従魔『ゼロ』のテイマーはギルドを追放された途端、最弱ながら美少女従魔をゲットする。えっ、もう1体も?~可愛すぎる2体の愛がハンパなく、遂には最強にまで押し上げられました♡~

桃色金太郎

ネームドテイマー誕生

第1話 突然の追放

 ――テイマーギルドの従魔宿舎


「無能テイマーのワンダーボーイ。貴様はこのテイマーギルドから追放だ!」


 突然の怒号、僕はあわてて振りかえる。


 するとそこには、新しくギルマスになったトランプさんがいて、いきなりグーパンチで殴ってきた。


「ええぇぇぇえぇぇえ?!」


 あまりのショックで固まった。


「えぇぇじゃねぇよ。お前の世話したグリフィンが、仕事先で大暴れだ。これは全てお前の責任だからな!」


 と、その言葉で我に返る。


「ま、待って下さい。病気のあの子を仕事にって。ウソでしょ?」


「あっ……(そうだった)」


 トランプさんはバツが悪そうに口ごもる。


「絶対に病院へ連れていくって、約束をしたじゃないですか、それなのになぜ?」


「うぐぐっ、ク、クチごたえするんじゃねぇぇえぇ! 仕事が優先に決まっているだろ。それをフォロー出来ない管理に問題があるぞ。やっぱりお前の責任だぁぁああ!」


 僕の仕事は、このギルドで行っているレンタル従魔の世話係だ。

 ギルドメンバーの従魔がここに集められ、それを一手に引き受けているんだ。


「責任があるからこそ、今回のことは納得いきません」


 現場をないがしろにする無神経なセリフ。

 僕はいきどおりを感じ、譲らない思いで強くでた。


 だがトランプさんは苛立ち、逆に僕を責めてくる。


「うっせえ。そんな事よりもお前の事だ。ここはテイマーのギルドだぞ。1匹もテイム出来ない能なしは必要ないんだよ!」


「うっ、そ、それは……」


 これには僕も言い返せない。それは僕のジョブに原因があるからだ。


 実は僕、ユニークジョブの持ち主。だけど、そのジョブが問題なんだ。


「ふん、〝ネームドモンスター専門テイマー〞だっけ? 文字通り、ネームドモンスターテイム出来ないって、どういう事だよ。なぁ、名前ばかりが大層で、全く役に立たないジョブ持ちが、ギルマス様を相手に、偉そうな意見を言ってもいいのかよ、えっ?」


 と、意地悪く笑ってくる。


 ネームドなんてレアなモノ、滅多に会えない幻と言ってもいい存在だ。

 テイム出来る機会なんて皆無だ。それを分かっていてのセリフだ。


「おい、聞いてるのか。この従魔なし。お前はこの5年間で結果を出せたのか?」


「で、でも僕だっていつかは……」


 と、言いかけたのをさえぎられる。

 そして、腰をふってバカにしてくる。


「ガハハハハハハハー、マジで言っているのか。だってお前ってクッソ弱いらしいなぁ。スライムにすら負けたんだろ。それでどうやってテイムするのだ? えっ、何か秘策でもあーるーのーかーなー?」


 ない。あったらこんなにも悩まないよ。

 Fランクのスライムより弱い僕。だんだん惨めな気持ちになってきた。


「それと周りにウソつくし、ウザイんだよ」


 身に覚えのない事まで言われはじめた。これには慌てて否定する。

 だけど、トランプさんは止まらない。


「お前、世話する従魔へのバフが、ベテラン勢より上だって息巻いているだろ」


 ギルドメンバーから感謝される事は多いけど、自分からなんてとんでもないよ。


「ウソつけ、ウソつけ、ウソつけーーー! ワシの嫌いなヤツを教えてやろうか。それはなぁ役立たずで、従魔もいない、それでいて嘘つきで、陰気な顔をしている従魔の世話係だ。おっと、全てお前に当てはまるな? ふむふむ、やっぱ追放決定だ、ガハハハハー」


