最終話 救世主

 一か月後。


 王都の城壁から大きな魔物・・が姿を現した。


 いや、魔物ではない。


 あれこそが伝説に伝う魔王『マモン』である。


 姿は大きな蜘蛛の形をしているが、相当な知恵を持ち、多くの魔物の眷属を従えている。


 巨体を進めてようやく王都にやって来たのだ。




「ベリアル様。本当に良かったのですか?」


「ああ。問題ない」


 未だ心配のスカーレットが不安そうに俺を見つめる。


 そんな彼女の頭を優しく撫でてあげると、普段の凛々しい彼女の表情が可愛らしく変わる。


 この一か月。幾度か交わって、すっかり女性の顔になった気がする。


「んも! ベリアル様! 私も触ってくださいまし!」


 あはは……隣のオリビアが嫉妬し始める。


 最近はわりと積極的で、殆どの時間をうちの屋敷で過ごしている。


 元々我がままなのが有名で、王家も手を焼いていたのが、うちの屋敷に籠るようになったおかげで火種がなくなって喜んでいるそうだ。


 そして、ちょっと離れたところで一応勇者であるクレイが申し訳なさそうに立っている。


 スカーレットの頼みでクレイには『条件ありきで一瞬だけ解放』を許している。


 まあ、相手は『老婆』のみなのだがね。


 ここ一か月で魔王を倒すべく、色々挑戦してみた。


 そこで戦う術がない俺だが、レベルで手に入れたスキルを駆使して、戦えるようになった。


 今日の魔王にそれを試そうと思う。


 遥か遠くだが、俺の視線が届けば全てのモノの性欲値が確認出来るからな。



 …………魔王。お前…………性欲値0%だったのか。


 素の性欲値0%なんて人生初めて見たぞ。まさか魔王だとはね。


「では始めるとする」


「ベリアル様。頑張ってください」


「ベリアル様頑張れ~!」


 二人の応援があれば百人力だ。


 本来なら妻達も連れて来たかったけど、こんな戦いの場であんなおぞましいのを視界に入れさせたくはないからね。


 屋敷で待っているように話してある。


 さあ、レベル8で手に入れた新スキルの発動だ。


 と言いたいところだが、レベル8で手に入れたのは新スキルというか、新しい条件だった。


 レベル8で手に入ったのは、異種族及び魔物や動物等の全ての生き物がスキルの対象となる。というもの。


 今まで俺のスキルはあくまで人間・・だけにしか効果がなかった。


 それこそ、動物だったり、王国にはあまりいないが異種族達には全く効かなかった。


 それがレベル8になることで、全ての生き物にスキルが効くようになり、魔王の性欲値が0%なんて秘密まで知る事が出来たのだ。


 もちろん、性欲値が見えるということは――――


「性欲値『指定』」


 目の前に広がる魔王軍の全てを『範囲』で変更させる。


 おお~ちゃんと効いてるみたいだな。


 やはり生き物である以上、性欲は必ずあるんだな。


 そんな魔物達の付与した『指定』とは、『魔王に対する性欲値300%』『『賢者タイム』を迎えると『精力回復』を施す』『魔王以外の相手には性欲値0%』の3つだ。


 そして、仕上げとして、一番大物の魔王には『魔物に襲われると『性欲超上昇』と『精力回復』を施す』を『指定』する。


 さらに取っておきの『性欲支配』を与える。内容は『全ての感度を最大にする』だ。
















 一言で言おう。


 これぞカオスという事か。


 本来なら魔王に従うはずの魔王軍が全て魔王に襲い掛かり始める。


 それに対する魔王なのだが、人生初めての性欲値500%に身震いして、さらには感度まで最大にしているから、もはや触れるだけで決壊するレベルである。


 さすがにこの組み合わせを人に試そうとは思わず、オリビア達と戦う前にも色んな動物を使って試していたのだ。


 案の定、魔王にも効いて、狙いは全てが完璧である。


 数十分後、魔王の悲しくも喜びの絶叫が鳴り響いて、長年人間を苦しめた魔王がこの世界から消滅していった。




 ◇




「「「「お帰りなさい!」」」」


 屋敷に入るや否や妻達が抱き付いてくる。


 ミレイアさんはさすがに抱き付いてはこないけど、嬉しそうに笑ってくれる。


「みんな。すまないが急いでいいかな?」


「「「「うん! いいよ!」」」」


 俺は人生初めて抑えられない性欲・・が溢れて来て、妻3人と愛人3人と共に部屋に向かった。




 勝利の喜びなのかは分からないけれど、日が沈み上がって来ても尚、彼女達も濃厚な時間を過ごした。




 ◇




「久しいな。救世主」


「支配人さん。揶揄わないでくださいよ。俺なんかが救世主なんて」


「魔王を倒した勇者様・・・がそれを言うのか?」


「まあ、あれはたまたまですから」


「くっくっ……まあよい。だが我々にとっても救世主には変わりないからな。これからも『性域』を頼むぞ。ベリアル」


