第7話 妖魔と銃

 事務所の扉は豪快に破壊され建物内に大きな音が響きわたった。


 すると、奥からワラワラと人が集まってきた。


 とにかく人相の悪い人間ばかりだ。


 『なんだテメーら!?』

 『カチコミか!?』


 大勢の男たちが麻生まおうたちに凄みを利かせて騒いでいる。


 すると騒ぎを聞きつけたのか、1人の男が通路の奥にある部屋からやってきた。


 整ったオールバックの髪型に高そうな白いスーツと金のネックレス。


 その男は取り巻きの有象無象と違い、明らかに幹部としての風格があった。


 『ガキと小娘?お前ら何をしに来た?ここはお前らの来るところじゃねぇぞ』


 その男が静かに口を開くと周りの男たちは途端に口を閉じて静かになった。


 「カチコミだ」


 小・羅刹シャオ・ラセツは単刀直入に目的を伝えた。


 だが、カチコミに来た2人が女の子とチー牛男子であり男は真に受けることはなかった。


 『おい、コイツらをつまみ出せ!どうせガキの遊びだ』


 男は子分に麻生まおうたちをつまみ出すように命令した。


 すると1人の子分の男が小・羅刹シャオ・ラセツの目の前に来て手を掴んだ。


 『おい嬢ちゃん!ケガせんうちにはよう出てけや』


 子分の男がグイと小・羅刹シャオ・ラセツの手を引っ張った。


 しかし、小・羅刹シャオ・ラセツはピクリとも動かない。


 子分の男には根の張った大木を引っ張っている感覚がしたことだろう。


 『ん?なんだこの嬢ちゃん』


 子分の男が違和感を持って首を傾げた次の瞬間。


 子分の男は幹部の男の横をかすめて吹っ飛んでいった。


 そしてドンという音を立てて壁に叩きつけられた。


 『な…何だコイツ?』

 『今、片手で持ち上げてぶん投げたよな』

 

 子分の男たちが見たままの現象を口々にして、ざわついている。


 何が起きたのか理解できておらずパニックになっていた。


 「カチコミに来たと言っただろう…はよう逃げ惑え、にえども」


 小・羅刹シャオ・ラセツのその一言でざわついていた子分たちもピタッと静まりかえった。


 そして暫くの沈黙が流れる――――――。





 『チャカ出せや!!ぶっ殺したれーーー!!』


 沈黙を破ったのは幹部の男の号令。


 子分の男たちも統率を取り戻したのか全員が一丸となり胸から銃を取り出し、麻生まおうたちに銃口を向けた。


 『短い人生やったなぁ…覚悟せぇや』


 男たちもすぐには撃たなかった。


 幹部の男の合図を待っているのか、情けのつもりなのかは分からない。


 銃口は2人の頭に突きつけられている。


 「おいコウタ。これは何だ?」

 「じゅ、銃ですよ…人なんか簡単に殺せるぶ、ぶ、武器です」


 麻生まおうは足が生まれたての子鹿のように震え失禁までしている。


 「ふ〜ん、父上が現役の時代には無かったものだな」

 「な、何を呑気に観察してるんですか…やっぱり謝って逃げましょう」

 「早くやってみろ」

 「な!何を言ってるんですかーーー!!」


 幹部の男は小・羅刹シャオ・ラセツのあまりのくそ度胸に違和感があった。


 しかし、そんなことはお構いなしに火蓋は切られた。


 『やれ!』


 パァンッ!!!パァンッ!!


 建物の中に銃声が2発鳴り響いた。

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