多才な子供➆

ローラは最近、子供が心配だった。夜になると子供がいる塔から不気味な音が聞こえる。


 何か黒いものがうねっているような音。まるで親子の情を割くような轟音。子供の中に死を住まわせるような噪音。 


“あの子がいなきゃ私生きていけないわ! ”


 ある晩、あまりにも音がうるさいのでローラは仕方なく離れの塔まで来た。


 塔の螺旋階段を上り、あの不快なうねりの音が大きくなるにつれて、膝が震えているのを感じた。


 ローラはサテンのドレスの裾を力一杯握った。ドレスに爪の後が深く残るほどに。


 震える手でドアの取っ手に手を近付けたが、一度手を引き深く息をして、心を整える。


 

 その間、ローラの背後の暗闇から、あのがひょこひょこと素早く顔を出していた。 


“だめ、その扉を開けちゃだめ! 開けたらまた私を見失ってしまうわ”


 は白いワンピースに、インディゴライトの首飾りを付けていた。



 ローラは片手を強く握りしめる。爪が手の平に食い込み汗が溜まるのを感じる。そしてもう一方の手でドアを開けた――

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