杉崎家の末っ子

汀なつめ

イチ ワ

「ガハハッ、ハハ!ヒャハハハ!ッヒィ、」

「当たった〜。お豆腐の入った味噌汁は好き?」

「ふふん、おネエちゃん、おネエちゃん!焼いた!えらい?」

「あらヤダッ、ンもォ。パンは生、でしょォ!」


各々が口を忙しなく動かすこの家族は、

みんな、


異常者だ。



おとうさんは、さけくさい。いっっ、つも。

おかあさんは、しらないおじさんと電話してる。

おにいちゃん、…… おネエちゃんは、お金とこどもとパンがだいすきだ。

わたしは、この家族の、末っ子のまねをしている。



雷雲になりそうな入道雲がびっしりと青空を埋め尽くす今日。

嫌な暑さがべっとり肌につく。

わたし、杉崎家の末っ子。の真似をすることになったみなしご。名前はない。

おじさん、いいえ、おとうさんは、明け方、道端に転がる私を見るなり酒を頭から被せ、げらげらと笑いながら酔っ払ったまま腕を引いた。

今宵はいい酒が飲めそうだ、と、叫んで。

そうしていつの間にか杉崎家へと連れてこられた。着いてくる前、おとうさんにひと言だけ言われた、飯はある、末っ子になれ、という言葉にかんたんに頷いた結果がこれである。

おかあさん、であろうひとは、ベロベロに酔っ払って帰宅したおとうさんの様子など興味もないようで、こちらをちらりと見た後イヤホンを付け直しまた誰かと電話をしていた。

おにい、… おネエちゃんは、パンの耳を揚げていた。美味しそうなきらきらとした砂糖をつけて皿にうつしてゆく。


おはようございます。

とりあえずとそう一言発してみたが、誰ひとりとして反応をしない。

こんな所へ連れてきたおとうさんに至っては、帰ってくるなり誰かと電話をするおかあさんのズボンを引き下ろして、何かを太腿に挟んで塗りつけ、そうして何度も押し付けていた。

おかあさんは、おとうさんに何をされても微動だにしない。ただただ楽しそうに電話をしている。

むわり、とおかあさんとおとうさんからはイカを焼いたような匂いがただよう。

おネエちゃんは、単純にわたしの声が聞こえていなかったのか三度見ほどした後、ねっとりと全身を舐めるように見つめそのままわたしに近づいた。

そうして、頭をがしがしと撫でる。

「何処行ってたのよォ?」と。

恐ろしいほど自然に笑いながら、偏屈な愛を込めたような光のない瞳をわたしへと向けた。


おえっ。


気持ちわるい、この家族。



杉崎家の扉には、鍵がないようであった。

誰でも受け入れる、というか、連れ込む、というか。…… 家に誰がいても全く気にとめない、へんな家族であった。

毎日おかあさんは違う男の人を。

毎日おとうさんはそんなおかあさんの所有物にべとべとした白い何かを擦り付ける。

はあ、はあ、と息を切らしながら、おとうさんの中からへんなのがあふれ出るところをよく見る。

おとうさんいわく、マーキング、しているらしい。

くさい。

そうして毎日おネエちゃんは、わたしを風呂場につれこんでいた。

身体を毎日あらいっこ。

おネエちゃんは、ゆいいつ、この杉崎家で言葉のキャッチボールが出来る時があるひとだ。

とくに、わたしと風呂場ではだかの付き合いをしている時はとってもうれしそうだった。

おネエちゃんは、私の身体をやさしく洗ってくれる。

時々、おとうさんみたいな匂いがするようなきがするけど。


きのせいだよね、たぶん。



杉崎家の末っ子 / だい イチ 話


続きは書くかどうか決めておりません。新たな路線のための試作のようなものでございます。


ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

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杉崎家の末っ子 汀なつめ @suzuri_rrr

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