 今までこの人とは、それなりに付き合っていたつもりだ。


 でも、それがギルマスになった途端これだなんて。

 立場で態度が変わる人だとは……なんだか心が冷えてきたよ。


 すると、横にいたユニコーンが、心配をして話し掛けてきた。


『ワンダくん、揉めているなら、私がガツンと言ってやろうか?』


 鼻で優しくつついてくる。


「あっ、大丈夫だよ。キミは昨日の行事が大変だったしさ、休んでいてよ」


 この言葉だけでも救われる。ちゃんと従魔と付き合えていた証拠かな。


「ほら出た、キッショイ独り言。ひくわ~~~~~~~~~~~~~~っ」


 と、腰を振って笑うトランプさん。


「いやいや、声掛けって他のテイマーでもしているよ。別におかしい事じゃないでしょ」


「バカか、道具に媚びを売りやがって。コイツらはゲンコツで言う事を聞かせればいいんだよ。こうやってな、ウリャャャャャヤ!」


 トランプさんは、急にユニコーンの鼻面を殴りとばした。


『痛いー、このオヤジ何様のつもりよ!』


 なんの理由もなく殴られたユニコーンは怒り、いまにも噛みつきそうな勢いだ。


 慌ててユニコーンを止めるけど、トランプさんの方がその態度に怒りだした。


「なんだ従魔のクセに、その反抗的な目は? よーし、徹底的に教育してやる。おい、そのホウキを貸せ」


「貸す訳ないじゃん、何いってんのさ」


 詰め寄ってくるトランプさんと揉み合いになる。

 だけどトランプさんの巨体に押されジリ貧だ。


『ワンダくん、危ない。いま助けるからね、エイッ!』


 と、ユニコーンが強烈な体当たりで割って入ってくれた。


「いだだだだだだぁぁぁぁああ! つ、つ、突き飛ばしたな。お前がやらせたのだろ。おい、警備員ー、コイツをつまみ出せ」


 ヨタりながらも悪態をついてくる。

 すぐに来た警備員を見て、自分の有利を確信し、更にあおった表情になっている。


『ワンダくんを放せ。もうこうなったら、この角で土手っ腹どてっぱらを……』


 ユニコーンがグッと体を沈ませた。


「わーーーー、止めなよ。トランプさんもほら、ユニコーンに謝って下さい」


 他の従魔もあちこちで騒ぎだして、もう現場は大混乱だ。

 日頃のトランプさんへのウップンが大きいみたいだ。


『みんな、ワンダくんを助けるぞぉぉ』

『能無しトランプに鉄槌を!』

『やつのデッカイ尻を噛んでやれ』


 どんなになだめても、みんな聞いてくれない。それほどトランプさんに怒っているんだ。


 このままだと、トランプさんの身が危ない。

 マズイと思い、僕はみんなを止めるためと、自分でも驚くほどの大きな声をだした。


「もう、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」


 …………みんな動きが止まっている。よ、良かった。でも、ここまでかな。


「トランプさん、今までお世話になりました。僕……ここを出ていきますよ。でも、最後にもう一度聞きます、本当に僕は追放なんですね?」


『ワンダくん……』と、従魔たちは寂しそうにしてくれている。


「ガハハハハハハハー。撤回されると思ったのか? バカなやつめ。それとグリフィンの件で、賠償があるから退職金は出ねぇぞ」


「もう、それでいいですよ」


 肩をすくめて答える。


「それと今月の給料もだぞ」


「好きにしてください」


「おーし素直じゃねえか。それじゃあ、さようならだな。グッバイ、お疲れちゃ~ん。従魔なしのテイマーく~ん」


 トランプさんは、また腰をふって高笑いをしていた。





 10才から懸命に働いたギルドなのに、呆気あっけない終わり方だった。


 あまりの理不尽だ。


 僕はユニークジョブの他に、神からの贈り物と言われている【加護】を持っている。

 当然だけど、性能は破格。誰もがうらやむモノだ。


 そして加護だけじゃなくスキルだって、他では見たことのないモノ。レベルの上限が【神】だ。


「加護と神上限、前代未聞の組み合わせか……でもなぁ」


 なのに、自分の境遇に辟易へきへきするよ。悔しいどころのレベルじゃない。


「ステータスオープン……」



 名前:ワンダーボーイ

 ジョブ:ネームドテイマー

 物理戦闘力:G

 魔法戦闘力:G

 加護:ラケシスの寵愛(運命の神により、全てのスキルに恩恵が生じる。不屈、勇気、博愛を元にその範囲と効果は変動する)


 スキル:能力アップ《1/神》 スキルアップ《1/神》 会心率アップ《1/神》 慈しみの1/神 テイマーの1/神 状態異常(回復、付与率)《1/神》


(上限神=最終的に神のレベルまで行使できる。成長率も高水準)



「スライムより弱いステータスか。……徹底したサポートタイプだよね。はぁ、僕の未来はあるのかなぁ」


 だけど僕は諦めたくない。何がなんでもテイマーとして活躍をしたいんだ。


 いや、グチッている場合じゃなかった。収入だってゼロになったんだ。


 「ヤバいよね。……こうなったらまたアソコに行くしかないか」


 この決断が、僕の人生に大きな転換期をもたらすとは、この時は夢にも思ってもみなかったよ。




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読んでもらいありがとうございます。いかがでしたか?


報告ですが、▶2022年12月1日(木)◀に新作を出したいと思います。


カクヨムコン8に挑戦します。10万文字以上の長編です。


【題名】

覚醒したスキル進化で最強ダンジョン攻略~神が俺を見てるかも


読んで頂ければ嬉しいです。


https://kakuyomu.jp/works/16817330647987695884/episodes/16817330647987709124

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