第7話 お金を稼げ!

「おぉ!戻ったか!」


ギルドに入ると同時におじさんが2人の元に駆け寄ってきた。とても嬉しそうな顔をしている。


「怪我はなかったか?カエデからは変なことされてないか?」

「するわけないだろ。はっ倒すぞ」

「大丈夫です。それどころかカエデさんが危ないところを助けてくれたんですよ」


おじさんは心底安心したかのように肩を落とした。


「とりあえずカウンターのお姉さんに文句言ってこい。『今度からはちゃんと教えろ!』ってな」


ヘキオンとカエデは笑いながらカウンターへ移動した。




「大丈夫だった!?ごめんね忘れてて!!遅かったから心配したのよ……」


お姉さんがヘキオンに詰め寄ってくる。


「だ、大丈夫でしたよ。――それにほら!ハーブが手に入りましたし!」


お姉さんはヘキオンをギュッと抱きしめた。それほどまでに心配してたのだろう。


ヘキオンは恥ずかしさ半分と苦しさ半分の表情をしている。


「――本当にごめんね。カエデには何もされてない?」

「全員同じことしか言わねぇな」

「はは。冗談よ冗談。無事でよかった……」


お姉さんがヘキオンの頭優しく撫でる。まるで子供をなだめるかのように。


ヘキオンは子供扱いされることが不満なようで、恥ずかしそうに身を震わしている。


「今日はおまけして報酬を上げちゃう!」

「え!?いいんですか!やったぁ!」


ピョンピョンして喜んでいる。見た目の影響からか、さらに子供のように見える。


「迷惑かけたわねカエデ」

「いいよ。別にこれくらい」

「報酬あげとくわよ」

「――貰えるものなら貰っておくよ」


カエデは手をヒラヒラさせながら、扉の方へ歩いていった。


ヘキオンはその後ろ姿をじっと見つめている。


「……パパ……」


過去の記憶。辛い記憶。大好きだった父親の最後の記憶。その過去を思い出していた。その理由は本人にも分かっていない。









「――んぅぅぅぁぁぁぁぁ……」


柔らかい布団に体を埋めている。太陽に勝るとも劣らない程の明るさの電球が部屋全体を照らしていた。


今日は疲れているのだろう。人生最大のピンチが起きたのだ。無理もない。


「……これからどうしよ」


これからもギルドでの仕事を続けるのか、今まで通り物を売って生活するのか。


お金の入りならギルドの仕事の方がいいが、安全面ならば物を売る方がいい。ヘキオンどちらを選択するのだろうか。



バックに入ったお金を覗き見ている。中にはキラキラしたお金が入っている。合計金額は1300円。仕事の収入に入ってきたのは2000円。宿に泊まるために1500円を使ったのでちょっと減ってるが、それでもヘキオンからしたらかなり嬉しい金額だ。


「――明日もギルド行こ〜♪」


ヘキオンがとったのは危険な方であった。お金の魅力はそれほど高いのだろう。


「……でもやっぱりここに定住するのはダメだよね。私一応冒険者だし」


忘れてるかもだがヘキオンは冒険者である。冒険者はその名前の通り世界を歩き回るのが仕事?なのだ。


「とりあえず5万円くらい集まったら出発しようかな……」


ゆっくりと瞼が閉じていく。漏れる吐息が小さく、静かになってゆく。ヘキオンの意識は闇の中へと消えていった――。











続く

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