1月15日

 ふと目が覚め辺りを見回すと、卵達の居る中庭の草原だった。

 卵・布団・卵と、間に挟まれている。

 地面にめり込んで安定しているものの、かなりデカイのでちょっと怖い。


 取り敢えず、近くに置いてある水を飲んだ。


 それにしても寝過ぎだ、雲間にオレンジ色の太陽が輝いている。


 見惚れていると、卵からバキバキと音がし始めた。


 結界が自分を包み込んだので暫くそのままじっとする。


 ゴンゴン、バキバキと音が凄く煩い。


 そうして薄い水色の卵からは、西洋の翼竜が。

 滑らかで真っ直ぐな角、深くて濃い紫色の瞳、真っ黒だが光に当たると紫の偏光パールが輝く体。


 乳白色の卵からは、金色の瞳に孔雀の様な冠羽を持ち、茜色や黄色の暖かく鮮やかな色をした大きな鳥が出て来た。


 すり寄られ、吹き飛んだ。


 何とか巨鳥の羽根に守られて頭を打たずに済んだが、一瞬心臓がヒュンっとなった。


 慌てた2匹が小型化すると、再びすり寄ってきた。

 夢で見た、ふわふわとすべすべ。


「初めまして、宜しくね」


 2匹は了解したかの様に首を縦に数回振ると、胡座をかいて座っていた膝に丸まった。


 うん、暖かいけどトイレに行きたい。


 手を挙げるかどうかの時に、ターニャが車椅子を押して迎えに来てくれた。


『おはよー、桜木さーん』


(おはようターニャ、トイレ行きたい)

『だよねー、超特急で行こー!』


 ターニャが先導し、従者が車椅子を押す、そして食堂横のトイレでゆっくりしてから病室へ。

従者は廊下で待機。


 戻った病室は先日と違う病室だった、浴槽も完備された個室。


 入浴を済ませ一息ついていると、大量に食事が運ばれて来た。

 アイリーンとターニャ、セリナと共に頂く。


 海鮮餡掛け中華粥、タマゴ入りポテトサラダ、豆腐の旨煮、鍋焼うどん、つみれ汁、クリームシチュー、赤魚の煮付け、木の葉丼、オムライス、昨日の様なカナッペが沢山。

 ババロア、クレープシュゼット、フルーツの盛り合わせ。


 あれ以来、2匹はずっと寝ている。


 3人のいつも通りの会話を聞きながら、楽しい時間を過ごした。




 食事を終えた頃、病室のドアをノックする音が聞こえ、ドアが開いた。


『失礼しますガーランドです。桜木様、そろそろお時間です』


(うん、皆、ありがとう)

「コレ、マスクのストックです!何かあったら直ぐに戻って来て下さいね!」

『はい、クマさんもー』

「私の好きなのど飴です、どうぞ」


「本当にありがとう」


 従者が用意してくれた靴や服に着替え、寝静まった病棟を静かに出て、職員用の出入口に用意されていた車に乗り込み、病院を後にした。




 猛吹雪の中、暗い雪路を行く。

 走行音は静かな方、音楽も無く、ただただ走る。


 動かなくなったクマさんと、暖かい神獣の心地好さに。






 車のドアが開く音で目が覚め、外を見ると車のライトが照らすのは木造の洋館。

 夢の館に似た黒い大きな屋根、葡萄茶色えびちゃいろした艶のある壁、どれも渋くて美しい。

 でも、雪が無い。


 不思議な色のランタンの灯りで案内され、玄関ポーチを上がる。


 薄暗い室内に入ると、2階に上がる階段、壁沿いには丸窓。


 1階を更に進むと暖炉のある客間があり、ソファーへと促された。


 ランタンを持った従者は、次に暖炉に火を灯すと、ガーランドさんがしていた様に結界を張り巡らせたり、他のランタンにも灯りを灯したり。

 忙しそうに動き回る。


(あ、あの、名前を聞いても大丈夫ですか)


「ショナです」

(宜しくお願いします)


「はい、宜しくお願いします、桜木様」


(緊張しちゃうんで、様は無しでお願いします)


「…はい、桜木さん。飲み物は如何ですか?」

(頂きます)


「お茶を淹れてきますね、水差しを置いておきますので、少し待ってて下さい」

(はい)


 パチパチと音を立てる焚き火を眺め、クマさんと2匹を撫でて待っていると。

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