第6話 創造者 ★

 かなりぶっ飛んだ提案をされて頭が混乱している。


 人間辞めるってなんだ?


 悪魔にでもなるってことか? 

 そもそもダンマスって悪魔なのか?


 でもあんな質問をされるって事は、まだ人間であると言う事であろう。


 なんだかナビゲーターのパツコさんが、途端に恐ろしい存在だったことに感じてしまう。


 ダンジョンコアだって生命エネルギーを回収してポイントに変え、自分を進化させようとしてると言うことだよね?なんか悪魔的な行動原理っぽい?そう考えていると


『悪魔という存在がどういった者かはわかりませんが、ワタクシダンジョンコアは「成長せよ」、という本能に従って行動しているに過ぎません。惑星に根付き、恩恵を与える代わりに生命エネルギーを微量に回収しているに過ぎません』

 

 パツコさんがダンジョンコアだったのか?と一瞬考えてしまったがもっと大事な事を聞かなければならない。


「そもそもダンジョンコアの最終目的は何なの?成長した先に何があるのさ?地球を乗っ取る気じゃないのかい?」


『いえ、ダンジョンコアはそれ自体がサイズを変えた新たな惑星であり、コアと契約したダンジョンマスターはその惑星の創造者となり、この何もない惑星に新たな命を創造して頂きます。ダンジョンに作られた大気や海や大地、草木や川、施設などの建造物はそのままコアの表面に作られて行きます』


『このまま地球で生命が増え続ければ、いずれこちらの地球は破綻してしまいます。ですのでダンジョン内で亡くなった生物の魂は回収されて新たな惑星の生命として生まれ変わります。新たな惑星の営みはモンスターのみでは行えませんので』


『ダンジョンが広く深く作られればその分、ダンジョンコアの大きさも変化していきます。ダンジョンの中にいる限り、ダンジョンマスターは不老不死であり、殺害されない限り死ぬ事はありません。ダンジョンマスターはダンジョン内にいる限りこの惑星「地球」のことわりの影響は受けません。』


「ダンジョン内に地球の理が存在しないということは、俺の病巣が存在しないと言うこと?」


『存在しないわけではありません。不老不死となった時点で進行しなくなるということになります。ここ地球とは生命の作り自体が違ってきます。ですのでその病巣すらもダンジョンマスターその個人の一部と認識されます。』


『ダンジョンマスターの育成の仕方によっては地球に似た惑星にすることも可能ではありますが、あくまでも似ているだけで同じなわけでは無いということだけは覚えて置いてください』


 なんか不老不死とか、とんでも無く壮大な話しになってきている。


 ダンジョンコアは惑星でこれから俺が育てて行くという事らしい。

 

 地球人の魂をこのダンジョンコアの惑星で新たな生命として誕生させると言う事。


 育て方次第では地球っぽい惑星になると言うこと。ちょっと箱庭っぽい。


 ダンジョンの中に居れば俺は生き永らえるという事。 


 俺がその惑星の神になるという事。


 三ヶ月の制約が無くなれば「エリクシール」のポイントが貯まるまで余裕で待てる。


 そもそも「エリクシール」は必要なのか?とは思う処だけれど、地球に家族が居る以上は地球での生活があるワケで、地球に居る間は癌は進行するわけで、病巣は無くなるに越したことはないと思われる。


 なんてことはない!それが人間辞めますか?と言うことなら俺は迷わず言ってやる。


「人間なんか辞めてやる!!」と。


 鼻息荒く意気込んでみたが、ただダンジョンに籠もると言ってもそれは簡単な事では無い。


 当然世間の目と言うものがあるわけで、病院からいきなり姿を消せば可笑しいとは誰でも思う処ではある。


 まだダンジョンの存在を世間に知られるわけにはいかない。


 俺を襲ってダンジョンコアを奪おうと考える人間が出てくる可能性があるからだ。


 ただ俺の場合は余命宣告されていると言うこともあり、終末医療で「余生は自分の家で過ごしたい」とでも言えば家には帰れそうではある。  


 家族には説明する必要はあるだろうが、きっと理解してくれるだろうと思う。


 密かにダンジョンで生活し食事の時だけ自宅に戻ってと行ったり来たりが出来ればそれだけで寿命が伸びたのと変わらない。


 きっと密かには不可能だと思われるのでやはり家族には相談しようとは思う。

 そうなるとDPの使い方もだいぶ変わってくる。積極的にダンジョンを作って行くほうが良いだろう。


 後は少しでも早く退院し自宅で介護を受けながら余生を過ごすフリをするための準備が必要になってきた。

 

 ということで、まずはダンジョン制作から始めよう。


 一番まとまったエリアといえば新宿周辺の地下となる。


 パツコさんに聞きながら、タブレットの「ダンジョン制作」をタップするイメージ。


 その後まず地下にダンジョンとなるスペースを確保していく。


 平面的にクレヨンマークで塗り潰し、側面から地下の深さの位置と立体的な高さを出していく。 


 これが俗に言う第一層になるところである。


 大した広さを確保出来ずにすぐポイント切れでクレヨンマークが消えてしまった。


 当然「いいえ」を選んで、やり直さずに今日の所は辞めておく。


 やった感じ立体的に広場を作らなければならないのでかなりポイントを消費することや、フィールドなどがポイントを使い変更可能なこと、草や木、川や山などもポイントで設置出来るのがわかった。


 草の種類も豊富で、気になったのが稲や麦などの穀物類が選べる事である。


 この稲や麦が地球の物と変わらないのであればヤヴァい事である。


 日本経済が世界の中心になることだろう。   地球とは理が違うと言っても、どの程度違うのかわからないのである程度実験が必要にはなりそうかな?


 この感じだとアップ系のアイテムを使わないとかなり無駄になってしまうだろう事がわかったのは収穫だった。


 まだきっと焦る時間ではないはずで、先に生命エネルギーの確保を優先したほうが良さそうだとわかった。

 

 




 

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