「もちろんです。第二の館・・・・もお願いしますね」


「もちろんだ。寧ろ、こっちよりも大人気のようだぞ?」


「まあ、色々溜まった女性・・もいるでしょうからね」




 『水晶の館』。


 王都一番の娼婦館として有名であり、ここ数か月で圧倒的な人気となり完全予約制と生まれ変わっても尚大人気が続いている。


 そして、その裏手に建てられた新しい第二の水晶の館『真珠の館』。


 入口は真逆なので、建物は同じ敷地内に建てられているが、この二つの館が交わる事はない。


 なぜなら――――――新しい『真珠の館』は――――――。




 ◇




 ◆真珠の館◆


「真珠の館へ、ようこそ」


「うふふ。今日もよろしくね! クレイ・・・くん!」


「もちろんです。さあ、こちらにおいで」


 クレイは客である女性をベッドに誘う。


 甘い言葉を女性に投げかけると、二人は深い夜の時間を過ごした。




 勇者クレイとその仲間のスタン達6人を中心に建設された『真珠の館』は王都初の『男娼館』である。


 ベリアルが設置出来る二つ目の『性域』により、この中でのみ性欲を全解放出来るようになったクレイ達は、男娼館を快く受け入れたとかなんとか。




 ◇




 教会にベルの音がなる。


 俺は度目のウェディングロードを歩く。


 目の前には美しいドレスに身と纏っているオリビアとスカーレットが見える。


 妻達やメイド達、孤児員の子供達に見守られる中、俺は4人目と5人目の妻を迎え入れた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 王都にとある伝説が伝わっている。


 彼は時折現れては人々に救済の光を差し伸べるという。


 彼に救われた命は数知れず。


 王国英雄の娘。奴隷の解放者。王国の聖女。王国最強騎士。王国の姫。


 そんな錚々そうそうたる五人の娘が彼に恋をし、求婚したと伝わっている。


 彼は結婚後、五人の妻達と共に世界の平和の為に奮闘し、かの大魔王『マモン』ですらその力で倒したと云う。


 だが熾烈な戦いの為、彼は帰らぬ人となり、五人の妻達は彼の功績を永遠に謳い、平和の為にその生涯を閉じた。




「――――とさ!」


「「「「「わ~い! 面白かったよ! オリママ!」」」」」


 オリママの前に沢山の子供達がくっついて童話・・の物語に満足したように一斉に声をあげる。


「みんな~! ご飯ですよ~!」


「「「「「わ~い! ミーママ!」」」」」


 今度は一斉に食卓に流れていく子供達。


 十人モノ子供達が食卓に仲良く座る中、ユーママ、クーママ、カーママが料理を運んできた。


 食卓が美味しそうな料理に彩られると、一人の男が食卓に向かってくる。


「パパ~!」


 子供の一人が声をあげると、男は優しく子供の頭を撫でてあげて、席に着いた。


「では、頂きます」


「「「「「頂きます~!」」」」」


 男に続いて子供と妻達の声がリビングに響き渡った。






――――【完結】――――


 【俺を追放していいんですか?ヤバいスキルで置き土産しておきますね?さようなら】を最後まで読んで頂きありがとうございます!


 ここまで楽しんで頂けたでしょうか?


 あまり多くを語るつもりはありませんが、作者としてざまぁは絶望だけでなく、生まれ変わるチャンスを与えるのもとても好きなので、この作品で色んな悲しみを背負った登場人物達は、主人公の力できっと幸せになったと思います。そう思いたい。うん。きっとね。


 と、まあ、作者の全力の性癖が色々詰まった今作品は実は挑戦の意味を込めた作品でもあります。


 連載中、沢山のコメントを頂き、執筆も楽しく過ごせました。これからも面白い作品を執筆する原動力になります!


 普段からざまぁやエロはあまり書かないのですが、これからも色んなジャンルに挑戦していきたいと思います!(現在投稿中の『ダンジョンに堕ちた転生者~社畜は二度とごめんなので、拾ったダンジョンコアでスローライフを送りたい~』がタイトルからは想像出来ないくらい、こちらの作品と似たエロ要素やざまぁ弱め要素がありますので、もし宜しければそちらもお願いします)




 もし面白かったよと思った方は、★3つとおすすめレビューコメントを残してくださると作者の次の作品の励みになります!


 ぜひ作者フォローもして、これからの新作も楽しみにしてください!



 では、最後になりますが、最終話まで読んでくださり、本当にありがとうございました!




 あ! 明日、SSが二話が同時に上がります! エロとかではありませんが、最後のレベル10と、とある二組が救われる・・・・そういう話です。お楽しみに!

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