処理しておきます」


「はっ、最初からそう言えば良いのだ。わざわざ私の許可を求めにくるな!」



許可を取り付けた私は早速、目に掛けていた新人達たちに声を掛けて、これまで消化不良になっていたミッションしてもらった。報酬は私の独断で、上乗せさせた。


裁量は私に一因されているのだ。それぐらいはしないければ、冒険者たちに申し訳がない。


しかし、どうしても手が足りずいくつか、消化できないミッションが出てくる。



「今日は来てもらってすまない」


「まだ、約束の一ヶ月には到達していないが?」



先日、やめたはずのシドーが現れて事件を未然に防いでくれたという。

そのときに一ヶ月以内に事件を解決することを約束した。


その際に新人四人を育てていると報告してくれた。


私はそれを思い出して、約束に前ではあるが頼み事をするために呼び出した。



「ああ、それは今準備中だ。だが、その前に始末をつけておきたい仕事がある」


「それはお前の準備の役にたつのか?」


「ああ。だが、手持ちの冒険者では手に余るんだ。お前のところにいる新人はどうかと思ってな」


「内容による」


「……ふむ。グレートモンキーの討伐だ」



私は背もたれに身体を預ける。


本来では高ランク冒険者行うB級依頼だ。


だが、発注者が鍛冶師でハンズ・バンは対応しないという。



「なるほどな。素材か?」


「ああ、料金も安い。だが、どうしてもこの仕事をやり遂げたい」


「ふむ。……正直、今のあいつらでは手に余るが、面白い仕事ではあるな」



グレートモンキーは金色の毛を保つ猿だ。


すばしっこくて力も強く頭もいい。


決して一人の冒険者で倒せる相手ではなく。


パーティーで挑まなければならない。



「わかった。これは貸しだ」


「ああ、事件を解決できた後にまとめて払おう。もちろん、前金と後金も弾む」


「わかった。受けよう」


「感謝する」



これで全ての準備は整うはずだ。

シドーは新人教育に関して天才だと私は思っている。


そのシドーが出来ると判断したなら問題はない。


最後のピースが整ったなら、駒を進めるだけだ。


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あとがき


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