第54話 ネットオークションと、ネット販売と、モロヘイヤ丼スペシャルバージョン

 午前中に畑の収穫と、取り調べと、マイナスイオンを浴びる会を慌ただしくやって午後になり、甲斐蘇かいそさんからメールを貰った。

 それにはインターネットアドレスが書かれており、アクセスしたところネットオークションだった。

 光る飴が多数出品されている。

 本物の転売はまだ良い方だ。

 中には飴に蛍光塗料を塗った物さえある。

 どれも1万円以上で落札されている。


 こいつら許せん。

 でも品物の説明は飴としか書かれていない。

 違法な事はしてない。

 サイトの主催者に苦情を入れても、対処できないだろう。


 しばらくして甲斐蘇かいそさんが訪ねてきた。


「困った事になりましたね。本物が混ざっているのが性質が悪い」

「うーん、こういうのは根絶できないと思う。要するに本家がないのが不味いんだと思う。本家は商標とか取ってやれば良いと思う」

「やるって何をですか」

「ネット販売」

「注文が殺到しますよ」

「でも本家があれば偽物は減ると思う。抽選するシステムを作ってよ」

「はい、それは可能です」

「いつから出来る?」

「2、3日もあれば。商標も申請しておきましょう」


「飴には花や野菜の種を付けて発送してね」

「ええ、それは容易い事です」


「ホームページはすぐに立ち上げられるでしょう」

「ええ」

「掲示板で宣伝しておくよ」


【朗報】マイナスイオンを浴びる会28【気軽に来てね】


578 スレ主

ネット販売をする事にしました。

まだ準備中だけど。

http://○○/○○/


579

守銭奴乙


580

転売ヤーが活躍するな


581 スレ主

転売できないように何かしら対抗措置はとります


582

どんな?


583 スレ主

これから考えます

呪いとかどうですか


584

うわっそれは恐ろしいな


585 スレ主

呪いなら傷害罪にあたらないですし


586

そうだね


587

喰らった奴の顔が目に浮かぶ


588

立たなくなる呪いが良いな


589

そんなの金の為なら無視するだろ


590

大音量の騒音が聞こえて眠れないなんてどう


591

砂糖アレルギーが良いのでは


592

アレルギーなら水だろ


593

それは死ぬな


 さてどうしよう。

 迷いの魔法があるのだから、精神魔法で転売しようとすると飴を食ってしまうようにするか。

 転売すべき飴がなければどうにもならない。

 返品しようにも現物がない。

 偽物を返品したら詐欺で訴えてやろう。


 偽物が送られてきた場合。

 開封しなくても分かるような道具が必要だな。

 鑑定の魔道具みたいなのがあると良いな。


 まずは転売しようとすると飴を食ってしまう魔法だ。

 クールムのところにシイタケを持って訪れた。


「商品を転売しようとしたら、食ってしまう魔法は掛けれるか?」


 挨拶もそこそこに俺は切り出した。


「精神魔法で何とかなるな」

「1週間ぐらいもつ効力がほしいんだが」

「強めに掛ければ何とかなるだろう。だが、魔法使いには効かないぞ」

「そこは平気だと思う。魔法使いの転売ヤーはいないはずだから」


 後は鑑定の魔道具だな。

 エイザークの所に繋いだ。

 やっぱりシイタケを持って行く。


「鑑定の魔道具がほしい」

「それは国宝だ。おいそれとはやれん」

「中にエリクサーが入っているかどうかさえ分かれば良い」

「それなら簡単だ。魔力感知の魔道具で事足りる。エリクサーの魔力は強烈だから間違える事はないだろう」


 用意しておいた伊達眼鏡に魔力感知の魔法を付与してもらった。

 家で魔道具を使いエリクサーを見ると密閉されてても光が感じられた。

 これなら大丈夫だな。

 魔力感知を持つモンスターは多いらしい。

 異世界の魔法使いは鍛えるとすぐに魔力が感知できるようになるらしい。

 魔力感知の魔石はクズ魔石なんだそうだ。

 魔力が感じ取れるのなら、魔力の研究が進みそうだな。

 才華にも一つ作ってやろう。


 魔力感知の眼鏡を用意して、才華の帰宅を待つ。

 もちろん眼鏡は才華のスペアの眼鏡だ。


 しまったばたばたしてて、夕飯を考えてなかった。

 取り調べにも行ったし、マイナスイオンを浴びる会やったし、やる事が多すぎなんだよ。


 仕方ない。

 今日は卵かけご飯で許してもらおう。


 才華が帰ってきた。


「お帰り。今日はプレゼントがある。じゃじゃーん」


 俺は眼鏡を取り出した。


「私の眼鏡だけど、たぶん魔法が掛かっているのよね」

「うん。眼鏡を掛けて袋を見てみて」


 才華は言われた通り眼鏡を取り換えて袋を見た。


「袋の中に光が感じられるわ。透視というわけではないわね。もしかして魔力が見えている」

「その通り。エリクサーが光って感じられるんだ」

「面白いわね」

「ごめん、実は夕飯の準備が出来なかったんだ」

「許すわ」


「じゃあ、モロヘイヤ丼スペシャルバージョンを食おう。ご飯を丼に盛ってモロヘイヤを掛ける。その上に生玉子を落として、醤油を掛けただけだけど」

「頂きます」

「頂きます。随分、急いでるね」

「早く魔力眼鏡の実験をしたいから」


 才華がモロヘイヤ丼スペシャルバージョンをかき込んだ。

 つるつるっと食えるのが特徴だから急いでいる時は良い。

 俺もつるつるっと食べた。


 才華は畑の野菜なんかを熱心に眺めてた。

 俺も魔力眼鏡を掛けて野菜を見た。

 光っているな。

 エリクサー程ではないけど。

 地面もうっすらと光っている。

 魔力を帯びているんだな。

 これが光を失うぐらい薄めないといけないのだろうな。

 俺も色々と実験してみよう。

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