*6* 莇
雲行きがあやしい。
「
「えぇ、
「見事に人っ子ひとり歩いていないな。すばらしい危機管理能力だことだ」
「──『
暗雲の立ちこめる町並みを、鈴蘭型のガス灯に止まり、一望したときだった。
「
年のころは葵葉とおなじ、15、6歳ほどだろうか。生真面目そうな少年だ。
す……と細められる
「お初にお目にかかります、鼓御前さま、
「ふぅん。それも、本名じゃないんだろ?」
「神職ゆえ、
「まぁ、賢明な判断だな」
神に真名を明かすことは、命をにぎられることと同義。
霊力をあつかう者ならば、それは常識として骨の髄まで染み込んでいることだろう。
「失礼ですが、『典薬寮』というのは?」
「〝慰〟に対抗するため、霊力者によって組織された特殊機関──これに属し、わたくしのように現場で任務をおこなう者は、
「さしずめ、武装した神職者ってところか。あやかしとどっちが物騒なんだか」
葵葉がそう
「まだ若い……付喪神はやどっていない刀のようですね」
「は。
「とはいえ、寄越されたからには、最低限穢れを祓う霊力は持ってるってことだな」
ともすれば不遜にも聞こえかねない葵葉の物言いながら、莇は気を悪くすることなく、流暢に受け答える。
「お目覚めになられて間もなく、お付きの覡もいらっしゃらない御刀さまに申し上げることではないと、重々承知しておりますが……」
表情を曇らせたのも一瞬のことで、意を決した面持ちの莇が、草履でガス灯を蹴り、鼓御前たちの前へ出る。
「ご案内いたします。〝慰〟が確認されたのは、これより3キロメートル先、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます