24.久々の和人君
翌日の放課後。今日は和人の図書委員の当番の日だ。
都は静香と一緒に図書室の入り口から、そっと中を覗いた。
「・・・和人君、いる・・・」
「そうね、いるわね」
和人がいつも通りカウンターに座っている。
そして、いつも通りおっとりと、本を借りる生徒の対応をしていた。
「う・・・、和人君・・・」
その姿を見て都はじわりと涙が滲んできた。
「・・・泣かないでよ、もう・・・」
「だって~、久しぶりに見た~、和人君~~」
「・・・まだそんなに日にち経ってないじゃない・・」
呆れたように見る静香を余所に、都は図書室の入り口にしがみ付くように隠れながら和人に見入った。
「やっぱり、和人君って素敵・・・」
「・・・そう・・・」
「カウンターに座っているだけなのに格好良い・・・」
「・・・多分、そう思うのは都だけよ・・・」
「本がよく似合うの・・・」
「入るの? 入らないの? どっち!?」
静香は苛立ちながら、都の襟首を掴み、しっかりと立たせた。
「だって・・・、心の準備が・・・」
都はそう呟くと静香に振り向いた。
その顔は何とも情けない。
和人に対峙しようと、何度も気合を入れては失敗を繰り返しているうち、流石の都もメンタルが若干弱くなっている。
都は情けない顔のまま、再び図書室の中を覗いた。
「な・・・!」
そして、思わず目を丸めた。
さっきまで誰もいなかった和人の隣に女子が座っている。
「な、なに?!」
都は目をパチパチさせながらその光景を見た。
「何が変なのよ? あの人も図書委員なんじゃないの? 何にもおかしくないでしょ?」
「違う! そうじゃないわ! 何なの! あの距離感!」
「?」
都の突然の激高を不思議に思い、静香は改めてカウンターを見た。
和人の横に女子が座っている。
そして、その女子が何やら楽しそうに和人に話しかけていた。
しかし、確かに距離が不自然に近い。
「・・・そうね・・・、なんか、ちょっと近いわね」
静香は彼女のネクタイを見た。和人とお揃いだ。
と言うことは・・・。
「あの子、特進科ね。ネクタイが普通科と違うわ」
「・・・」
都に振り向くと、都は目を三角にして食い入るように二人を見ている。
今にも目から何かが発射されそうだ。
再びカウンターに目を戻すと、和人と女子は何か話しながら、カウンターの下に消えたのが見えた。
次の瞬間、都はカウンター目がけて駆け出した。
バンッ!!
カウンターを叩く音が聞こえて、和人は慌てて立ち上がった。
「あ、ごめんなさい・・・。えっ!!」
目の前に、カウンターに手を付いてこちらを睨んでいる都がいた。
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