第33話 水族館作戦その1が失敗に終わるまで(ネタバレ)
別に一々尾行するという面倒なことをせず、もう一度未来を視ればよかったのだが、流石にあの場で
ただでさえ変な風に思われてるのに、これ以上怪しい行動は避けたい。
それに、別にもう一度未来を視なくてもどこに2人が座ったかは覚えているし、別に大丈夫なはずだ。
……前言撤回やっぱり大丈夫か不安になってきたな。
「次はもう地下だし、一旦戻ってイルカショー観に行こうか」
「私先にトイレ行っていい?」
「え? あーいいよ。うん。いってらっしゃい」
よし、聞いた感じだと茨木さんはトイレに行ったみたいだ。
本当に俺の予想通り5分前くらいになりそうだから一応ここで
「もしもし」
「もしもし。梨花だよー」
「知ってる。そろそろ座り始めてくれないか?」
「え? でも、結構まだスカスカだよ」
「は? まじで?」
「うん。まじで」
「わかった。じゃあもう少しそこにいてくれ。すぐ俺も向かうから」
「りょうかーい」
いやいや、まじか。
まだ全然空いてるなら、もうちょい粘らないといけないじゃないか。
もしかしたら、他の客も2人と同じ時に来ているのかもしれない。
確かに、未来でもそうだった気がしなくも無い。
やばいな。
もう茨木さんがトイレから帰ってきてしまった。
どうすればいい。考えろ……何か。
そうだ。
俺は芦屋から貰った帽子をしっかりと深く被り、少し俯いて歩を進める。
ドンッ
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
俺はそれを無視し、さっさと走る。
「
「俺は大丈夫だけど。なんかあの人どっかで……てやばい。そろそろ行かなきゃ」
少しの時間稼ぎは出来たはずだ。
本当にごめんなさい渡辺さん。
これもあなたのためなんです。
おれはもう1度入口の方から梨花たちがいるイルカショー前にあの2人より早く着く。
「はあ はぁ」
「そんなに息切れしてどうしたの?」
「もう2人が来る。俺たちも中に入ろう」
「結構埋まってるしね」
中には既にかなりの人がいて、席もほとんど前しか残されていなかった。
「梨花と文殊はあそこの席に座ってくれないか」
「うん」
「りょうかーい」
とりあえず、本来あの2人がすわるはずだった場所は前もって潰しておく。
あとはどこら辺だ。
「ねえ、安倍くん。あそことあそこギリギリ2人座れそうじゃないかい?」
「よし俺たちで別れて座ろう」
「ああ」
あの2人以外の人からしたら完全に迷惑なので一応2人以外の人が来たら席を譲ろうとは思っているのだが、結構前に行く人が多い。
よし、あの2人が来た。
渡辺さんは席を見渡して空いてる席がないか探っているようだが、あいにくもう前しか埋まっていない。
仕方がなさそうに2人は前の席に座った。
俺の目論見では間違いなくあそこの席は濡れるはずだ。
そして、俺は悲しく1人でイルカショーを見た。
あれ、思ってるより濡れていないぞ。
いつもよりイルカさんの調子が悪いのかあまり激しい水飛びが見れなかった。
ショーが終わり、2人の後に続いて俺も入口に戻る。
「あの2人なんか普通に楽しそうだったけど」
「うん。聞いた感じだとちょっと濡れたーって言ってはしゃいでるくらいであんまり作戦成功とは言えないかも」
「まじか。それはすまん。色々やって貰ったのに」
「全然こっちは迷惑じゃないからいいんだけど。次はカワウソの作戦をするの?」
「まあ、そうだな」
完全に俺の作戦が失敗してしまい、かなりやるせなくなってしまった。
普通にこの先成功するか不安だ。
ましてや、次は行くかどうかすら決まっていないのだ。
「まだ、あーこも携帯見てないみたいだし」
「一応次は2人の近くでカワウソの餌やりを呼びかけてみる」
「え? どうやって?」
「2人の近くでカワウソの話をするとかいう古典的な手法だけど何か」
「え、それでカワウソ行くかな? 渡辺さん結構計画練ってるんじゃないの?」
「知らん。物は試しだ!」
「雑になってる!?」
どうすればいいかもう分からなくなって来たが、せっかくここまで来たんだし普通に楽しみたくなってきた。
でも、告白は成功させなければいけない。
タイムリミットは今日の夜の告白までだ。
それまでにチャンスならいくらでも降り掛かってくるだろう。
だから、一旦楽観的(現実逃避)になっていいんじゃないだろうか。いや、多分良くないけど。
「まあ、とりあえず今は楽しむわ。それでその時考える」
「結局そうなるのかい……」
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