幕間 紫苑と祥那。

 お互いに厄除けの為に女の子の服を着ていた所から、出会いが始まる。

 紫苑は祥那を可愛い女の子だと勘違いし、祥那は自分と同じで異性装をさせられているんだなと思った。


 そして紫苑の勘違いの初恋は直ぐに終わりを告げ、両親はどう育てるかで激しく争い、紫苑は祖母の家へ。

 騒動を知った祥那の両親は、兄弟を連れて紫苑の祖母の家へ。


 男の子でも好きなままの紫苑と、それの何が問題なのか分からない兄弟は仲良く遊んだ。

 そして紫苑は兄弟の近くの寮へ通う事に、週末は祥那家や祖母の家に戻った。


 両親はと言うと、争いの果てに不倫し親権を放棄、姉や兄との接触もさせない方針となった。

 要するに紫苑は捨てられた。


 だが紫苑は特に気にしなかった、祥那が好きだから。


 そうしてそのまま成長し、紫苑は女の子も好きになった、祥那家の隣の小雪ちゃん。

 でも祥那兄を好きだと知り、納得して終わった。


 学生時代には紫苑が祥那の周りを牽制し、祥那は勉強するのに楽だからとそのまま放置。

 そうして月日が経ち、進路指導の時期になった。

 祥那は従者、紫苑も従者になった。


 そのまま、何事も無いまま月日が経ち、召喚者が現われた。


 李 武光。

 エミール・ペンドルトン。

 そしてマサコ=リタ・小野坂。


 祥那は武光へ、紫苑はエミールへ。


 第2地球を退け、エミールだけが残る事に。

 そのサポートとして紫苑が従者を継続、祥那は交代要員に。


 すれ違う中で、男同士でも子を成せる魔道具をと、紫苑がエミールへと願った。

 エミールが願いを聞き届け、魔道具を受け取った紫苑は祥那の元へ。


 だが既にお付き合いを始めたと、華山香の事を告げられ、本気だったとは思わなかったと謝られた。

 そして紫苑は魔道具を返し、エミールの元へ従者として戻った。


 それから少し経ち、エミールが高校へ行く事になった頃。

 交代の際に祥那が別れた事を紫苑へ報告した。


 そうか、とだけ言い。

 祥那は仕事へ、紫苑は休暇へ。


 もう諦めたのに、紫苑はとても悲しかった。

 もう自分が知っている祥那では無いから、そうなのかとしか思えなかったから。

 知らない部分が有る事で興味を失ってしまっていたから。

 別れた事を嬉しく感じなかったから、悲しんだ。


 こんなんだから、誰からも愛されないんだと思った。

 もう誰からも愛されないんだと気付いた事が、その事の方が悲しかった。


 だってもう、祥那に好きだと言われても嬉しく無いだろうと思ったから、祥那と一緒に居たいから従者になったのに。

 性転換の魔道具を請う為にもと打算は有ったけれど、本当に召喚者や転生者を支えていた、そして今は支えになった。




 一方の祥那は、彼女と別れたら前の様に戻れると思っていた、紫苑がまた仲良くしてくれると思っていた。


 でも現実は違った。

 交際期間中ですら遊びの誘いも有ったのに今は無し、連絡事項の時の軽口も、報告の時の雑談も無くなった。

 何か悪い事をしたか聞いても、何でも無い、気にしないでくれと言うだけ。


 そしてお祖母さんが無くなった時も連絡は無く、お葬式を済ませた事を家族経由で聞いた時は怒った。

 どうして言ってくれ無かったんだろうと。


 それを幼馴染の小雪ちゃんが怒った、アンタが本気にしなかったのがそもそも悪い、怒る資格は無いと。

 そして兄からは謝られた、男同士には子作りの可能性が無いから友情のままで居た方が良いと、そう余計な事を言ってしまった、魔道具の可能性を考えきれずに言ってしまったと。

