第35話 魔力の正体と、滅亡解決策と、ミニカボチャのグラタン

 今日は才華をエイザークの所に連れて行く事にした。

 ジャガイモを地蔵様に供える。

 謁見の間に背景が切り替わった。


「人を連れているとは珍しいな」

「一緒に住む事になったサイカだ」

「初めましてサイカです」

「うむ、エイザークだ。よろしくな」


 じゃあ、さっそくシイタケでおすそ分けスタンピード。

 才華と向こうに渡った。


「その銀色の道具はなんだ?」

「彼女はまだこちらの言葉を覚えていない。会話を録音しているんだよ」

「録音の魔道具とは珍しい」

「魔道具じゃないんだけど、似たような物かな」


「支払いは今回も身体強化の魔法で良いのか?」

「それでいいよ」


 手袋をして境界に立つ松ぼっくりに魔法を掛けて貰った。


「松ぼっくりの効果は何ですか?」

「一つやるよ。筋力が5%上がるんだ」

「仮説ですが、魔法とはナノマシンを利用した技術ではないのですか」

「魔力の正体がナノマシンだって。どうかな。地球にも魔力があるそうだから、観測されていないのはおかしい」


「素粒子より小さい物で出来ているナノマシンならありえます」

「それはないとは言えないけど。真実がどうなのか分からないな」

「感情や思考に反応するエネルギーというのが分かりません」


「超能力はどうなんだ」

「本物にはまだ会った事がありません」

「ないとも限らないだろう」

「そうですね。未知の現象はまだあると思いますが、推測が出来ない。理論が成り立たないのです」


「サイキックエネルギーじゃ駄目なのか」

「脳は電気信号と化学物質で動いています。これが未知のエネルギーを動かしているとはとても思えません。電気製品などは電気で動いています。偶然サイキックエネルギーとやらに干渉するケースがない事が証明してます」


 めんどくさいな。


「で、魔力と魔法がナノマシンだという結論なのか」

「ええ」


「いいじゃん。不思議エネルギーで」

「よくありません」


「そんな事より地球の滅亡を何とかしようよ」

「1000年後でしたよね。それまでに人類が滅びる可能性もあるわけですから、放置しておけば良いのでは」

「考えようよ」


「エネルギーというものは高い所から低い所に流れます」

「うん、そうかもね」

「エネルギーの導線を引っ張って行けば良いのです」

「どうやって」

「あなたの眷属は野菜ですよね」

「そうだね。アンデッドとオークがいるけど」


「その二つは新情報です。聞いてません」

「後で会わせるから、頼むから導線の話を聞かせて」

「いいでしょう。カボチャのツルを異世界に引っ張っていけば良いのです」


「なぬ。そんな簡単な事で」

「ただ、魔力というエネルギーの流れが、その行為でどれぐらいあるかは分かりません」

「やってみてから考えよう」

「非効率的ですね。理論を立ててから実験すべきです」

「そうだね。理論は才華に任せるよ」

「任されました」


 あっさり、地球滅亡回避の案が出て来た。

 これが駄目でも才華なら何か考えそうだ。

 カボチャのツルを引っ張ってエイザークの所に行った。


「アルカナを呼んで欲しい」

「おお、アルカナを呼んで来い大至急だ」


 しばらくして、息を切らせたアルカナがやって来た。


「このカボチャから異世界に魔力が流れているはずなんだが」

「流れてませんね」


「そうだ。穴を開ければ良いんだ。カボチャの葉っぱに魔力的な穴を開ける」

「魔力奪う魔法はアンデッドが使う魔法で禁忌です。穴を開けるのも同義かと」

「そうだった。俺の世界を助けると思って、そこをなんとか」

「駄目ですね。禁忌は犯せません」


 野菜は眷属だけど、俺の言う事をきいたためしがない。

 魔力を葉っぱから放出してみろよ。

 そう強く念じる。


 キラキラした物がカボチャの葉っぱから出て来た。


「すごいです。魔力の可視化なんて初めて見ます」

「成功したのか。俺は放出できないけどな。植物に出来て俺に出来ないなんて悔しい」

「元から持っている能力なのでは」

「そういえばマイナスイオンが出るとかなんとか。魔力も放出するか。それで量はどうなんだ」


「一秒で都市1つ分ぐらいは出てますね。王様、これでこの国は豊作間違いなしです」

「ソウタ、貰ってばかりで返す物がないのが、心苦しい」

「気にするなよ。一緒に飲んだ仲間だろう」

「そうだな。ドワーフは酒盛りした友は忘れないし、見捨てたりもしない」

「そういう事よ」


 畑で才華が呼んでいる。


「ごめん、彼女が呼んでるから」


 カボチャはそのままにして日本に戻った。


「何?」

「お昼ご飯作って」


 可愛くおねだりされてしまった。

 彼女の手料理が食いたいと思った俺は罰当たり者だろうか。

 作れば良いんだろ。


 ミニカボチャの上を切って、種を取り除いて、ラップに包みチンをする。

 火が通ったか確認して、中に冷凍食品のグラタンを入れる。

 電子レンジで温めて、チーズをさらに加えて、オーブントースターで焙ったら完成だ。


「また、男料理なのね」

「グラタンなんか作ったら上手く作れる自信がない。冷凍食品もカボチャの器で店の料理みたいだろ」

「見た目はね」

「味だって美味いぞ」


 食ってみる。

 チーズととろとろのホワイトソースが良い感じだ。

 エビもプリプリで言う事ない。


「意外に美味しいわね。器のカボチャが良いわね」

「そうだろ。グラタンと一緒に食うと美味いぞ」


 さて、カボチャのツルの実験はここまでで良いや。

 本格的な実験はまた今度にしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る