第3話

 私は半分死んだ。

 交通事故で。彼氏と一緒に乗った自転車で車に轢かれた。二人乗りは駄目だと学校の先生には言われていたけど、いつも二人乗りで下登校をしていた。

 好きだった。

 でも……。


 彼氏はもう帰らない……。


 私は半死に一生を得るように、不思議とあの世へは行かなかった。

 空へと行かず。海と山に行きたがった気がする。

 自然に帰りたかったのだろうか。

 高校生活最後に……思い出が欲しかった。

 妹の協力でしばらく学校に通った。

 けど、いつもつまらない。

 先生や友達は誰も私に話しかけない。

 私を見てくれるのは、いつも妹だけだった。

 私がどんな姿なのかはわからない。

 毛利君もまったく同じ境遇なのかも知れない。


「あのね。お姉ちゃん……。淡水魚の姿になっているよ」


 妹の言葉はあまり気にしなかった。

 だから旅に出た。

 家でペットとして飼っていた水槽の中の淡水魚は、ある日忽然と消えていた。妹が私を見つけてくれなければ、私はどうなっていたのだろう。


「その男の人も……。同じ姿……だよ……」


 私と毛利君は海に入った。


「お姉ちゃん。きっと、戻ってきてね。人間の姿に戻ったら……。きっと、戻ってきてね……」


 海で泳いでいると、今ではこの上ない自由が得られると思った。


 そう……。


 毛利君と一緒に……。




 あの世には行かない……。

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