 母親は呆れた、召喚者様が来た時点で再考すべきだったと。

 父親は残念がった、情操教育にもう少し力を入れれば良かったかも知れないと。

 義姉は泣いた、紫苑が可哀想だと。


 祥那は困惑した、平和になったから、落ち着けと言われていたから女性との結婚を考え、付き合った。

 魔道具の事は確かに考えなかったけれど、私的に利用は良く無いから考えもしなかった。

 でもその魔道具が有るなら、どうして紫苑はと。


 母親はそもそも紫苑と一緒になればと、そう言う意味で行ったんだと。

 父親はタイミングだと、魔道具の事を知る前に別れたのは知っているけれど、魔道具が出来たから別れたと思われない為ではと。

 義姉は、もう心が折れてしまったのかも知れないと。

 小雪は、好きじゃ無くなる事も有るんだよと。

 兄は黙ったままだった。


 祥那は紫苑に会いに行った、お祖母さんの居ない独りの家に。

 亡くなった事を、どうして言ってくれなかったんだと。


「祥那は勤務中だったし」

「見れなくても受信は」


「見た後で謝られても困るし、何も出来ないでしょ」


「あ、香典を」

「別に良い、世話になってるからママさん達からも貰って無い」


「あの、お線香を」

「良い、気持ちだけで充分だし、疲れてるから今度でお願い」


「どうして、そんな態度なんですか」

「俺は頑張って諦めたのに、ちょっと合わないからって別れて欲しく無かった。失望した」


「しょうがないじゃないですか、食の好みも考え方も」

「体の相性も?下手だったから別れたんだって軽口言ってきたよ、俺とか賢人に」


「そん、だから、そう言う所が嫌で別れたんです」

「別にもう良いって」


「良く無いんですってば、何で」

「俺だったらどんな事も我慢した、合わせた。なのにアッサリ分かれてさ、2人共、俺の気持ちを知ってて付き合ったのに」


「本気にしなかったのは、悪い事をしたと思」

「本気だと思われて無かったって分かった時点で凄く辛かった、でも俺もそう行動してたし、仕方無いってなった。なのにアッサリ別れて、ちょっとも嬉しく無かった、もう俺の知らない部分を沢山持ってる祥那なんだよなと思ったら、どうでも良くなった」


