碁盤の目のるい君

食連星

第1話

「いらっしゃいませー。

初めての方ですか?」


あ…

あぁ…

「こちらでカルテを作りますので、ご記入ください。」

まじか。

結構違くて一瞬じゃ把握できなかった。


あのねさんと同じ苗字書いた

こちらのお客様は…

「あきら兄さんに聞いて来たの?」

答えなかった。


代わりに

「髪どうした。」

言われてしまった。

今、髪はホワイト。

全く気にしなくて良くなったから

タガが外れたように

真面目脱却。ひたすら不真面目。

今イヤーカフだけど、

耳ピもザクザク開ける予定。

まだ、ちょっとビビッてて出来てない。

これは秘密。


就職戦線逃しまくって見送られまくって

やっと決まり、

今まで有難うございましたーって、

あきら兄さんとかい兄のとこ

ぱーん出て来た。

ちょっと心配だから就職先を知らせといてって

言われたから

名前だけ殴り書いて。

よく見つけて来たね…


まだ僕シャンプー係。

「こちらへ、どうぞ。」

営業用の笑顔は上手く出来てる。

と思う。

鉄壁。

こんな事で崩れたりなんかしない。

耳に水入れたりなんかしない。

なんか言い始めた…

「関係ないでしょ。」

「言うまで聞く。」

「言わないから。」

「言うまで通う。」

「え…やだなんだけど。」

「外で待とうか。」

「え…それも怖い。」

はぁ…


「上がりは19時。」

「分かった。」

この情報を、どう使うのか…

何だか分かる気がするな…

はぁ…

「色変えないの?

今日、ほんとにカットだけ?」

思わず聞いてしまった。

僕とは真逆に黒い髪。

ホールも透明なの着けて地味。

お堅い職業就いたのかな。


「この辺、短くして、

ここ長めで…」

「あぁ…切る人別。

聞いた通り、申し送るけど、

また細かに確認した方が間違いがないよ。


このまま、少しお待ちください。

直ぐに参ります。」

にっこり笑って会釈をする。

ブリーチとか、暫くしてないような髪質。

何回とか聞けそうにない。


雑用色々やってたら

いつの間にか終わってて、はけてた。

いなくなってた。

このまんま夢幻だったのかもなぁとか思いながら

「おつかれしたーお先しますー。」

言いながらサロン出ると…

いた。

待ってた。


あぁ…

思ってたよりも気まずくはなかったけど、

これと言って喋る事も無かった。

今、19時でしょ。

もしかしたら…

もしかするのが、21時前くらい。

うん。

まぁ大丈夫か。


「うち寄ってって。近いんだ。」

にこっと笑うと、

「おぉ。」

って、さとる兄ちゃんが言った。


マンション着いて、

中から鍵かけるけど…

どっちかなぁと思う。

まぁ、考えても仕方ないか。


「ベッド行こー。」

さとる兄ちゃんの手を引っ張る。

「えっ!?」

って言うけど抵抗感は全く。

「驚いたふり?

全く予想外?

じゃないでしょ?」

笑う。

もうシャワーいいや。

時間時間。

さとる兄ちゃんベッドにドーンする。

なんか変わったベルトで手間取る。

ちょ…これ…

慌ててたら、ちょっと笑って外してくれた。

「これ難しいやつ…」

言うと、

「あげようか?」

って言った。

「えっ!?」

って言うと

「練習用に。」

だって…

「猿でないから練習はしなくていい…

腰浮かせて?」

ちょっと、さすがに上だけ

ぎゅーぎゅー下げたり出来ないし。


久しぶりで思い出せはしなかったけど、

しっかり舐めて咥えたら

思い出せそうな気がした。

「ゴム着けまーす。

ローション垂らしまーす。」

職場みたいに宣言してて

ちょっと笑える。

さとる兄ちゃんも、

ちょっと面白がってた。

自分もにもゴム着けると、

不思議がってた。

「汚したくないから?」

聞かれたので

「そんなとこ。」

って答えた。


ゆっくり跨って挿入する。

しっかり調教されてるから

自分のいいとこ分かる。

「あっ。うんっ…」

声が出る。

「さとる兄ちゃん、どう?

気持ちい?」

はぁはぁ言ってると、

「いいよ。」

って言われる。

表情も気持ちよさそうだから大丈夫そう。

いいな、これ。

夢中になってると、

乳首摘まんでくるし、

僕のも握って来られる。

まぁ、楽しいし

楽しそうだから、いっか。

一回戦目終了。

上縛ってビニール収納の中にポイ。

僕のも兄ちゃんのも。


「どうする?

まだいける?」

「次、動く。」

「うん。

じゃぁ、また着けるね。」

「自分でやる。」

「ん?そう?

はい。」

ゴム渡す。

座って自分の装着して、

仰向けになる。

しゅしゅしゅして装着してるの眺めてた。

「ローション付ける?」

「んー大丈夫でしょ。

そのまま、どうぞ。」

自然と声が上がる。

「さとる兄ちゃん気持ちいい。」

そう言うと、

非常に良い顔をする。

あの時ごめんって言わないといけない。

さとる兄ちゃんが、ぎゅって来て、

腹にクタンて倒れ込んだ。

背中に手を回して横に向かい合う。

自分のゴムは外して縛った。

さとる兄ちゃんのも。


「…聞こえる?」

「聞いてるよ。」

「あの時、さとる兄ちゃんの話も聞かず、

責め立てて悪かった。ごめん。」

もうあと、言葉が続かなかった。

「聞こえたよ。」

そう、さとる兄ちゃんは言った。

謝れて良かった。


「シャワー浴びてって、いいよ。

何でも使って。

冷蔵庫も、どうぞ。お好きに。

鍵そのまんまでいいから。

そのまま出てって。」

最後の方よく分からないって顔してた。

「謝りたかったけど、

何だか出来そうになくて。

こんな事しちゃって…

とにかく、もう…

ここにも職場にも来ないで欲しい。」

無言で肩を押してベッドから出した。

背中向けて、もう

さとる兄ちゃんの方は見なかった。

シャワーの音がした。

ゴム片付けなきゃ。

4つ使用済みビニールに入れて…

どこ置いておくか。

燃えるゴミの日に出すけど…

冷凍庫の奥底に突っ込んだ。

一先ず大丈夫だ。

洋服を着る。

換気をする。

さとる兄ちゃんは、僕が言った通り

そのまま出てくれるだろうと思ってた。


ピンポンの音が聞こえる…

ピンポン?

ピンポーン!

あっ寝ちゃってたのか。


何時だ今。

20時半?

少し早いけど、もしやのもしや?

「誰か来てる。」

えっ!?

えぇぇっ!?

何で!?まだ!?ここに!?いるの!?

「声殺してっ。」

さとる兄ちゃんにヒソヒソする。

ついでに回した手も離して。

まじか。

昨日、その前と鍵が無いって言ってたから、

今日も無いなら、一先ずセーフ。

鍵持ってたら、もうアウトに近い。

限りなく…

あぁ…絶体絶命デンジャラス。

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