三・一一

 屋外に出したのが悪いのだ。

 だから栞を家に呼び出して、手足を拘束して自室に閉じ込めてみた。

 昼食を持って自室に入った時、栞はすでに瀕死だった。

 救急車を呼んだが、搬送先で死亡した。

 急性心筋梗塞だった。


 ——栞は世界に殺される。


 どうやらそういうことらしかった。


 屋外にいようが屋内にいようが、学校だろうが駅だろうが帰り道だろうが、時間さえ関係なく、それでも栞は死んでしまう。栞の生を世界が拒む。僕には彼女を救えない——。


 もしこれがやり直しの効かない世界なら、きっとそれを受け入れることだってできたことだろう。

 だが僕には力がある。何故かは分からない。どういう理屈かも。だが僕には確実に、世界をリセットさせる力があるのだ。ならば使わない手はない。


 そうだ、今までどうして忘れていたのだろう。


 僕は何も変わっちゃいない。ただ栞への恋と平和な日常の中で忘れていただけ。僕は昔と同じ頑固で偏屈な人間だ。アウトローであり、反骨精神の塊であり、エルヴィス・プレスリーもかくやと思われるロックの精神の体現者だ。


 世界よ、お前はそんな男に喧嘩を売ったのだ。

 お前が栞を拒むのなら、僕がすべきことはただ一つ。


 何があっても彼女を守る。


 何度失おうと、何度繰り返すことになろうと、僕は必ず彼女を守り切って見せる。


 それがこの世界への反逆だ。


 ——かくして、三千世界に及ぶ僕の孤独な挑戦が始まった。

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