「そんな事で」

「大事。ずっと一緒だったから、だから凄く大事な事なんだよ、俺にとって。君にそんな事って言われても、大事な事だった」


「だったって」

「どうでも良くなっちゃったんだもん、まだ心苦しい時も有るけど、津井儺さんがどうでも良くなった」


「拗ねてるんですか?」

「だったら良かったけど、もう結構経ってコレだし、違うんじゃない」


 神様の悪戯か手助けなのか、エミールから連絡が有った。

 お仕事をしたいなら直ぐに復帰しても良いし、休暇を延長しても良いと。


 紫苑は直ぐに仕事へ復帰する事を選んだ。

 もう自分には仕事しか無いから。


「何も仕事に逃げなくたって」

「逃げじゃないよ、もう何も無いんだもの、仕事だけが俺の生きがいに、なっちゃった。それはありがとう、生き甲斐をくれて。もう帰って、準備して仕事に行くから」


「この家は」

「売るよ、寮に入る」


「思い出とか」

「嫌な記憶も有るし、まだ話したいなら手紙かメールにしてくれる、後で読むから」


「分かりました」


 納得して無い顔だなと紫苑は気付いたけれど、無視して扉を閉めた。


 祥那は何にも納得出来無かった、どうして無関心になられたのか分からなかった。

 ただ、拗ねてるだけなのかもと。


 家に帰ってその事を話すと、呆れられた。

 紫苑が潔癖なのは知っているだろうと、だからきっと、他の人間の影響の有る人ではダメなのだろうと。

 実の親兄弟の事を気にしなかったのは、祥那が居たから、お祖母さんが居たから。


 でも祥那が傍から居なくなって、お祖母さんも居なくなった。


 タイミングが悪かった、魔道具を受け取って有頂天の時に付き合う報告をされて、天国から地獄へ落とされたんだろう。

 折れて諦めて覚悟して、友人として生きるつもりだったのに、それも祥那が取り上げたんだと。


 好きだからこそ許せない事も有る、せめて本気かも知れないと思っていたら、今は仲良く家族として居られたかも知れないと。


 そして母親が聞いた、どうして本気にしなかったのか。


 子を成せる可能性が無いと思っていたから。

 それは紫苑も良く言っていたし、仲が良い友人程度の関係だったから。


《アンタ、あの子がアンタの為にそう距離を取ってたと、そう思う事もしなかったの?》


 思わなかった。

 気付こうとしなかった。

 そうする人間だと知っていたのに甘えていた。

 とても都合の良い存在だったから、自分の都合で紫苑の気持ちを認めなかった。




 エミールは紫苑へ気を遣うと同時に、親しみ易さも感じていた。

 同じ孤独な境遇で、しかも個人的に請い願われた事が世界を変えたから、良い方へ自分の力だけで叶えられたと思ったから、恩義も感じていた。

 兄の様に慕い、紫苑も弟の様に接した。


 祥那は反省して、メールも手紙も何通も出した。


 けれど返事は無し。

 読んでくれるとも、返事をするとも言われて無かった事に気付いた。

 自分に興味が有って、好きだったからしてくれていた事、好きだからしないでいてくれた事の多さに気付いた。


 自分にだけ、雑談も軽口も無し。

 華山香の悪意無き言葉を即座に諫めた、祥那に遠慮してしなかっただけだからと、上へも報告をした。


 そして無意識に反撃する性格の華山香に仕返しをされた。

 エミールと親し過ぎると。

 バイセクシャルで有ると公言しているし、フリーだから危険なのではと。

 そして紫苑はその意見を呑んだ、接触は神獣や他者が居る時だけにしたし、裏方に回る様になった。


 相手が居れば監視を緩めると言われたが、そう好きになれる相手も居なかったので、紫苑はそのまま仕事を続けた。


 祥那は付き合う相手を完全に間違えたと思った、過去を消したいと。


「どうしてもお話しがあります、紫苑さん」


 エミールも居る前で、紫苑へ祥那が言った。

 自分の記憶を消せば、また前の様に戻ってくれるのかと。


「無理」

『ヤキモチ妬きさんですもんね、シオンさん』


 その事も祥那の頭から抜けていた、前なら覚えていた事、付き合う前に良く周りに誂われていたから。

 ハッとした表情を見て、紫苑は更に不機嫌になった、そんな事も忘れられていたのか、そう気にして貰えて無かったのかと。


「俺が津井儺さんに無関心だとしても、過去を更に抉られて不愉快だわ。エミール、性交渉すると、こう友情や勉強が疎かになる場合が有るから気を付けてくれよ。コレは嫌味半分、反撃半分だ」

『分かります、だって無関心な感じで紫苑さんを蔑ろにしたんですから、僕は何も聞かなかった事にします、半分は』


「おう、宜しく、仕事辞めたく無いし」

『もし辞めても、いえ、辞めませんか?それか移籍か、個人的に雇われませんか?』


「性癖がなぁ」

『でも、男は祥那さんだけだって言ってたじゃないですか』


「それを証明する手立てが」

『色欲さんに相談しましょう、僕も見学に行きたかったので』


「1層目でノンアルコール、監視付き」

『良いですよそれで、ふふふ』


 仲良く意思疎通をする紫苑とエミールに、祥那は嫉妬した。

 初めて嫉妬した。

 そして賢人へ相談した、友情にも嫉妬は有るのかと。


「まぁ、有るんじゃ無いっすかね」

「その、例えば」


「あの、俺って津井儺さんが嫌いなんでキツい言い方になるかもなんすけど、良いですか?」

「え、僕、君に何か」


「俺には何もして無いけど、紫苑さんにしたじゃないっすか、裏切ったじゃないっすか」


「そんな、裏切りって」

「そりゃだって紫苑さんは津井儺さんを大好きで、津井儺さんも照れて素っ気ないのかなって思ってたのに。あんなに露骨な紫苑さんの事を何とも思って無かったって、有り得ないんすよ、人として、恋愛面で。しかもあの華山さんと付き合うとかマジで無いっすよ、何でアレなんすか?」


「好きだと言われて、子供を作る気が有ると言われたので、考えてみようかと」

「子供の為っすか」


「そこまでは言いませんけど」

「分かりますよ、女の方が良いって別れる揉め事も有るって。でもだからって、紫苑さんに正論だからってじんわり嫌味を言う人間を、良く抱けましたね」


「別に性欲で、って言うか影で嫌味を?」

「津井儺さんが居ない時に、ギリギリの言い方なんで。そんなのも知らないとかダッサ」


「それは」

「まぁ、もう別に良いんすけどね、俺が尊敬すんのは汚れたナンバーワンより紫苑さんなんで」


「汚れたって、誰が」

「皆っすよ、大好きなのに津井儺さんにイチャイチャしなかった紫苑さんを見て、皆が純潔を守ってんだなって思ったのに、アンタが裏切ったんすよ」


「好きなんですか?」

「人としてっすよ。ヤれるかヤれないかで言ったらヤれますけど、尊敬だけっす」


「ヤれるんですか?」

「だって、津井儺さんやエミール様に優しい所を見てますし、上手そうっすよね。あ、下手だから別れたってのは信じて無いっすよ、性格の不一致だとは思ってんで。で、友情のヤキモチっすよね」


「あぁ、はい」

「友情にも独占欲が有るんすよ、だって、一緒に居られる機会とか時間が減るじゃないっすか。で、あんまり知らない時間が増えると、人のモノになったんだなって、諦められる。俺らも意外だったんすよね、魔道具が有ればって思ってたんで、そこも裏切ったんすよね、皆の期待」


