第6話 出発前の前日と…?

 関係各所に挨拶を済ませ、一通りの旅に必要な物を購入し…あ、金は収納魔法に入っている宝を幾つか換金した。

 そして調理器具を揃えたのだった。

 調理器具を買った理由…それは、まずミクは料理が一切という訳ではないがレパートリーは少ない。

 次にマミだが…学校にいた時はやたらと弁当のおかずを進めて来たが、異世界では料理を作っている所は見てない。

 旅先の料理を任せたら、母親の作った料理を自分で作ったと言って進めていた。

 出来る女を演じたかったのだろうか?

 ユウトは、味見なら任せてくれよ!…という事なので、料理が出来ない事は判明している。

 そうなると…俺が作るしかない。


 「まぁ、12歳になる迄は良く自炊をしていたからな。」


 両親共働きで自炊は良くやっていた。

 少しでもレパートリーを増やしたくて、料理教室に通った事もあった。

 なので、余程難しい物ではない限りは家庭の主婦レベルの物は作れる。

 異世界召喚で異世界に来た時は、調理は全て焚火だった。

 この煩わしさを解消する為に火の魔石を使ってコンロを作ったらバカ売れした。

 なので現在では、調理に関しては元の世界の技術と同じ物で料理が出来るのである。

 さらに…魔法を取得してからは、フリーズドライの様な料理も出来た。

 元の世界で料理をして来なければ、思い付いたかどうかすら怪しい。


 「マサギが仮に生きていたとして旅に出ていたら、食事とかはどうしたんだろう?」


 まぁ、もう居ない奴の事を考えても仕方がない。

 それと、あのデーモンロードが現れない事が気掛かりだった。

 以前は人間の姿で街の中で買い物をしていた所で出会ったので、その気になれば問題なく入れる筈なのだが気配が無かった。

 あれだけ散々…主人の前で虚仮にしたから、お仕置きでも喰らっているのだろうか?

 来るなら来るで…次はどんな偽物を掴ませてやろうかと楽しみで仕方がない!

 

 「とはいえ、ネタが無くなってきているんだよな。」


 騙せるとしたらあと2回が良い所だろう。

 下手したら次は本気で向かってくる可能性がある。

 見た目が少年あので、真の姿がどういう奴なのかは解らんが…デーモンロード程度なら負けはしないだろう。

 だけど、一応警戒はしておく。


 「あ、デーモンロードで思い出した! セルリアの事を忘れてた。」


 あれから2日は経っているから、いい加減考えは纏まっただろう?

 俺は冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに着いてから中を探すと、セルリアは…いた!

 セルリアはどうやら他のパーティーから誘われていた。


 「済まない…吾にはもう先約がいるんだ。 他を当たってくれないか?」

 「それなら心配ない! 我々も貴女には引けを取らない…」

 「すなんな、彼女は俺が先に誘っていたんだ。」

 「サクヤ殿! 待っていたぞ!」


 俺はセルリアに話し掛けると、セルリアは立ち上がって傍に寄って来た。

 だが、セルリアを勧誘していた冒険者は引き下がらなかった。


 「貴方がどこの誰だか知りませんが、我らはAランクパーティーですが、彼女の実力を発揮出来るパーティーで…」

 「俺はSSランクだが…何か問題でもあるか?」

 「SSランク⁉ とはいえ、貴方1人では…」

 「パーティーメンバーには、他に聖戦士と聖女と賢者がいるが?」

 「そ…その3人は異世界から召喚された者達と聞きますよ。 下手な嘘は…」

 「嘘では無いぞ、俺もその召喚された者の1人だからな。」

 

 俺は話の最中に居合をした。


 「召喚された者は、特別な力を持っていてもレベルは低い筈…そんなパーティーに剣聖の彼女が参加するのは!」

 「どうでも良いが、斬られた事に位気付けよ。」

 「は?」


 冒険者のリーダーが体を見ると、ベルトが切れてズボンが下がった。

 

 「ば…馬鹿な⁉」

 「特別な力を持っていてもレベルは低くて…と言っていたよな? なら、そのレベルが低い者の攻撃すら気付かないお前等のレベルは幾つなんだ? 0か? マイナスか?」

 「いつ攻撃なんかした⁉」

 「会話の最中に…お前が俺の事を疑った時にな。」

 「くっ……この屈辱は覚えておきますよ。 いつかお礼をしに行きますからね‼」

 「魔王を倒す前に頼む。 魔王を倒したら、この世界から元の世界に帰るのでな…」

 「どこまで貴方は…」

 

 そう言ってAランクパーティーは冒険者ギルドから出て行った。

 ああいう輩は適当にあしらっていれば良い。

 どうせ2度と現れる事もないだろうからな。


 「サクヤ殿がまさか…異世界から召喚された者だったとは⁉」

 「別に隠す気は無かったんだが、旅の間に徐々に話しておこうと思っていたんだがな…」

 「それで、吾の返事なのだが…喜んでパーティーに、いや…宜しく頼みます!」

 「別に言い直さなくても良いのだが…それで、その腰の剣だが…?」

 「これは…次の大陸までの間に合わせの武器でな…この大陸には吾に耐えられる武器が無くて…」

 

 セルリアの剣技は主に、居合から発せられる高速剣…両刃だが中間から片刃になる剣は、恐らくセルリアのスタイルに合わせた武器の筈。

 だとすれば、刀の方が使いこなせるのではないか?

