多才な子供⑧

 すると突然、月の光に照らされて、掌底で両目を強く抑え、背中をのけぞらせながら、上を向いて叫んでいるゴーディが視界に入った。


 彼は言葉にならない嗚咽を叫んだ後、虚ろな、生気の抜けた目でローラを眺めこう言った。


「僕、見つけたよ」


 そうして頭から床に倒れた。


 ローラは素早く駆け寄り肩を抱きかかえたが、涙は出なかった。


「やめて! 死なないで。駄目よ! あなたがいないと私は……私は……――」


 するとローラは急にゴーディを抱えて走り出し、中庭へ走った。


 そうして城内から飛び出し、城下街へ向かった。城内お抱えの医者がいるにも関わらず。人目の多い場所に着くとすぐに、ローラは大声をあげて泣き出した。


 月は照らすのは縁起が悪いと言わんばかりに雲に身を隠し、木々は身震いをし、花々はどことなく下を向いているようだった。


 悲痛な、鋭い、空気を割く叫び――


周りに人だかりができて、ひそひそと話し始めた。


「何があったのかしら」

「おい、あれってエテルヌス様じゃないか」

「本当だ、でもぐったりしてまるで魂が抜けているみたい」

「おい、誰か医者を!」

「ローレンシア様は、子供を思って泣いているんだわ」

「それにしても、我が子を思って泣く姿はなんとあどけなくて、かわいいんでしょう」


 その声を聞いてローラは、泣きながら頬を紅潮させ、耳のてっぺんまで赤くなった。


 でも、身に着けているルべライトは最後の光を放つと、ゴーディの淡い瞳のように、光沢のない虚ろな赤色になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る