「そんなに、そう好きそうに見えてたんですね」

「あー、もう良いっすかね、凄くムカつくんで立ち去らせて下さい」


 祥那が相談すればする程、友人知人からは距離を置かれる様になった。

 何だかんだ紫苑とくっ付くと思っていた面は有ると、中には紫苑を批判する者も居たし、仕方無いよねと中立的な意見を言う者も居た。

 そして、紫苑は無関心になった理由すらも、誰にも何も言って無い事が分かった。


 そして誰もが余所余所しく、少し冷たく見えた。

 紫苑ならフォローしてくれた事は友人を越えての行為で、好きだったからだよと。

 そう、幼馴染の小雪ちゃんが教えてくれた。


「それは、紫苑が情に厚くて」

《それも全部、祥那の可能性を残す為だったのに。本当、嫌いになりそうなんだけど》


「確かに僕は判断を謝りましたけど」

《キスも何も無かったからって、好きだったって思って無かった事がもう、無理、それが最悪なんだよ紫苑にとっては。だって、祥那が女だったと仮定して、紫苑が大事に処女を守ってくれてたのに、他の男に行ったら最低だって思わないの?》


「それは、そうですけど」

《そうとも真剣に考えて無かったんだ、最低。あんなに好きだって言ってたのに》


「他の人にも」

《全然違うのに、もう無理、帰りましょ小春》

「もうウチに来ないでね祥那お兄ちゃん、私も祥那お兄ちゃんが大っ嫌いだから」




 エミールの視察と紫苑の性癖を試す為、色欲の店に隠密で行く事になった。

 付き添いには賢人等の従者、そしてエミールからは祥那が指名された。

 エミールなりの復讐なのか手助けか、紫苑には内緒で祥那が見張りをする事に。


 際どい恰好でも、言い寄られても、男にも女にも紫苑は反応しなかった。

 祥那はそこで初めて、本当に紫苑の心が折れてしまったのだと実感した。


 罪悪感から逃れたいから、そう理解しなかったのだろうと虚栄心に言われ、やっと本当に自分の事が好きだったのだと認める事が出来た。

 なのに、紫苑は無関心なまま。


 祥那にと言うか、もうエミール以外の人間には無関心になっていた。


「少しでも嫌いだなんだ、そう気持ちが揺らいでれば手助けも出来たけれど」

《すっかり冷えて固まっちゃって、可哀想》


 そうさせたのは祥那、認めたく無かった。

 友情だったとしても好きだったのだから、自分がそうさせた事を認めたく無かった。


「仮に、もう、僕が好きだと言っても、ダメなんですよね」

「友情程度じゃね、アンタが1番良く分かってるんじゃないの」

《そう責めたら可哀想よ、若気の至りって良く有るもの》


「永遠の友情って、時には差別の有った時代の愛の告白なのに。鈍感な子って嫌いなのよね私、アッチに行くわ」

《行ってらっしゃい、加減してあげてね》




 友人になろうとしてくれる者には、紫苑はとても優しかった。

 そして大罪だと知っても、態度は変わらず、そうして虚栄心と紫苑は仲良くなった。

 祥那と紫苑程では無いけれど、祥那には心苦しかった。


「無性が有利に働く時代が来るなんてね、感慨深いわ」

「虚栄心が良い人だからだよ、ありがとうございます」


「私も極端な方だから良いのよ。でも勿体無いわね、モテるのに」

「子孫を残したかた人が男で、でももう童貞じゃ無いから無関心になったクズなのにね」


「大事にしてたら当然よ、弟でも姪っ子でも、適当に捧げたなんて聞いたら裏切られたって思うわよ」

「家族居ないんだ、エミール以外」


「でも、エミール君はどう思ってるかしらね」

「困るわ、兄で居たいんだけど」


「なら、お兄ちゃんがどれだけチョロいか試してあげなさいよ」

「えー、靡かれても困るんだけど」


「なら怒ってあげれば良いのよ、逆に距離を置くチャンスよ?」


「あぁ、うん、分かった」


 紫苑が女になり、エミールの元へ。

 コレはエミールの配慮、女の紫苑に祥那が何も思わなかったら、何もしなかったら手助けを諦めるつもりで、最初から仕組まれた事だった。




 祥那は、紫苑が最初から女性だったら、きっともっと違ったんじゃ無いかと思った。

 今頃はもう、結婚してたかも知れない、子供が居たかも知れない。

 傍で楽しそうにしてるのは自分で、そしてもっと距離が近くて。


《臆病な人は、初めて好きって自覚するのって、凄く怖い事なんですってね。人間は失恋で死んでしまう事も有るから、そう、アナタは彼が死ぬなんて想像もして無かったのね》


「ずっと、一緒に、無条件にずっと一緒に居れると、思ってたんです」

《でも、それをアナタが壊した》


 怖かったから。

 傷付くのも、傷付けるのも怖かった。

 紫苑の家族の様に、紫苑を傷付けるのが怖かった。


 友情なら大丈夫だろうと思っていた。

 紫苑との友情なら離れる事も無いと思っていた。

 そう思いたかったから、好意を受け入れなかった。


「僕なりに、大事にしてたんです」

《魔道具を手に入れた事を知って、あの子が先にアナタへ告白したの、それをエミールちゃんは知ってるから手助けしてくれてるのよ。紫苑ちゃんの幸せの為に関心を持って、良く観察して、良く考えてくれる子なの》




