第11話 まだまだ甘い三人組

 スローヴィル村を出てから10日が過ぎた。

 三人の状況はといえば…?

 魔物に臆せずに立ち振る舞える様になっていた…それは素晴らしい事だ!

 さらに解体も問題なく出来る様になった。

 あと経験した事が無いのは、二本足系の魔物との戦闘だ。

 俺達はこの大陸から別大陸に渡る為に、敢えて安全な遠回りの道は通らずにショートカットをしようと思って、岩山の山岳地帯を抜ける事を選択した。

 魔物との戦いはある程度様になって来たが、他の知識が抜けているのであった。


 「さて、お前達に問題です。 こういった場所でキャンプをする時に適した場所は何処でしょう?」

 「岩壁の傍とか?」

 「マミは40点」

 「岩が囲まれている場所?」

 「ミク…適当に言ってないか?」

 「洞窟や洞穴とかか?」

 「ユウトは半分正解だ。 こういった場所は洞窟は無いが、洞穴は数多く存在する場合がある。」

 

 他にも祠という手もある。

 日本でもあったが、昔は大きな山は信仰の対象になっている場合が多く、こういった場所には誰が建てたか解らないが、神や土地神を祀る祠とかが作られている場合がある。

 日本とは違うのが、そういった祠には結界が貼られていて…旅人達が一時休憩する場所にもなっていたりする。

 ユウト辺りは頭が良いからすぐに思い付くかと思ったが…歴史には疎いのだろうか?

 俺達は山の中を歩いていると、丁度良い大きさの洞穴を発見した。


 「本当にあるとは⁉」

 「まぁ、こういった場所には誰かが作ったか、自然に出来たか、獣達が休む為に掘ったという可能性もある。」

 「なら、自分が中を見て来るよ!」


 そう言ってユウトが洞穴に入ろうとしたので、俺は剣を鞘ごと抜いてからユウトの頭に喰らわせた。


 「痛っ! 何をするんだよ⁉」

 「お前は死にてぇのか? 何度も言うが、ここは日本じゃねぇんだぞ‼」

 「何か間違えていたか?」

 「馬鹿なユウトの為に教えておいてやる。 目に見える場所には何もなさそうに見えるが…暗くなった瞬間に槍や矢が飛んでくる場合がある。 それはゴブリンが罠を張っている場合がある…他にも、天井からスライムが降って来たりな。」

 「スライムは何か危険なのか?」

 「天井や岩の隙間から頭に落ちてきて、顔を塞いで窒息をさせたりする。 他にも巨大蜘蛛が襲って来たり、洞穴の奥の方で息を殺して獲物をしとめる魔獣がいたりとかもな。」

 「恐ろしいな…」

 「こういった場所は必ず先客がいると思った方が良い。」

 「そういう場合はどうしたらいい?」

 「聞いてばかりいないで、少しは考えろ!」


 コイツ等…俺やセルリアがいなかった場合はどうするんだろう?

 やはり…街でクエストを請けた時に日数が掛かるクエストをやらせてみるか!


 「考えているフリをしていないで、行動で示せ!」


 …といった物の、やっている事といえば?

 外から眺めていたり、火魔法を洞穴の中に放ったりしていた。

 コイツ等の知能レベルは、ゴブリンと同等なのだろうか?

 いつまで待っても答えが出なさそうなので、薪と大量の枯れ草を渡した。

 これで気付ければ…

 

 「これをどうするんだ、サクヤ?」

 「少しは自分で考えろ! 猿じゃねぇんだから!」

 「うぅ……」


 三人いれば文殊の知恵…というが、やっている事といえば…?

 洞穴の前で薪を組んで火をつけた。

 …ここまではまぁ良い。

 問題は、枯れ草を何に使うのか解らないみたいで薪が燃え尽きるまで炎を見つめていた。

 俺とセルリアは、それを見て深い溜息を吐いた。


 「やっぱり…コイツ等とは、街に行ったら別れるか。」

 「その方が良いかもしれないな、この程度の事を思い付かないのでは、この先は生きてはいけないだろう。」

 「お前等さぁ、次の街に行ったら…冒険者ギルドで細々と仕事をしながら金を稼いで生活をしていろ。」

 「な…なんで?」

 「この程度の事が思い付かないのでは、お前達に旅は無理だ。 俺達は常に一緒にいられる訳じゃない。 冒険者ギルドの依頼によっては、高ランカーの俺達と低ランカーのお前達とでは仕事が常に一緒とは限らなくて、別行動をする時だってある。 日帰りで出来る仕事なら問題はないが、泊りの依頼とかになると絶対に死ぬぞ!」

 「では…何が正解なんだ⁉」

 「セルリア、頼む!」

 「あぁ…」


 俺はセルリアに新しい薪を渡すと、セルリアは洞穴の光が届いている場所で火をつけた。

 そしてある程度火力が出始めた頃に、枯れ草を置いてから燃え始めると…大量の煙が発生された。

 それをリュックから取り出したタオルを広げて、洞穴に向けて仰ぐと…煙が洞穴の中に入って行った。


 「そうか、燻すのか⁉」

 「そうだ…生物は基本的に火を怖がるが、煙も嫌がる物も多い。 まぁ、他にも意味があるんだがな。」

 「煙で中の生物を追い出す?」

 「それもあるな。」

 「煙の効果で生き物を寄せ付けない様にするかな? 防虫みたいな効果があったり…」

 「それもあるな、他には?」

 

 いつまで待ってもそれ以上の答えが出なかった。

 するとセルリアが来て言った。


 「サクヤ、この洞穴は…空気の流れが無い所を見ると、奥はどうやら行き止まりの様だ。」

 「そうか、ありがとう。」

 

 最後は、穴が他に通じていないかの確認だった。

 他に入り口があるなら、その場所から侵入される場合もあるからだ。

 俺は焚火を消してから奥に行くと、何匹かの虫が死んでいたので全て外に風魔法で履きだした。

 

 「さて、今日の見張りだが…俺とセルリアは奥で寝ているので、お前達三人は入り口に近い場所で交代で見張りをしていろ。」

 「2人は見張りをしないの?」

 「しないよ…お前達三人の役目だ! しっかりやれよ!」

 

 三人は不服そうだった。

 ミクがまた文句を言って来るかと思ったが、何故か黙っている。


 「なら、良い暇つぶしを見張りの最中に考えると良い。 山には山の、平地には平地の、海には海とそれぞれその地に適した活動をする魔物がいる。 この山ではどういった魔物が生息しているのかを想像しておけ。 これだけで死亡率はグンと減る。 それ以外にも、どういった場所がキャンプに適しているかとか、寝ている時に襲われたらどう対処するとかな。」

 「やはり見張りは全員で交代でやった方が良くないか?」

 「俺とセルリアは人間様なんで普通に寝る。 三人そろっても猿程度の知恵しか思いつかない奴等とは違うんだよ。 だが安心しろ、一応警戒は怠らないから…全てをお前等に任せる程、俺達はお前達を信用していないからな。」


 これが反面教師になれば、コイツ等も成長していくだろう。

 コイツ等の中では納得はしていないだろが、これも試練と思って頑張って貰うしかない。

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