第10話 まるで死んだ様な…

 翌日から三人は…今迄の様な甘えが消えて、解体作業にも目を背けなくなった。

 少し面白くなかったので…悪戯を仕掛ける事にする。


 「ほらほら、バーゲストの腸…ビロ~ン!」

 「「「ブゥグッ…」」」


 俺はバーゲストの体から引き抜いた長い腸を三人に見せると、三人は大地に栄養ゲロを与えていた。

 体の中を開いて臓物を見る…こんな経験は元いた世界ではまずないだろう。

 今では地方にもよるが、蛙の解剖は授業から無くなったらしいからな。

 そんな事をしていると…ユウトがキレ気味に突っ掛かって来た。


 「今はバーゲストのコアの取り出し方だろ‼」

 「体の仕組みを知るにはいい機会だと思ってな…体の仕組みを知れば、どこを攻撃すれば急所を突けるとか…」

 「だからって腸を見せる必要があるのか⁉」

 「状況によってはあるかもしれないぞ~!」

 「どんな状況だよ⁉」


 あれは確か…第二の異世界召喚だったか?

 村人のクエストで、水場に生息する大型の魔物に飲み込まれた家族の遺品をされる前に取って来てくれというのを受けた。

 それは大きなカエルの様な魔物で、倒す事自体はそれ程難しくなかったのだが、問題は胃袋を開いた時に…?

 骨になっていれば問題は無かったのだが、皮膚だけが溶けていて…血管が浮き出ていて、肉がそのまま残った死体が出て来た。

 あれには流石に参って、3日くらいは碌に飯が喰えなかった。

 …という話を三人に聞かせると、また大地に栄養を与えていた。

 恐らく想像をしたのだろう…腸を見た後だしな。


 「サクヤ…そんなクエストは絶対に受けるなよ!」

 「条件次第だな、あの時は報酬が破格だったからなぁ…誰もやりたがらなかったし。」

 「自分達だってやりたくないよ‼」

 「この世界の通貨で…銀貨500枚でもか?」

 「う……」


 まぁ、こんなクエストはそうそうある訳ではない。

 ただ、仮に見付けたら受けてみるかな?

 冒険者の仕事を結構勘違いしている者が多いが、冒険者は魔物だけを倒せば良いという訳ではない。

 問題はその後の討伐証明部位の回収が問題なのだ。

 物によっては…角や耳とかという場合もあるが、体内の魔石を入手するという例もある。

 パーティーによっては、討伐証明部位を回収する専門的な奴等を雇う場合もある。

 まぁ、コイツ等には無理だろうが…?

 

 「お前等…そんな事でどうするんだ? 四本足の魔物くらいでそんな感じなら、二本足のゴブリンやオークになるともっとつらいぞ? アイツらは人間に近い骨格や臓器があるからな。」

 

 それを聞いた三人は、また後ろを向いて大地に栄養を…。

 俺は良い事を思い付いて、バーゲストの体内から3つの臓器を取り出して…復活して立ち上がった三人に投げて寄越すと、三人は受け取ってから臓器を見た。

 ミクには肝臓を、マミには心臓を、そしてユウトには腎臓を渡した。

 三人は慌てて放り投げると、また大地に向かって栄養を…って、もう胃の中は空だったみたいだった。

 俺はその姿を見て大爆笑をしていた。


 「サクヤ、悪趣味だぞ!」

 「臓器に早くなれる為だ、悪気はない。」

 「大爆笑をしておいてか?」

 「あれは…可愛い悪戯だ。」


 俺は第一世界で、魔王を倒す為に旅した冒険者に同じ事をやられた事を三人にやった。

 俺はこの後…数日間は飯が喰えなかったが、早めに慣れる事が出来た。

 この三人はどうなんだろうか?

 

 「よし、もう吐く物はなくなっただろう? これで、魔石の取り出しが出来る様になったよな? なら、次はお前等が魔石を取り出すんだ。」


 こうして動けなくなった3人の為に、バーゲストを大量に捕まえて目の前に置いた。

 三人は黙々と腹を裂いてから魔石を取り出す作業をしていた。


 「サクヤ君…もう平気だよね?」

 「たかが2匹を捌いただけで何を言っているんだ? この村の宿はメシ付きで銅貨25枚だが、他の街とか行くと宿代はもっと高いぞ? 金が無くなったらまた外で寝るのか? 言っておくが、この村程治安の良い場所は他にないぞ…そう言った場所では、仮に街の中でも建物の外で寝る何ていう行為は自殺行為だ。」

 「そうよね…ここは日本じゃなくて異世界なんだもんね。」

 「そうだな、外で寝ていて気付いたら奴隷小屋の牢屋の中…何ていう事もあったりするから…で、何をすれば良いか解るよな?」


 三人は止まった手を動かし始めた。

 その姿を見て俺はバーゲストを更に追加した。

 俺が捕まえて、三人に捌かせる。

 それが1人20匹を終えた頃には、三人は生気が抜けた様な顔をしていた。

 そして念願の宿に泊まれることになり、料理は御褒美として俺の奢りにしたのだが…三人は目の前のステーキを見て、死んだ魚の様な目をしていた。

 その後、それが数日間続き…ようやく慣れて食事を摂れる頃になった時は、もう魔物を捌くのは平気で行えていた。

 ユウトは問題なかったが…ミクとマミは、魔物を捌く際にナイフを手にすると…嬉々として捌いていた。


 これ…治るのだろうか?

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