 予想外にエミールから迫られている時に、女の紫苑の前に祥那が現われた。

 前ならきっと助けに来てくれたのかと思えただろうけれど、今はただもう叱るか何かしに来たのだろうと、紫苑はそう思った。


「僕が妊娠する側になりますから、また、振り向いて貰えないでしょうか」


 その言葉を聞いた瞬間に、紫苑は全てを悟った。

 自分と祥那の為にエミールが動いてくれたのだと。


 けどもう、エミールにそれだけ心配させていたのだと、そう自省する方向へと行くだけだった。


「ごめんねエミール、そう心配を掛けさせてるとは思わなかった、ごめんよ」

『あの、無理に仲良くとかでは無くて』

「聞きました、魔道具を得た事を違法な手段で知ったと、そのフォローだとも」


「あぁ、すみません、報告して良かったのに」

『僕も後から知って、シオンさんが諦めたって言ってたから黙ってただけで』

「その、僕らからの報告は」


「賢人に報告させるけど良い?エミール」

『はい、言うのが遅くなってごめんなさい』


 紫苑は祥那を一切見なかった。

 関心はもう、仕事だけ、エミールだけ。


 結果的に、自分もこうしていたんだと祥那はやっと気付いた。

 仕事や友情を言い訳にして、紫苑を見ていなかった。

 関心を寄せず、示さず、好意への返事もしていなかったと。


 そして自分には軽く挨拶をするだけで、エミールと共に立ち去ってしまった。


 渾身の告白にも、返事もして貰えなかった。

 遅過ぎた、何もかも遅過ぎた。


「遅過ぎたんですよね、全部」

「そう思考停止したら楽よね、悩む事も苦痛を感じる事も短時間で済むもの。傷も浅いんだし、さぞ楽でしょうね」

《もう少し考えた方が良いんじゃないかしらね、どうしたら良いかを、ね?》


「そうよ、コレ以上周りに嫌われてもやり辛いでしょう、それは流石にエミール君も願っては無いわよ」

《紫苑ちゃんはもう怒ってないわ、もうエミールちゃんへのフォローしか考えて無いから大丈夫よ》




 それでも、この事を切っ掛けに紫苑の態度が急激に軟化した。

 雑談もする様になって、軽口も言って貰える様になった。

 華山香がクビになった事で気が楽になったからと、紫苑が言ったので周りも納得した。


 けれどそれは全てエミールの為だった。

 遊ぶ約束も無し、相変わらずメールも手紙にも返事は無い、そして2人の時には軽口も雑談も無い。


 勝手に許されたんだとぬか喜びをしていただけだった、紫苑の心は何も変わって無かった。

 仕事の為、エミールの為だけ。


 勝手に喜んで、勝手に落ち込んで、勝手に傷付いて。

 でも制御が出来ない、どうしても謝りたくなってしまって、謝る。


「こんなに傷付けていたなんて、すみませんでした」

「そう」


「あの」

「何、許すって言えば良いの?許して欲しいならそうするけど」


 許して欲しいけれど、それだけじゃない。

 でも以上何かを言えば我儘になってしまいそうで。


「許しては、欲しいですけど、それだけじゃ」

「許す、じゃ」


 そうして立ち去られ、また話す機会に謝って。


「あの」

「マジで許してるって」


 苛立ちと呆れ。

 紫苑には今まで本気で向けられた事が無かったからこそ、好きだと自覚したからこそ余計に辛かった。

 許されるかどうかより、また前の様に。


「前の様には」

「そうすれば許された気になれるならするけど」


「そうじゃなくて」

「ゴールは何処?どうしたいの?」


「都合が良いのは分かってるんですけど」

「前置きは良いから、早く言ってくれないかな」


「好きに」

「でも俺、男だよ。男で祥那が好きだったのに受け入れてくれなくて、魔道具が出来てから受け入れるって、打算的で都合が良過ぎだよね。その程度だったって、傷付けて楽しい?津井儺さんに無関心でも過去の祥那の事を持ち出されると傷付くんだよ、普通に」


