第45話 自首と、マイナスイオンを浴びる会と、麻婆ナス素麺

 今日は自首する日だ。

 俺は最寄りの警察署に出頭した。

 警察官と思われる人に『神社で無許可で治療行為しましたので自首します』と言った。

 少し待たされ、取調室に入れられた。


 俺は取り調べスタートと呟いた。

 意識が朦朧として気が付いたら署名捺印をと言われてた。

 大人しく署名捺印をする。

 そして、なぜか尿を取られて、帰された。

 こんなので良いのか。


【朗報】マイナスイオンを浴びる会16【気軽に来てね】

1

場所は○○神社の横手の森。時間は午後3時から、午後4時まで。

参加料一万円。

飴をサービス。


 俺はスマホから掲示板に書き込んだ。


2

スレタイ変わってて草

いったいどうしたんだ


3 スレ主

単なる気分転換ですよ


4

内容も変わっているんだが


5 スレ主

そうですか

気のせいでは


6

偽物の予感


7

だな

法律に触れるような内容がない

あの攻めの姿勢がないから別人だ


8

万札取るとは考えたな

一回だけ引っ掛かる奴はいるだろう



 こんな感じで良いだろう。

 エリクサーをまぶした飴をもって神社で客を待つ。

 姿隠しは使ってない。

 客がやって来た。


「こんにちは、私が主催者です。参加料を貰ったら飴をサービスです」

「治りますか」

「それには答えられません」

「詐欺なんですね」

「マイナスイオンを吸う会です」

「酷いです。望みすがって来たのに」


 悪い事をしている気分になった。

 持ってけ泥棒。

 ただでいいや。


「そう言われても。お金は要らないので、飴を貰って帰ってはどうですか」

「ただなんですね?」

「ええ、じゃあ頂きます」


 飴を渡した。

 光っているから、見るからに怪しげな飴だが、客は口に入れると舐め始めた。

 そして、虫歯の詰め物を吐き出した。


「嘘っ、虫歯が治っている」

「マイナスイオンの力です」


 次の客が見ていて1万円を払って飴を舐める。

 やっぱり虫歯の被せた物とかを吐き出す。

 客がスマホで掲示板に書き込んだので、俺は掲示板をチェックした。


【朗報】マイナスイオンを浴びる会16【気軽に来てね】

9

本物です。


10 スレ主

本物のマイナスイオンの力だ


11

何?

マイナスイオンの力ってw


12

本物です。


13 スレ主

治療行為は致しません

マイナスイオンを吸うだけです


14

信者乙


15 スレ主

マイナスイオンを信じるかはあなた次第


16

本当に病気が治ったんです。


17 スレ主

治療は行いません

マイナスイオンを吸うだけです


18

弁護士に入れ知恵されたな


19

草生える


20 スレ主

くどいようですが治療は行いません

マイナスイオンを吸うだけです


21

そう来たか

でももう遅いんだよ

散々治療って書いたんだからな


22

タイーホ


23

その後スレ主の姿を見た者はいなかった


 掲示板はこんな感じで良いだろう。

 客の何人かは飴を舐めたが、何人かは拒否した。


 警察に通報が行ったのか、飴を持ち帰る人もいた。

 才華の分析では豆としか出ないんだよな。

 分析されても構う事はない。


 正体をばらすのって楽しいな。

 出来るのは1回だけだけどな。

 もう姿隠しを使うつもりはない。


 さあ、帰って夕飯の支度だ。

 何を作ろうかな。


 ナスがあったから、暑いし、麻婆ナス素麺だな。

 スーパーで材料を買う。


 家に帰ったら才華も帰って来ていた。

 さっそく、素麺を茹でてて冷水で洗う。

 水を切ったら、冷蔵庫に入れて、麻婆ナスを作る。


 素麺を皿に盛りつけて、麻婆ナスを掛けたら完成だ。


「食おう」

「そうね。明日、家宅捜索が入るから」


「何で分かったとは聞かない」

「急がせたのよ」

「別に良いか。持って行ってもらって困る物はない。スマホなんか買えば良いんだし」


 清々しい気持ちで麻婆ナス素麺を食う。

 自首して良かったな。


「エリクサーが警察の手に渡るのね」

「飴を持って帰った奴がいるから、もう手に渡っているかもな」

「きっとパニックを起こしているわね」

「そうだな。大学とか持ち込まれるのだろうけど、教授とかが可哀想だ。麻婆ナス素麺は美味いな」

「美味いわね。私もしばらく来ないから、よろしく」


「別れるとか言わないよな」

「まさか。興味が無くなるまで、絶対に離さないわ」

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