 俺は収納魔法から数本の刀を出現させた。


 「この武器は一体⁉」

 「刀と呼ばれる…シミターの様な作りに似た武器で、セルリアのスタイルだとこれが合うと思ってな。 神刀、妖刀、聖刀と呼ばれた伝承にある刀だ。」


 まぁ、伝承はこの世界の物ではないが…。

 すると、妖刀の一振りがセルリアに反応した。

 その一振りをセルリアに渡すと、刀が強い光を発した始めた。


 「サクヤ殿…この光は一体⁉」

 「その刀の名は、妖刀・#妖娘花__コウジョウカ__#と言ってな…俺の元いた世界では、セルリアの別名だ。」

 「では、この武器は…吾の為に用意された物か?」

 「抜いてみろ…」


 セルリアは、妖刀・妖娘花を抜いた。

 すると刀身に光が吸い込まれて、桃色の刀身に変わった。

 俺が抜いた時はただの普通の刀の色と同じだったんだが…まさか適合者がこの世界にも居たのか。

 

 「手に吸い付く感じと丁度良い重さ…何より吾の理想が全て兼ね揃えた武器だ!」

 「それはセルリアにやるよ。 今後の旅で役立たせてくれ!」

 「申し訳ない、吾はサクヤ殿の為に…」

 「そのサクヤ殿というのは辞めろ! それに俺の為とか言うな! 次に自分を卑下する様な言葉遣いをしたら、睡眠魔法で眠らせてからお前の貞操を奪うぞ‼」

 「それがサクヤ殿の…サクヤの望みなら。」

 「自分を安売りするなよ! 本当に手を出すぞ‼」

 

 俺はそう言い終わると、俺とセルリアは笑いあった。


 「セルリア…背中は任せるぞ!」

 「あぁ…礼は活躍で応える事にしよう!」


 俺は明日の朝に出発する事を伝えると、城下街の入り口で待つとセルリアは言った。

 そして冒険者ギルドを出ると、殺気の篭った鋭い視線を感じた。

 振り返ると少年の姿をしたデーモンロードが首で合図をした。


 「そろそろ来ると思っていたが、まさか今日来るとはな。 まだネタは仕込んでいる最中なのに…」


 俺は奴の案内で門を出て少し離れた場所に案内された。


 「全く…何の用だ? 俺は明日出発だから、早く帰って寝たいんだが…」

 「貴方という人は、ボクを2度も虚仮にしてくれて…覚悟は出来ているんだろうな‼」

 

 デーモンロードは少年の姿から大人の姿へと変貌した。


 「それがお前の真の姿か?」

 「そうですよ…この姿を見た者は生きてはいませんが。」

 「俺と戦うつもりか? 辞めておけ…レッサーでは俺には勝てんぞ。」

 「貴方という人は…本当にボクを苛つかせてくれますね!」

 「いえいえ、お礼は結構だ。 じゃあ、またな!」

 「誰が逃がすと…」


 デーモンロードは掛かって来た…が、俺は聖剣で連撃を喰らわせると、デーモンロードは地面に倒れた。


 「な…なんだと⁉」

 「だからレッサー如きじゃ俺には勝てんと言っただろ。 ここは見逃してやるから、グレーターに進化してからまた来い! それと…お前の主の変態魔王にも宜しく言っとけ!」

 「我が主を愚弄する気か‼」


 デーモンロードは主を侮辱されたのが気に入らなくて。俺に攻撃を仕掛けて来たが…俺は聖剣で腕を斬り飛ばすと、足と角も斬りおとした。

 デーモンロードは叫び声を上げると同時に上空に逃げてから遠くに飛び去って行った。


 「あれだけ深手を負わせれば、当分来ないだろうな。 では、城に帰って寝るとするか!」


 俺は城に帰ると、明日に備えて寝る事にした。

 翌日…今日はこの城から出発する日だ。

 俺達は城門を出てから、街の入り口で待っていたセルリアと合流してから皆に紹介して、この国から出発した。

 次に戻って来るのは、魔王を倒してから元の世界に戻る時だろうと心に誓って…


 ~~~~~一方、魔王城では?~~~~~


 「マーデルリア…様、ただい…ま戻り…ました。」

 「ルック⁉ どうしたのですか、その姿は⁉」

 「あの人間は…とんでもない奴でした。 デーモンロードのボクが手も足も出ませんでした。」

 「な…何て事なの? 私の次に強い貴方がここまでの姿になるなんて…」

 「気を付けて下さい、マーデルリア様…奴の狙いは貴女を倒す事です。 ぐふっ…」

 「ルック…死んではなりません! 今すぐ癒してあげますからね!」


 マーデルリアの魔法で、ルックは危険な状態だったが回復させる事が出来た。

 そしてマーデルリアは、近くにあった玉座を破壊すると…ルックを酷い目に遭わせた者に向かって叫んだ。


 「来るなら来い! ルックをここまで追い詰めた者にそれ相応の代償を払って差し上げますわ‼」


 これからの旅は…どうなるのだろうか?

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