第6話 すれ違いなふたり

 四:『睡眠導入剤』か。これさえあれば、悠木の隣で寝てても、モンモンとしないで眠れそうだ。助かった・・・・やっぱ、突然泊まらなくなったら、あいつ変に思うだろうし。余計な気、使うだろうしな。でも、藤沢の奴でも、眠れない事なんてあるんだな。試合に負けた悔しさで眠れない夜もある、とか。・・・・あいつ、そんな繊細な神経の持ち主だったっけ。それに、あれ?あいつ何やってたんだっけ?バスケだっけ?バレーボールだっけ?確かなんかの球技だったような・・・・ま、いっか、なんでも。おかげでいいモン貰えたし、良かった。やっぱり、持つべきものは親友だな。・・・・多少暑苦しくて、多少距離感近すぎて、多少お節介が過ぎるところもあるが。でもまぁ、藤沢はいい奴だし。相談できる相手がいて、ほんと良かった。こんな悠木の事相談できるのなんて、藤沢くらいしかいないもんなぁ・・・・


 悠:どうした?これ、何の薬?どこか悪いのか?

 四:いや、ただの胃薬だ

 悠:胃が悪いのか?

 四:少し、な。なんつーか、そう。なんか少し調子悪いから、これ以上悪くならないために飲んでおく、というか

 悠:なるほど

 四:今日、藤沢と会ってさ。ちょっと胃の調子が・・・・って言ったら、くれたんだよ。結構効くらしい

 悠:えっ?圭人も胃が悪いのか?

 四:あー、夏川の作るメシが旨過ぎて、食い過ぎちまうんじゃねぇの?

 悠:なるほど

 四:あれ?悠木も薬?どうした?どっか悪いのか?

 悠:あっ、私も、胃薬・・・・

 四:大丈夫か?おかゆでも、作るか?

 悠:大丈夫。私も、予防?みたいな感じだから

 四:予防?

 悠:今日、亜由実と会ってスイーツ食べ放題に行ったから、もしかしたら胃もたれするかも?って。そうしたら、亜由実がくれた、これ

 四:なるほど。あいつ、昔からスイーツ好きだったもんな。しかも結構食うし。食べ放題なんて、しょっちゅう行ってたしなぁ。悠木、あんまり夏川に合わせなくても、いいんだぞ?

 悠:楽しいよ。亜由実が連れて行ってくれるお店は、どこも全部おいしいし。今度、一緒に、行こ?

 四:ああ、そうだな


 悠:『眠くならなくなる薬』。これさえあれば、今日こそ・・・・になってドキドキして緊張しちゃっても、きっと眠たくならないはず。亜由実、専門学校の勉強大変だって、言ってたな。頑張ってるな、すごいな。徹夜で勉強しないと追いつかない事もあるって言ってたっけ。そんな亜由実のお墨付きの薬だし、きっと効くはず。だから、今日こそは・・・・。でも、良かった、亜由実がいてくれて。こんな四条の事相談できるのなんて、亜由実くらいだし。いつでも私の悩み聞いてくれて。・・・・私が男だったら、絶対亜由実のこと、好きになるのにな。しじょーはなんで、私だったんだろう?


 四:は~、さっぱりした。あれ、まだ寝てなかったのか?

 悠:う、うん

 四:薬飲んで、早く寝た方がいいぞ?あー、俺も薬飲まないとな

 悠:そう、だね


 四:電気消すぞ?

 悠:うん

 四:おやすみ

 悠:・・・・おやすみ


 スゥピィ・・・・zzz


 悠:・・・・なつき、寝てる?


 スゥピィ・・・・zzz


 悠:爆睡?えいっ


 ぺチぺチ


 四:うっん~・・・・

 悠:なつき?

 四:もう俺、無理・・・・

 悠:えっ?

 四:げん、か、い・・・・


 ドキッドキッ


 悠:・・・・なつき?

 四:も、食えない・・・・

 悠:・・・・


 スゥピィ・・・・zzz


 悠:『眠り王子』め


 ぺチぺチ


 四:ん~・・・・


 ギュッ


 悠:ひゃうっ!

 四:んっ?・・・・あー、ごめっ・・・・ん・・・・


 スゥピィ・・・・zzz


 悠:なつきのバカ。もう、寝る

 四:ん~・・・・かわいー、るい・・・・

 悠:えっ?!

 四:食べたい、な・・・・

 悠:なつき?


 ギュッ

 スゥピィ・・・・zzz


 悠:・・・・眠れない。おかしい。全然、眠れない。


 ドキドキドキドキドキドキ


 悠:そっか。亜由実の薬のせいだ。はぁ、どうしよう・・・・


 ドキドキドキドキドキドキ


 悠:もしかして。なつきも、いつもこんな感じ、だったのかな

 四:んっ・・・・う~ん・・・・

 悠:ごめんね、なつき

 四:るい~・・・・

 悠:大好き


 chu☆


 四:んあ?朝、か?

 悠:まだ、夜。寝てて

 四:ん~・・・・


 ギュッ


 悠:・・・・亜由実の薬、効き過ぎ・・・・




 四:は~よく寝た!目覚めスッキリ!藤沢の薬、すげー効き目だな。ひっさし振りに、るいの隣で爆睡した気がする。・・・・あれ?まだ寝てるのか?るい?起きろ、時間だぞ

 悠:ん~・・・・

 四:まったく困った『眠り姫』だな。起きないなら、襲っちゃうぞ?

 悠:・・・・うん

 四:へっ?!マジで、いいのっ?!

 悠:・・・・うん

 四:いやっ、でも今日は俺が時間がっ・・・・ちくしょっ!

 悠:・・・・ふふっ

 四:ん?るい、もう起きてるな?

 悠:てない

 四:起きろって

 悠:ん~・・・・


 モソリ


 四:おはよ・・・・って、お前、どうしたそのクマっ?!

 悠:ん~・・・・

 四:大丈夫か?やっぱり胃もたれして眠れなかったのか?!

 悠:大丈夫・・・・

 四:だいじょばないだろっ?!もう少し寝てろ、今日大した用事無いんだろ?勉強くらいで

 悠:でも

 四:いいから、寝てろ!


 スタスタスタ・・・・パタン


 悠:しじょーのバカ


 コテン

 スゥスゥ・・・・zzz


 四:るい?


 スゥスゥ・・・・zzz


 四:まったく、どんだけスイーツ食ったんだよ。夏川に言っとかないとな、悠木にあんまり無理に食わせるなって。しかし、時間さえあれば・・・・っ!いやいや、ダメだ、あんな目の下にくっきりクマ作ってる奴なんか、襲えない!はぁ・・・・仕方ない、行くか。るい、行ってくるからな?ちゃんと寝ろよ?俺の『眠り姫』


 chu☆


 スゥスゥ・・・・zzz

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