第38話 シャーロットはどんな人?(アダム目線)

 うちの奥さんは若いのにしっかりしている。


 前世二十代後半で亡くなって、赤ん坊の時から前世の記憶を持ったまま成長したらしいから、実年齢十四歳(見た目はもう少し幼く見える。本人には絶対に言えないが)よりも内面は成熟した大人なんだろう。だからこそ、浮浪児の存在に憤りを感じ、僕に喝を入れるような物言いをしたんだろう。

 思わず惚れなおしてしまった。


 そんな大人びた面がある反面、若者のような(若者で間違いはないのだが)ストレートな物言いをしたり、セクハラ親父のような下品なことを言ってキヒキヒ笑ってみせるなど、おちゃめな一面もあったりする。


 そんなうちの奥さんの前世が、最近凄く気になる。

 彼女の核になってる性格だからってのもあるし、あれだけ魅力的な女性だから、彼氏なんかも沢山いたんだろう。なんなら、没年齢を考えても結婚していてもおかしくはない。

 それに比べて、僕は前世も今世も彼女はキスどまりのほぼプラトニックな彼女が一人だけだ。前世は職業的に経験人数だけは多いし、仕事のおかげでテクニックだけはまぁまぁ自信はある。

 もし彼女にSっ気があったとしても、よほどのハード系じゃなければ、付き合える自信はある。好きか嫌いかはおいておいてだ。


 あの縛り方、玄人としか思えなかった。なんなら、ちゃんと講習会に出て緊縛を学んだガチのやつ。


 ガルマという男、あいつが転がっているのを見た時、かなり衝撃を受けた。基本を忠実に模した手本のような後手縛り、拘束に関係ない股縄を通すとことか、S属性が見受けられる。さらに胡座縛りに持っていくあたり、実用も取りつつさらに辱めも与えようという、ドSさがさらに増していた。


 僕の奥さんはドS?


 この世界では女性は十四歳で結婚でき、成人も十六歳と早いけれど、前世でいえばシャーロットはまだ中学生だ。しかも、見た目の発達が良いとは思われないから、内臓的にもまだ未熟なんじゃないだろうか?

 そんな彼女に子供ができる行為なんかできる訳がない。トラウマ的にできるかも微妙なとこなんだが、シャーロット相手に限れば……できる気しかしない。

 シャーロットの足に革紐を巻いた時、凄く久しぶりに……その……、下半身に滾るものを感じたのだ。

 断じて縛る行為に感じたんじゃない。S対Sの組み合わせなんか、上手くいく気がしないから。そっちではなく、いわゆる足フェチの方だ。どちらかというとM属性だろう。


 前世にもなかった性癖に戸惑わなくはない。これもシャーロット限定な気がするから、シャーロットフェチが正しいのかもしれない。


 なんか思考がSMに引きずられてしまったが、なにが言いたいかというと、僕達の夫婦生活についてで、彼女がせめて十六……いや身体の負担を考えたら十八歳になるまでは子供を作る行為は厳禁なんじゃないかってことだ。自分で決めた決まりではあるが、日々自分を律し、シャーロットにたいして誠実に接しようと努力していたのだが……。


 ★★★


 夕飯も食べ終わり各自の浴室で風呂に入った後、アダムは夫婦の寝室で仕事の残りに目を通していた。


 孤児院の建設については、まだ候補地すら決まっていない状態で、今は孤児などの現状把握を命じたところだった。孤児院完成までにはしばらく時間がかかるので、まず手始めにナチとその仲間の孤児達の仮の住まいを探していて、王太子宮では十一歳のナチ、九歳のカンジ、同じく九歳のサラを預かることにした。ナチとカンジは侍従見習い、サラは侍女見習いという名目で預かる手続きが終わり、明日から王太子宮にくる予定になっている。

 王宮内に住むには手続きが煩雑で、侍従や侍女ならば比較的簡単な手続きですんだからでもある。

 ナチ達は、午前中は学校に通わせ、午後はマリアの補助をすることになっている。また、ナチ達の教育にかかりきりになるだろうマリアのかわりに、一人侍女を後宮から引き抜いた。シャーロットの護衛も兼ねることができる侍女で、名前はカリアンナ・ジェルモンド、通称カリナ。イーサンの姪で、シャーロット以外唯一アダムが普通に接することができる年頃の女性でもある。カリナも明日から王太子宮に引っ越してくる予定だ。


「あー、いいお湯だった」


 風呂上がりのシャーロットが寝室にやってきた。


「お疲……れ」


 書類から目を上げ、僕はシャーロットの寝間着姿に目が釘付けになった。


 昨日までは、ちょい長めのワンピースのようなパジャマに、お腹がすっぽり隠れる股上深めの長ズボンを履いたお腹を冷やさない仕様の寝間着だったのに……。


 今シャーロットが着ているのは、上はビスチェのようにを肩出し、胸のところがレースの段々がついている可愛らしいもので、なのにお腹がチラ見えするくらい丈が短くエロ可愛いものだった。それに合わせたズボンは、お尻のところにも胸の部分と同じレースのフリルがふんだんに使われたかぼちゃパンツで、膝上十五センチくらいのところでピンクのリボンでキュッと縛られており、シャーロットの白い太腿にリボンが垂れていた。白い肌に白い着衣、清楚なふりして無茶苦茶エロい!肩にかろうじてガウンをひっかけているが、すぐにハラリと落ちてしまいそうだ。


「……」


 ヤバイ!エロ天使かな?!


「アダム、どうか……した?」


 あまりに長い時間呆けていたせいか、シャーロットが怪訝そうな顔をして近づいてきた。僕の横に立つと、「よいしょ」とかけ声をかけて、腕の力で身体を持ち上げて机の上にお尻をのせて座った。その拍子に肩からガウンが床に落ちた。

 小ぶりだけれど柔らかそうなお尻の下で書類がクシャリと音をたてたが、それよりもシャーロットの組まれた白い太腿から目が離せない。丸出しの肩も華奢で、鎖骨の凹みかまくっきり見えた。自然と口の中に唾がたまり、飲み込んだ音があまりに大きく響いて我に返った。


「ロッティ、その寝間着は可愛いけど、お腹が冷えそうだよ。肩も冷やすと風邪をひく」

「だって、お風呂上がりであっついんだもん」


 胸のところをクイッと開けて、パタパタと手で扇ぐ様子は、もしかして誘われてる?と勘違いしてしまいそうになって、慌てて視線をそらした。


 いや!ただの天然。

 僕のことを信頼してくれるのは嬉しいけれど、あまりに無防備過ぎて辛い。


「あ、ごめん。書類踏んじゃった。破けないように取って」


 シャーロットは足を組み直して、半分お尻を上げるように身体を捩り、下敷きになった書類をどけてくれアピールをする。


 腰をひねって片尻上げたポーズは、ちょっと……かなり目に毒だ。

 これ以上我慢できる気がしない。


 ガウンをつかんで立ち上がった僕はシャーロットを抱き上げ、足早にベッドに運んだ。

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