第6話出会い


☆★☆


食堂には朝早いにも関わらず、文化祭当日ということもあって外部の人も来ていてごった返していた。


注文をレジで済まし、残り少ない席に急いで座り、一安心していると背の低い見た目70代くらいの白い髭を生やした老人が突然話しかけてきた。


「すまない。ここの席は空いているじゃろうか?」


「え、あ、はい。あ、空いていますよ」


「ありがとう。助かるよ」


 そう言うと、老人はどかっと僕の席の隣に座った。

 

正直、今は人とあまり会話をしたい気分ではなかったけど、老人はそんな僕の様子を意にも介さず、


「ああ、それと一つ聞きたいことがあるのじゃが」


 と言い、ポケットから文化祭の案内パンフレットを取り出して僕に見せて聞いてきた。


「儂は今日この学校のある出し物に強く興味を抱いてきたのが、君は午後から体育館で開催される”自作アニメ”について知っているかね?」


「あ」


「なんじゃ、知っとるのか?」


 ここで「知っているも何も、僕の出し物です」といえば良かったのかもしれないけど、面倒な事になりそうな気がした。


だから、


「いえ、知らないです。すいません」


シラを切った。


「いや、こちらこそすまないの。ただ、一つだけ気になったことがあって、の」


 そう言った老人の表情はとても納得できない表情を浮かべていた。


さっきまで相手をするなど微塵もなかったけど、思わず聞いてしまった。


「な、何ですか?」


「いやこのアニメ、関係者がたった2人なのじゃ。2人でする気なのか。いやそもそも、その様なことが可能なのだろうかなと儂は思ったのじゃが。君もそうは思わないかね?」


「は、はあ……」


やっぱりそう思うよな。


2人でやるなんてそんな無茶な……。


 とりあえず気の抜けた返事を返した僕。


老人は、そんな僕に


「まあ、実際に儂の目で見れば全てわかる事じゃな。すまん、な、席を空けてくれた君にこんなことを聞いて。飯も食べ終えたので、これで失礼するの」


 そう言って、お爺さんは去った。


僕もしばらくして朝食を食べ終えると、御堂を起こしに行くまでの間の暇な時間。


午前の部で行われるクラスの出し物でも見物して、ぶらぶらすることで、時間を潰すことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る