 ポロポロと、家族に傷付けられた時の様に紫苑が泣いた。

 傷付けるつもりは無かったのに。


「そう傷付けるつもりは」

、ね、華山さんにそっくりだよねその言い分。朱に交わればだ、話は無理だごめん、また今度」


 そう言っても、コチラから話し掛けないと何も無いのにと、そう紫苑を責めたくなってしまった。

 でも、自分もそうしていた。

 話し掛けられる事を前提に紫苑に対応していた。


 付き合う前から特に、好きな事の共有も、遊ぶ約束も殆ど紫苑からだった。




 寂しいから、罪悪感から逃げ出したいから許して欲しい、元に戻りたいだけじゃないかと。

 小雪と母親から聞かれて、祥那は分からないと答えた。


 執着の区別が付かない。


 そこで再び意を決し、賢人へ相談を持ち掛けた。


「ヤれるかヤれないか、どうヤるか、ヤれて嬉しいかじゃ無いっすかね」


「今なら、どれでも、どうとでも」

「紫苑さんの性癖が、ぶん殴って欲しいとか言われても出来るんすか?」


「そんな趣味が」

「いや、例えばっすよ。紫苑さんが女で、男の津井儺さんにぶん殴って欲しいとか、首を絞めながらとかって要求して来たら、出来るんすか?」


「その、一応カウンセリングを受けてからで、ですよね」

「そうっすね、危ない事故も起こるらしいんで」


「言われれば、はい」

「勃つんすか?男の紫苑さんで出来るんすか?それで想像して無理なら、きっと何したって無理っすよ、色んな意味で」




 紫苑はとても平和で幸せだった。

 正論ジャブをかましてくる華山も居ない、エミールも頼ってくれていた。

 けど、エミールに好きな人が出来てしまった。


 また、居場所が無くなるかも知れない。


 けど、それも良いかもと思った。

 他の部署からの誘いが有り、祥那もしつこいし、移動しても良いかも知れないと思った。


 そうすれば、こうして立ち直ったとカモフラージュしないで済む。

 今日も、バーで飲んで適当にナンパして帰るかな。


「あの、紫苑さん」

「業務に関する事でしょうか津井儺さん」


「いえ」

「チッ、メンドクせぇ」


 つい出てしまったけれど、とても傷付いてる顔をしていたけれど、まぁ良いかと思った。

 どうでも良いなと。


「すみません、お墓参りをと」

「あぁ、ママさんには教えてるから、命日以外はどうぞ。じゃあ失礼しますね」


 無関心から苛立ちへ、でもコレは期待出来ない苛立ち。

 果ては呆れられる苛立ち、もう本当にどうしようも無いかも知れない。


『あの、もう手助けはしないってシオンさんには言っちゃったんですけど。まだ、好きですか?』


「はい、やっと、この前、好きだって気付けました」

『じゃあ、コレ貸します。それと、交代して下さい、顔色が悪いですから』


 このままこの魔道具を使わずに、何もせずに諦めようと思った。

 紫苑を批判する者に諦めろと言わせたり、紫苑を批判さえたけれど、受け入れられなかった。

 受け入れて貰えない、拒絶されている事を、もう受け入れられなくなっていた。




 人に対して嫌な態度を取った事に関しては、心苦しい。

 エミールの見本になれる様にも、自分の行動は制御したいし。


 やっぱり、部署異動しよう。


「あの、お1人ですか?」

「はーい、どうぞ」


 祥那に似ている可愛い女性。


 祥那が女だったら、自分が女だったらと何度も考えた。

 何度もそう話を振っては、答えが曖昧に返って来るだけだった。

 それでも良かった、きっと何処かで祥那は自分を好きだろうと、そう勝手に思っていた。


 寝顔が可愛くて、最初はそれを眺められているだけで良かった。

 親にも疎まれた自分を傍に置いてくれてから、だから好きなんだろうと勝手に思い込んでいた。

 祥那は悪く無い、自分も他人から話を振られて曖昧な返事をしていたから。


 勝手に好きになってただけ。

 今は好きだとか言ってるけど、罪悪感とか責任感とか、それとごっちゃになってるんだと思う。

 それに、好きだ好きだと言い過ぎたのかも。

 まぁ、もう、どうでも良いや。


「どうして彼女さんが居ないんですか」

「凄い性癖なんだよね」


「その、例えば?」

「プライベートな事だから内緒にして欲しいんだけど、暴力を受けたいんだよね、強めの」


「殴るとか、ですか?」

「そうそう、首絞めとかされたい」


 魔法でも男同士で子供が出来無いと知った時は、本当にそのまま死にたいとか思ってた。

 そしたら祥那は解放されるし、俺も解放されるしとか、凄い病んだんだけどなぁ。

 そう話したのに、伝わって無かったんだよな。


「そう、しましょうか?」

「いや、喜んでやってくれる人が良いんだ」


 大概はココで引いて立ち去ってくれるんだけどな。


「した事は無いんですけど、試してみたいです」

「マジかぁ、あ、俺は結婚とか興味無いけど良い?家庭が複雑だったから」


「あ、じゃあカウンセリングは」

「受けてるけど、マジで?」


「はい、お願いします」


 もう、貞操も守らないで良いし、引き摺って無いって成果も出さないとだしなぁ。

 まぁ、良いか。




 結局、震えて絞める事が出来なかった。

 前の紫苑と祥那なら、紫苑は出来てたかも知れないのに。

 好きなら、愛してるなら出来ると思ったのに、出来なかった。


「普通そうだよね、ごめんね、大丈夫だよ」


 津井儺の時とは全然違って凄く優しくて。

 祥那と呼ばれてた時みたいに凄く優しくて、でも、この優しさは祥那へのモノじゃ無い。

 寝た相手への優しさ、気遣い。


 こんな相手にも優しいんだから、もっと違ったら紫苑だって誰かと。

 誰と。

 僕は紫苑の女性の好みも知らない、何も。


 自分は、紫苑の結婚の事すら考えて無かった、紫苑なら何とかなるだろうって勝手に思ってた。

 凄く無関心だった、全然考えて無かった。


「ごめんなさい」

「大丈夫、俺もう帰ろうか?送る?誰か近くに呼ぶ?」

 

「あの、続きを、普通のを」

「無理しないで良いよ、どうせ初めてだから下手だろうし」


「いえ、お願いします」


「じゃあ、はい、宜しくお願いします」


 ヤれば出来るじゃん、自分。




「あの、お付き合いもダメなんでしょうか」

「あぁ、イギリス行っちゃうし、付いて来れないでしょ?流石に」


「え」

「色々有って部署異動するんだ、直ぐじゃ無いけど」


「その、それまででも」

「あー、マジで結婚も子供も無しで良いなら良いけど、何が良かったの?」


「優しかったので」

「皆こんなもんでしょきっと。大丈夫だよ、自信無いからって適当なのを選んだら親御さんが悲しむよ、可愛いんだし、君や相手に似た可愛い赤ちゃんを生みたくなる人と付き合った方が良いよ。人生は短いんだから、無駄に過ごさない方が良いよ、俺はそれで失敗したから」


