第2話

 夕焼けの浜辺を一緒に歩いた。

 毛利君という名で大学二年生だ。


「そうか。高校生活最後の思い出作りか……」


「ええ……。でも、妹と一緒に海か山に行きたかっただけでもあるの……」


 私は白のワンピースを着て、仕事を終えたのにエプロンをしていた。

 彼は相変わらずビールのジョッキを傾け、白い泡のついた口の周りを気にせずに話していた。

 ビールが好きなのだろう。

 そんな彼は大人びて、それでいて子供のような屈託のない笑顔をする時があった。


「ははっ、俺もそうしたかったな……。高校生活はつまんなかったからな」


 彼は一瞬だけ寂しそうに呟いた。


「好きな人とか……。いたんですか?」


 彼は何も答えずにビールを煽る。

 顔に赤みがでてきた。

 涼しい風に当たり、私は水平線の向こうを見つめた。


「どうして、海か山に行きたかったのか。自分でもわからない気がする。ただ、自然が好きなだけかも知れない。毛利さんは海は好きですか?」


「ああ……。俺もそんな感じだ。友達に誘われた時に、友達と海で遊んでいたい気持ちがあったんだけど、なんでかはわからないんだ……。でも、海は好き」


 明かりを点けた海の家から由比が走って来た。

 所々、貝殻の目立つ砂浜は足跡がついては波に流されていた。


「お姉ちゃん。もう行くの?」


「ええ……」


「俺も行く」

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