第6話 勇者死す

 カワゴエの村を目の前にして、カスカベの街へと引き返す事にした俺の視界は、真っ赤だった。

 転移の翼さえあれば、難なく戻れたんにな。

 まあ、ここからカスカベの街に戻るまでの間に、転移の翼が買えるくらいは、稼げてるだろう。


 て思ってたら、またチビデブの魔物に出くわした。

 やばい、これ、絶対死ぬって。

 どうする、逃げるか。

 って思ってたら、俺はやくそう持ってる事を思い出した。

 俺は急いでやくそうを食べる。

 おお凄い。体力が回復したぞ。

 真っ赤だった目の前も、普通に見えるようになった。


「ぴか。」

「ぐおお!」


 チビデブの魔法を、まともに食らってしまった。

 やばい、戦う前よりダメージは深い。

 やくそうはあと二枚あるけれど、回復量は魔法のダメージより僅かに少ない。

 多分、今やくそうを使っても、次魔法を食らったら、俺は死ぬ。

 ならば、攻撃しかない!

「うおお!」

 俺は銅の剣を思いっきり振り回す。

 いつもより軽い手ごたえを感じたと思ったら、チビデブの魔物を倒していた。13円落ちていた。


 なんか知らんけど、一撃で倒せた。

 俺は気分良くして、帰り道を急ぐ。

 したら、またチビデブの魔物に遭遇。

 くそ、プリンの魔物の生息域は、まだ先なのか。

 ってやばい!

 やくそう使うの忘れてた!

 目の前真っ赤なままじゃん!


 くそ、こうなったら、さっきみたいな攻撃に賭けるしかない!

 俺はさっきみたいに、銅の剣を思いっきり振り回す。

 しかし、手ごたえはいつも通りだった。

 チビデブの魔物を、一撃で倒せなかった。

 俺は死を覚悟するのだが、チビデブはとたとたと近づいて、俺をこずく。


 ぽこっ。


 魔法攻撃より、威力なし。

 俺は少しダメージを受けたけど、死なずに生きてる。

 俺はホッとして、銅の剣で攻撃する。

 これでこいつを倒せば、問題ない。

 こいつを倒したら、今度こそやくそうを使うんだ。


 と思ってたら、こいつかわしやがった!

 チビデブは俺に人差し指を向ける。そして、

「ぴか。」

 チビデブの魔法をまともに食らった俺の意識は、完全に閉ざされた。



 気がつくと俺は、オオミヤ城の玉座の間にいた。

「おお勇者ユウタよ、死んでしまうとは情けない!」

 俺が現状認識出来ないでいる所、いきなり王様が大声で叫びやがる。

「傷ついた時は、宿屋に泊まって回復するがいい!

 ではゆけ、勇者ユウタよ!」


 言う事言ったら、王様はムスッとした表情で、こっちを見ている。

 と言っても、ニヤけた表情を、わずかに抑えきれないでいる。

 玉座の間をうろつくふたりの兵士も、どこかニヤついている。


 俺は聞きたい事も色々あったが、居心地が悪いので、そそくさと玉座の間を後にした。

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