第28話 ソルティキャップ

 俺は広崎さんの仏壇の前に座り、手を合わせた。

「広崎さん、元気にしてますか? サーフィンしてますか?」

 俺はそっと目をつぶって、広崎さんと出会った頃を思い出した。

 汗の滲みた野球帽を落とした。それを塩アレルギーである広崎さんが拾った。こんな小さな出来事が全ての始まりだった。

 俺は広崎さんのことを好きになった。初めて人を好きになった。そして俺はまた大切な人を失くした。だけど彼女の夢を知り、俺はまた大きな夢を追いかけることが出来た。

 今まで過ごしてきた日々の一つ一つが今を作っている。今思えば、過去に起こったことは全て奇跡なんかじゃなかったんだ。奇跡なんかよりももっと強い、必然的な運命みたいなものだったんだ。


 いつか彼女の夢が叶うその日まで、俺と叶汰はまた前を向いて走り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソルティキャップ改編前 白藤しずく @merume13

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