3 漢詩


俳句、短歌、と来れば次は……漢詩です。



 不為小禽耶

 遊百花慫慂

 不為小川耶

 落千畝茫洋

 人情雖深甚

 懐不如一花

 翠庭春日繁

 菫英晨夕佳



<読み下し>

小禽とさずや 百花に遊びて慫慂しょうよう

小川しょうせんと為さずや 千畝に落ちて茫洋

人の情は深甚たりといえども おもうに一花に如かず

翠庭は春日しゅんじつに繁く、菫英きんえい晨夕しんせきに佳なり


<現代語訳>

実にわたしは小っぽけな鳥ではないか、百の花の間に遊んで慫慂としている。

実にわたしは小っぽけな川ではないか、千のうねに流れ落ちて茫洋としている。

人の情は深いと云ったところで、おもえば一つの花にもかなわない。

みどりの庭はうららかな春にさかえ、すみれはなあしたゆうべにうつくしい。





今回は蛇足というか……言い訳です。


漢詩は韻を踏むのが基本ルールですが、ここではそのルールを守っていません。

大雑把にいうと、だいたい偶数連の末尾(この詩でいうと、慂・洋・花・佳)は韻を踏むべきなのです。前(慂・洋)と後(花・佳)とで一応2つずつは揃えたものの、完全にはならず……。


そこまできれいに揃えようと捏ねくると、素直に情景を描けなくなってしまうので、もういいや、と。

それに、韻のルールが確立するのは唐代で、その前はさほど厳密じゃなかったし、私の好きなのは唐代より前の詩人だし……言い訳が見苦しくなってきました。


それでも、たとえ不完全なものでも、つくるのはたのしい。漢詩には和歌とはまたちがったリズムがあって、そのリズムの癖に乗って散文を書いたら、文章の背筋がすんと伸びる感じがするのです。


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