第4話 懐かしい味

 学校も冬休みに突入し、ついにクリスマスイブがやってきた。今日は咲季の家でまったりする予定だ。夕方の5時頃に向かうと告げてある。

 お菓子とジュースを袋いっぱいに購入し、咲季の家に向かう。うっかり酒も買いそうになったのは仕方が無いと思う。一応心は大人なんだしな。

 ずしりとした重みを肩に受けながら、暗くなり始めた住宅街を進む。


 それにしても今の俺は咲季の家に行ったことがあるのだろうか。咲季は俺の家に来たことがあるどころか、家族公認みたいだ。

 あの様子なら咲季の家族とも面識はありそうだが、はっきりとは分らないな。一応家族への挨拶も考えておくか。


 そう思うと途端に緊張してきた。結婚するときにも挨拶はしたし大丈夫なはず。咲季の両親もとてもいい人達だった。だから大丈夫だ……多分。



 自分の家から1駅分位移動したところに咲季の家がある。住宅街に佇む2階建ての建物。ここが目的地だ。


 インターホンを鳴らし、そわそわしながら待っていると、程なくして玄関から咲季が出てきた。


「誠~いらっしゃーい」


 モコモコのパーカーに短パンというとてもラフな格好で出迎えてくれた咲季に一瞬見惚れるが、これから咲季の両親に会うと思うと緊張してきた。


「お、お邪魔します」

「なに緊張してるの~? お父さんとお母さんなら今日居ないから安心してよ~」

「え? まじ!? 挨拶考えてたのに……まあいっか」


 緊張の理由を察したのか、咲季が両親はいないと教えてくれた。……良かった、今日は挨拶しなくて良いのか。

 ……あれ? って事は今日2人きり?


 咲季に促され、リビングまでやってきた。ソファとテーブル、大きな液晶テレビが直線上に並んでおり、床には緑を基調としたカーペットが敷かれていた。

 ソファからテレビを見て右側にはキッチンとダイニングがある。そこには様々な料理が並んでいた。


「あれ咲季が作ったの?」

「そうだよ~」

「さすがっすね」

「いや~それほどでも~」


 自慢げに笑いながら料理を取りに行く咲季を眺め、俺も買ってきた飲み物を取り出す。ファンタにオレンジジュース、カルピス。正直買いすぎたとは思ったが、余ったらその時だ。持ち帰るかここにおいて貰うとしよう。


 テーブルにチキンやサラダ等が並べられ、2人並んでソファに腰掛ける。


「「いただきます」」


 料理はどれも美味しく、そして懐かしさを感じる味。つい半月前までは毎日一緒に食べていた咲季の作るご飯。

 過去に来てからも咲季の弁当を食べていたが、お弁当には入れることが出来ないメニューもあって、本格的な咲季の手料理を食べたのは今日が初めてだ。


「やっぱり咲季の作るご飯は美味しいな」

「ありがとう~。まぁ毎日お弁当も作っているしね~」



 料理の感想もそこそこに、咲季はテレビを点けてアマ○ラを接続していく。予定通り今日はアニメを見るみたいだ。


「私が見たかったからだけど、誠はと○ドラでいいの?」

「俺も好きだからいいよ。何回見ても面白いし」

「そっか~、じゃあ点けるね~」


 こうして俺達2人のささやかなクリスマスパーティーが始まった。


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