第20話 召喚と、ダンジョンメイカーと、雑炊

 今日の天気はくもり。

 過ごしやすい気温。

 台風の置き土産で風も少し吹いていて、心地いい。

 何となく、今の状況を表している。


 オーク達に農業させるのはとても良い事だ。

 だが、ダンジョンを開かずに、養っていかなければならない。

 そう言えば食料はどうしていたんだろう。


 豚平とんぺいに聞くか。

 初めてオークダンジョンに足を踏み入れた。

 草原あり、森あり、沼ありだな。


 オークは少しも怖くない。

 配下になっているので、恐怖を感じないようだ。

 オークに案内されて、豚平とんぺいのいる場所に行った。


「おはよう」

「マスター様、おはようございます」


「聞きたいのだが、食料はどうなっている?」

「前は野生動物と植物を召喚してました」


「召喚か。俺にも出来るのかな? 俺の詳しい能力が知りたいな」

「準備中だと言う事はダンジョンメイカーですね」


「そうだな、そこから教えてほしい」

「ダンジョンメイカーは神が召喚します。出来るのはダンジョンの作成と、モンスターなどの召喚と、ダンジョンの整備です。召喚は双方が納得しないと出来ません。怪我などで死にそうな者が多いですね。ダンジョン整備の能力で回復させてから、ダンジョンモンスターとして扱います」


「うん、大体分かった。双方が納得してれば召喚できるのだな」


 米10キロ召喚と念じてみた。

 2,960円くれと返事がある。

 金が要るのか。


 いいよ持ってけよ。

 米が入った袋が召喚された。

 日本のだな。


 財布を見ると金が少し減っている。

 心霊治療で儲けているから、金は大丈夫だ。

 召喚は匿名性もばっちりだな。


 農具を召喚しようとして、駄目なのが分かった。


「召喚の種類はどうなっている?」

「ダンジョンメイカーの種族が主ですね。それと食料と植物です」


 あちゃー、農具は駄目か。

 食料が召喚できるだけでありがたいと思わないとな。


 種族というと人間が召喚できたりするのか。

 ややこしくなるから、人間の召喚はしないけどね。


「ダンジョンメイカーについては分かった。次に行ってくれ」

「ダンジョンを開かないと魔力は減っていく一方です。召喚した同族を共食いさせるわけにもいきません。そうした行為には枷が掛かっています」

「ほほう、なるほど」

「減っていく一方だと、ノルマの囁きが酷くなります」


「準備中ではいられなくなる訳だ」

「ええ、そしてダンジョンメイカーはコアを生み出して、ダンジョンマスターになります」

「そんな事になっているのだな」


「大体分かった。だけど、俺からその知識が抜け落ちているのはなんでだ」

「それはダンジョンメイカーを殺したからではないでしょうか」


 あー、畑ごと転移してダンジョンメイカーを生き埋めにしたとか。

 ありそうだ。


「ダンジョンマスターも代替わりするのか」

「ええ、死ぬとコアによって新しいダンジョンマスターが召喚されます」


 ダンジョンメイカーの状態ではコアがないから、殺した者が受け継ぐのだな。


 疑問も解けてスッキリだ。

 みんなで飯にしよう。

 近所の人に頼まれていた事がある。

 爺さんがいたのだが、家族と旅行に行った帰りに、峠にある店の釜飯をお土産に持って帰るのが楽しみだった。

 その土釜を保存していた。


 年に何回も家族で行くものだから、物置は土釜で一杯になった。

 亡くなって、その処分を頼まれた。

 一応遺品だから捨てるのはちょっとという訳だ。

 せっかくだから使わせてもらおう。


 米と卵を召喚して、米をぎ、水を入れ、鍋の素と土釜に入れる。

 かまどをコンクリートブロックで作り、木材は材木屋から買った。

 後でオークにはダンジョンの森を伐採して、薪を作ってもらおう。

 樹がなくなったら、新しい樹を召喚できるだろう。


 かまどができたので、火を点けて、雑炊を作る。

 出来た雑炊に玉子を落として、塩で味を整えれば完成だ。


 俺も一緒に雑炊を食う。


「はふはふ、熱いな」

「こんなのどうってこたぁないですぜ」


 オークの舌は頑丈らしい。

 熱いのも物ともしない。

 かれらがお替わりを作り始めたのに、俺はまだ箸をつけられないでいた。


 息を吹きかけ冷ましてから食う。

 米の甘味と塩と玉子と鍋の素が良い味を出している。

 素朴だが飽きの来ない味だ。


 さて、オークダンジョンだが、豆を植えてみよう。

 豆なら痩せた土地でも育つ。

 収穫は5ヶ月後だから、12月だな。


 それと二十日大根を植えてみようと思う。

 葉っぱも食えるし、すぐに収穫できる。


「肥料どうしよう」


 召喚肥料!

 おお、召喚できた。

 ええと何でだ?。

 まあ良いや、これでだいぶ楽になった。

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