第32話
ピピっというアラームの音が鳴り響く。
五月蠅いなぁと思いつつもどうにか腕を伸ばし、スマホのアラームを止める。
ん?なんだろう、ベッドの中でもぞもぞしているような。
見ると花蓮が気持ちよさそうに寝ていた。
あれ?昨日一緒に寝たっけ?寝ぼけて部屋を間違えたとか?
「おーい、花蓮?」
少し揺すってみてもすやすやと寝ていて全く起きる気配がない。
まぁ、まだ六時だし、休日だし昨日は球技大会もあったから疲れもあるだろう。もう少し寝させてあげよう。
だけれど、僕は花蓮が僕のベッドに忍び込んできた衝撃ですっかり目が覚めてしまった。
さて、どうしようかな。
.............そうだ、少しだけ花蓮を驚かせてあげようかな。
例えば、僕が朝ご飯を作る、とか。
.............それ、いいね。それに決めた。
いつもやってもらっていて少しだけ後ろめたい気持ちがあるから、僕だって朝ご飯くらい作れるんだぞって事を花蓮に見せてあげようじゃないか。
そう決めた僕の行動は早かった。
ベッドから起き上がり、そのまま洗面所へ行き顔、手を良く洗ってから台所に立つ。
さて、朝ご飯を作ると息巻いたはいいけれど、普段何も作らない僕がそんなすごい料理を作れるはずがないので、オーソドックスにベーコンエッグとトーストとそれにサラダ、そのくらいが限界だろう。
そう思い、冷蔵庫や棚から材料を取り出して調理を開始する。
開始して数十分程度でベーコンエッグが完成するけれど.............
「あんまりにも不格好すぎないか?」
ベーコンは焦げてしまうし、目玉焼きも焦げるし見た目は最悪である。
これならばスクランブルエッグの方がマシだっただろう。
.............でも、もう一度チャンスはある、まだ僕の分だったはずのベーコンエッグの材料は残っている。
やるしかない、今ここで。
数十分後。
「やっぱり無理か」
一度目よりは焦げが少ないけれど、やはり花蓮が作った方が何倍もおいしいだろうな。
少し情けなくなってくるが、気を取り直して準備を進めよう。
ベーコンエッグ、それにサラダにレタス、トマトを盛り付ける。
そして、パンぐらいはトースターという文明の利器を使って焦がさずに焼くことができる。
お皿にそれぞれを盛り付けて、テーブルに並べる。
そして、数十分後。部屋をバタンッと大きく締めて非常に焦ったように花蓮がリビングに来る。
「に、兄さん?」
「おはよう。花蓮」
「に、兄さんが朝ご飯を作ってしまったのですか?これを?」
「う、うん。そうだよ」
花蓮は顔から表情というものが消え去ってしまいその場で呆然と立ち尽くしてしまった。
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