第26話 シイタケと、刑事と、肉野菜炒め

 昨日の収穫はキュウリが2本とナスが1個。

 その前の日は、キュウリが10本採れたのにね。


 天候に左右されて収量は変わる。

 その代わりにモロヘイヤを沢山収穫した。


 アンデッドダンジョンでの作物がシイタケに決まった

 アンデッドは太陽の光が苦手らしい

 薄明りでも大丈夫な作物と言ったらシイタケぐらいしか思いつかなかった


 作り方も簡単だ。

 クヌギなどの原木にドリルで穴を開ける。

 そこに木づちで菌糸の種を埋め込むのだ。

 種はコルクの蓋みたいな形で直径が1センチぐらいだ。

 俺達は駒と呼んでいる。

 これの埋め込みのバイトをやった事があるから手順はわかる。


 種を埋め込んだ原木を並べて放置する。

 気温と湿度さえ問題なければ、シイタケが出来る。


 ただ、時間が掛かる。

 2年はみておかないと。


 すぐに収穫できる栽培キットもある。

 安いのは1セット1500円ぐらいだ。


 これは木に菌が回った状態で届く。

 5日も経てば収穫が可能だ。

 100セット召喚した。


 アンデッド達が霧吹きでシイタケの原木に霧を吹きかける。

 世話は大丈夫だな。

 そんなに難しくない。


 作ったシイタケは、おすそ分けスタンピードを起こす事にしてる。

 ご自由にお持ちくださいと書かれた段ボール箱に入れてだ。


 準備は出来た。

 5日後が楽しみだ。


 金を稼ごう。


【朗報】心霊治療開催10【気軽に来てね】

68

場所は○○神社の横手の森。時間は午前11時から、午前12時まで。

一回一万円。

痛み止めは千円。

※声を掛けられても驚かないように。


69

おっ、伝説の殺し屋の肉声が聞けるのか

話を聞いてみたい


70

その後69の姿を見た者はいない


71

動画アップしたら、金が入りそうだ


72

それな

試したが辿り着けなかった


73

うひっ

マジもんなのか


74

このスレの常識だぞ

治療以外の目的で行こうとすると

大抵辿り着けない


75

なんかトリックがあるんだよ

あれだ

心を読む機械と幻覚を見せる機械だ


76

それは凄い科学力だな

癌が治るならそうかもな


 掲示板の半分はどこかの組織が実験しているという設定らしい。

 後の半分はオカルトを信じている。


 神社に行くと最初の客は、鋭い嫌な目つきをしてた。


「俺は刑事だ」


 警察か。

 害意を持ってないって事は逮捕じゃないんだな。

 話を聞きに来ただけか。

 どうしよう。

 適当に話てみるか。


「なんの用だ?」


 念話で話し掛ける。


「違法だと分かっているだろ。悪い事は言わないから、自首しろ」

「俺の肩に世界の運命が掛かっている。警察が肩代わりしてくれるのか」


「何だと! 話せ!」

「魔力が溜まり過ぎて世界が滅亡する」

「嘘じゃないのか」


「本当だ。信じるか信じないかは勝手だ」

「それと法律違反は別だ」

「事情は話した。それに自首するつもりはない。心霊治療して何が悪い」


「医療行為が問題なんだよ」

「治療に使える不思議な力があったら、おすそ分けしたいと思うだろ。たぶん誰にも理解されないと思う。もう来ないでほしい」

「また来るよ」


 刑事は去っていった。

 迷いの魔法の条件に、治療目的でない人の排除を、追加すべきだな。

 悪い事をしている認識はある。

 だが、どうしろと言うんだ。

 利用されて生きるなんて、まっぴらごめんだ。


 孤独なアメコミのヒーローの気持ちが分かる。

 正体を晒したくない。

 でも人は助けたい。


 どこの利害関係にも関わりたくない。

 政治利用なんてのもごめんだ。

 有名人になりたい訳じゃない。

 理解なんか求めていない。


 俺に必要なのは相棒だろうか。

 ヒーローなら、相棒キャラが必ずいる。


 もやもやした物が心に広がった。

 俺はどうしたら良いんだ。

 明日、エイザークに悩みを打ち明けてみようか。


 時間内の治療を終え、昼飯を作る事にした。

 ピーマンを貰ったから、肉野菜炒めを作ろう。


 油を引いて、ナスとピーマンを入れる。

 火が少し通ったらキャベツと豚肉を入れる。

 キャベツがしんなりしたら、塩と胡椒を振る。


 シンプルだが、それが良い。

 塩気が少し足りなかったので、醤油を垂らす。

 野菜のうま味と甘味が良い味を出している。

 豚肉から出た肉汁も合わさってとても良い。


 ご飯が進む味だ。

 ふぅ、食った食った。

 シイタケが出来たら、シイタケの油炒めなんかも、食いたいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る