第8話 ご褒美?と国王

 いったい何が起こったのか理解に時間がかかった。




 数時間前に出会ったばかりの調査団の美人副団長。




 その鎧からハミ出る谷間でもドキドキしていたのに。






 「あぁ……あの……」




 僕はあまりの予想外なことに口をパクパクさせていた。




 女性の裸を見るなんて母親以外初めてだ。




 スラッと伸びる長い手足。




 長い髪をゴムで束ねて一糸乱れる姿で僕の前にあらわれた。




 (え? これがゴーレム討伐のご褒美ですか!?)




 湯煙に隠れて大事(?)なところは見えていないがペルーサはとっさに目を背けた。








 「いやーすまないな! ただでさえ狭い風呂がますます狭くなってしまうだろ? 大丈夫だったか?」




 (心配するところそこか!?)




 「い、いえ。僕は大丈夫ですけど……」」




 (なんだろう……まったく男として見られていないような)








 「しかし、思ってたより大したことないんだな」




 (!!!!)




 僕は赤面しとっさに湯船の中で股間を手で覆う。




 (た、たしかに普段の僕は大したことないけど、、今の僕は、、え?)






 「その貧相な体でゴレームを倒すなんて信じられないな」




 ……勘違いした自分が恥ずかしくなった。






 「僕は魔法使いなんで、筋力がすごいわけじゃないんですよ」






 「なるほどな、私は魔法は全然ダメだ! 才能がなさすぎて訓練もしていない」






 (あー才能って点で言うと僕も全然なんですけどね……)











 オリビアさんはシャワーを終え、湯船に入ってくる。




 「悪いがちょっと詰めてくれるか?」




 僕の前で浴槽を跨ぐ。




 「っっ!!!!!! 」目のやり場に困る……




 「いやーいいな風呂は! 生き返る! と言ってもペルーサのおかげでダンジョンには入っていないし疲れてないんだけどな」











 僕の緊張とは裏腹にオリビアさんは全然僕のことを気にしていないようだ。






 「人と風呂に入るなんて久しぶりだ。背中でも流してもらおうかな!」




 「!!!な、何言ってるんですか!」




 「ははは、昔はよく弟と風呂に入っていたのを思い出すよ」




 「へー弟さんと、、あーそれで男と風呂に入るのに抵抗がないんですね」




 「? いや、そんなことないぞ? 男と風呂なんて入ったことない」




 「え? だって今も……」




 「あー、、、だって君は『男の子』じゃないか! 男とホイホイ風呂に入るような軽い女ではないぞ?」




 (……)




 悪気はないのだろう、しかし僕の男としてのプライドが少し傷ついた気がした。








 「弟さんも調査団なんですか?」






 「んー、、そうだな。調査団だったよ」






 (調査団"だった"?)




 少し気になる言い方だ。






 「まあいつか会ってやってくれよ!君と同い年だ」




 「そうですね!ぜひ」




 よかった。考えすぎだったようだ。






 「お! ちょっと長風呂しすぎたな!そろそろ上がって国王に会う準備をしよう」




 オリビアさんは湯船から上がり僕の目を気にせず出ていく。




 「おーい! いつまで入ってるんだ?」




 「あ、、お構いなく。すぐ出ますから




 「? 変なやつだな」






 (……こんな状態で出れるわけないだろ。こっちの事情も知らないで・・・)




  案外、オリビアさんも男性経験はないのかな?




 そんなことを考えるペルーサであった。




 ◇






 夢のような風呂から上がると僕の服が用意されていた。




 さすが王宮の服、しっかりした良い服だ。






 「お! 似合うぞ。サイズもピッタリだ」




 「ありがとうございます」




 オリビアさんはすでに鎧を着こんでいる。




 (この人、服を着るのは早いんだな……)




 僕は少しガッカリした。






 ◇








 国王の待つ部屋へ向かう。




 「大丈夫か? そんなに緊張することないぞ?」




 ガチガチに緊張している僕に優しく声をかけてくれるオリビアさん。




 「国王ですよ? 緊張するに決まってるじゃないですか……国王ってどんな人なんですか?」






 「んー……国王は変わった人だな」




 (アナタもだいぶ変わった人ですけどね……)






 「ダンジョンの話や強い戦士、魔法使いなんかが大好きな人だよ。きっとペルーサのことも気に入ってくださるはずだ!」




 「そうですか……」




 (嫌な予感しかしないな)






 ◇






 「国王、ペルーサを連れて参りました。」




 立派な扉を開け、国王の部屋へ入る。






 兵隊や側近なのだろう。屈強な戦士たちが並ぶその奥に国王はいた。




 「おー! ご苦労オリビア。 君がペルーサか……」




 「は、はい……」






 初めて見た国王は思ったより小柄な老人だった。




 ひざまずく僕らに国王がゆっくりと歩み寄る。






 「顔を上げよ。ペルーサ」




 「は、はい!」




 恐る恐る顔を上げる。




 すると、そこにはキラキラとした瞳で僕を見下ろす国王が立っていた。




 「噂には聞いていたぞ!! すごいな! その若さでゴーレムを倒すなんて! どんな魔法を使うのだ? おっ? それが噂の【石化の首飾り】か!? 見せてくれるか?」




 興奮しながら矢継ぎ早に質問をしてくる国王。




 オリビアさんの言うように戦いやダンジョンが好きなのだろう。




 「どうぞ。」


 僕は少し困惑しながら首飾りを差し出す。




 「すごい! 紛れもなくゴーレムを倒した証だ! 感謝しているよ!」




 「い、いえいえ・・…あっ、よかったらその首輪差し上げますよ?」




 「なにぃぃい!? いやいや、それはいかん! 君が命がけで持って帰ってきたものだ……!! いや、しかし……ホントにいいのか!?」




 「はい。僕には必要ないので」




 「ほんとか!? ありがとう!! この礼はしっかりさせてもらうからな!」




 子供のように喜び、首飾りをジッと見つめる国王。




 「うーーむ。やはり幻のアイテムとだけあって素晴らしい首飾りだ…… ん? 宝玉が割れている? まあこれもアンティークの味だな。渋いわい ブツブツブツ」




 「はははは」


 ホントにこういうアイテムが好きなのだろう。何はともあれ気に入ってもらえたようで良かった。気さくな国王のようだ。






 ◇






 「ところでペルーサ……」




 国王の側近だろうか? 銀髪の魔法使いような男が話しかけてた。




 「君はどうやってゴーレムを倒したんだ?」




 (!!! まずい……)




 明らかに僕を疑っている。




 (そりゃ僕みたいな子供がゴーレムを倒せるわけないと思うよな……)




 銀髪の魔法使いは冷たい目で僕を睨み付けている。

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