「あの、何が有ったんですか?」


「悲惨な男同士の恋なんだけど、聞く?」

「はい」


 ずっと前から知ってたのに。

 傍に居た時から聞いてた筈なのに、初めて聞いた様な感覚だった。


 初めて会った時は女の子かと勘違いして。

 違うと知って両家を巻き込んで拗ねて、でも寝顔が可愛いから好きになって。

 そうして紫苑が本気だと分かった両親から捨てられて。


 家が無くなるかもと言ったらウチに来れば良いと言ってくれて。

 優しいなと思って、可愛いから心配になって、ずっと傍に居たくなって。


 それからずっと一緒で。

 学校も週末も、仕事も。


 好きだって言ってたんだけど、でも伝わって無かったみたいで。

 魔道具の事を話そうと思ったら、他の女性と付き合う事になったって聞いて。


 男同士だから意思確認も曖昧だったし、自分も曖昧にした時が有ったから、ダメだったみたいだと。


「バカだよねぇ、俺だけが好きだったんだもの、アホ過ぎ。情けないでしょ?コレで少しはビンタしたくなった?」


「紫苑さんを好きになったら、どうすれば良いですか」

「家族みたいに一緒だったから家族が怖いんだ、それで良いなら良いよ」


「1人で育てたくてもですか」

「無責任じゃん、無理。欲しいなら」


「いえ、試しに聞いただけなので」

「じゃあ、君に他に好きな人が出来たら別れる、それなら良いけど」


「はい」

「はい、じゃあ、宜しくお願いします」




 それから直ぐに僕は従者を辞めて、イギリスへ引っ越しをして、紫苑の家の近くに部屋を借りて。

 偶に来てくれる紫苑に相手をして貰って、普通に働いて。


「紫苑さん、コレどうですか?」

「何だよこの、赤い玉シリーズって、ふふ」


 こう、表面上だけなら僕らは凄く仲が良く見える。

 話題さえ有れば、僕が話題を提供さえすれば笑い掛けてくれる。

 そう、僕から生まれたには興味を示してくれる。


「買っちゃいました」

「全裸スノードームって、ふふ、良いね、良い趣味してる」


 こう、女の自分には優しい。

 けどそれは祥那の顔に似てるから、少しして好きだった人に未練は無いけれど似てるから付き合ってるのだと、突き放す為に言ってくれてたけれど。

 半分本心で、半分は嘘だった。

 似ている所と未練が無いのは本当。

 付き合ってくれてるのはカモフラージュ、女性体の僕には全く興味が無い。


 風が強く吹く日が有って、少し心配だと言っても、心配してくれるのはその時だけ。

 同じ様に風が強く吹く日が有っても、祥那の時の様には心配してくれない。

 何かを相談しても、仕事から帰って来たら忘れてるらしく、話を振って来てはくれない。

 前なら、祥那なら会うなり心配して聞いてくれた。

 そもそもメールをくれた。

 心配してくれた。


「どうして、心配してくれないんでしょうか」

「え?どの事?」


「風が強いのが、怖いんです」

「あぁ、普通にしてるからもう大丈夫かと思って」


「一応、困らせない様に我慢してる感じなんですが」

「あぁ、俺は寝れちゃうからなぁ」


「ですよね、どうしたらそうなれますかね?」

「怖いモノが有っても良いんじゃない、その勘が役立つ時があるかもだし。洗い物してくるね」


「はい、お願いします」


 前なら、祥那の時なら、どう克服するかを話し合ってくれた。

 何時でも直ぐに、何時間でも、また話をぶり返しても向き合って聞いてくれた。


 今はこうして直ぐに離れて、少し経つともう、どうなったかも何も聞いてくれない。

 心配をしてくれない、聞き出してもくれない、軽い雑談や軽口か用事でしか話し掛けてもくれない。


 興味が無いって、こう言う事だったんだ。

 僕がしてた事って、こんなに酷い事だった。




 飽きたりとか耐えられなくなるかと思ったのに、もう半年。

 勿体無いな、無駄な時間を過ごして。


「ねぇ、ちゃんと出会いを求めに出掛けてる?」


「え、あ、はい」

「嘘、何で、約束じゃん」


「紫苑さんより良い人って、意外と居ないんですよ」


「ダメだよ、約束なんだから」


「どうしたら、興味を持って貰えるんでしょうか」

「気にしてる方だと思うけど」


「私には人として最低限の応対はしてくれますけど、興味が無いじゃないですか」

「ヘアスタイルもネイルも体形も、変わったらちゃんと言うじゃん」


「そんな表面の事じゃなくて。相談も、怖いなって思ってる事も、それを思い出して話し掛けてくれないじゃないですか。忘れたみたいに過ごしてるじゃないですか」


「ごめんね、コレ以上に興味を持つ事が出来ないんだ、ごめんなさい。直せないし変われないから、耐えられないなら他の人を探した方が良いよ」

「違うんです、紫苑さんに興味を持って欲しいんです。もっと好きになって欲しいんです」


「あのね、。苦しませてごめんね、俺なりに頑張ったんだけど」

「違うんです、離れて欲しいワケじゃなくて、もう言わないから」


「辛いでしょ、俺ももの、話題を提供してくれてありがとう。ごめんね」

「違くてっ」


「え、大丈夫?」

「すみません、トイレに」


 薬を飲んでなかった。

 手頃なサイズのお菓子と中身をすり替えて飲んでただけで。


 しかも、中身は、戸籍は祥那だって。


 祥那の事は愛してたし、他の人間と付き合うってなって、もう愛されないかもと思っても。

 それでも好きだから友達で居た。

 沢山我慢して、沢山好きだって言った。


 けどダメで。


 だから自分は少し壊れたけど、何とか出来てると思ってたのに。


「なんで、こんなに苦しめんの」

「違うんです、好きだから」


「好きだから苦しめるの?」

「苦しめたいワケじゃなくて」


「俺がどう思うか考えた?」

「紫苑が分かってくれないから」


「俺のせい?」

「違くて、好きなんです、愛してるんです」


「そう、辛かったよね、んだよ。のも、のも」

「ごめんなさい」


「何に謝ってるの?騙した事?嘘を言った事?俺は正直に言ってたよね?なんで?」

「ごめんなさい、好きだって事を」


「好きだから俺は我慢したんだよ?もし祥那が赤ちゃんを欲しがっても良い様に、身を引けるようにしながら伝えてたんだよ?祥那の為に、祥那の家族の為に」

「だから、僕も」


「今更なんだよ?何コレ?罪悪感?責任感?俺を選んで欲しい時には選んでくれなくて、もうどうでも良くなったら。執着?それ本当に俺を好きなの?」

「好きだから女になって、妊娠だって」


「好きだから俺が嫌な事をするの?いくらなんでも子供を利用するなんて」

「そんな」


「じゃあ俺が居なくても生み育てるの?俺は、俺がしたくない事だったのに。なのにごめんね、大変だったよね、悪かった。先ずはご両親に謝りに行こうね、結婚しよう」

「そう自暴自棄になって欲しいんじゃなくて、好きだから、同じ事をしてたんだって苦しかったって伝えたくて。僕が凄い自分勝手で、酷い事を」


「良いよ、怒ってごめんね。体に良く無いから、お互いに落ち着こう」


 あぁ、僕に優しいんじゃない。

 に優しくしてるだけ。

 僕には、母親として優しくしてるだけ。

 僕には興味が無いんだ。


「好きなんです、本当に愛してるんです」

「うん、俺も好きだよ、愛してる」


 僕じゃない、お腹の子と、その母親の僕だから。

 この子が居なくなってしまったら、また興味を失われてしまう。

 母親失格になる様な事をすれば子供を取り上げられて、また、興味を失われてしまう。

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