第4話 スキルブックと魔法スクロール

 朝、朝食のためナースさんに起こされる。


 朦朧とした意識の中、夜中の出来事を思い出し、黒い珠のことが気になり布団の中を確認してみる。


 有った!夜中と変わらずヒンヤリとした感触が伝わってくる。


 ナースさんはスグに居なくなるので食事をしながら黒い珠を、じーっと見つめると脳内に『おはようございます悟さま』と声が響き、透明なタブレットが目の前に現れる。


 ポイントは当然0Pのままだ。


 それより「ポイント交換」で色々気になっていた事を調べてみようと思う。


 スキルブックや魔法スクロールなどの事である。


「すげー一杯あるんだけど…ん?ポイントって現金に変えられるのか?!レートは…1P=100円。逆に現金をポイントにも変えられということか」


 長い間、自分の治療に掛かる費用のせいで俺の実家はかなり生活を圧迫されている。

 それでも息子の為に結局は治らなかった薬代や治療費を、惜しげもなく出し続けてくれた両親や祖父母たちには本当に感謝してもし足りない。


 死ぬまでに稼げたポイントは現金に替える一択しかないと思えてくる。


 きっとこのコアが俺の元へ来たのもそうやって最後の親孝行をさせてくれようと、神様だかなんだかが枕元に置いてくれたのだと思おう。


 とりあえずスキルブックを調べてみよう。


 剣術や槍術、ナイフ術や棒術などの武器特化のパッシブスキルブックから、武器の技名が書かれたアクティブスキルブック、魔法名が書かれた魔法スクロールなど凄い量のスキルブックの品目がある。 


 その中に回復系の魔法スクロールが在ることに気付いた。


 怪我を治す御馴染みのヒール系の治癒魔法から、毒や麻痺などを治す治療系の魔法まである。


 心臓の鼓動が速くなってくるのがわかる。


 タブレットをスクロールする指が凄まじく震えが止めることが出来ない。

 回復魔法の詳細を隅々まで確認していく。

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 ・

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 だが自分が求めている体にできた異物を除去できる魔法は存在しなかった。 

 失った部位を復元出来るほど強力な回復魔法はあるのに…である。


 もしかしたら無理やり手術をして死ぬ直前に高位ヒールなどを掛ければ治るのだろうか?当然医師に魔法を覚えて貰わなければならないわけだが、現実は不可能と言わざる負えない。


 流石にダンジョンなど世間に知られるにはまだ早いし、何の準備も出来ていない。


 知られてから説明などしている間に寿命を迎えそうだ。


 淡い希望は泡と消え、かなり気持ちも下げられたが、ここら辺のスクロールやスキルブックなどはダンジョンでどうやって使用していくのか気になったので聞いてみる。


『お答えいたします。ダンジョンにある宝箱の中やモンスターに持たせて倒されたときにドロップされたスキルブックや魔法スクロールなどは、手に持って使うイメージをすることにより脳に書き込まれて行きます。ダンジョン内に居る状態で脳内でそのスキルや魔法名をイメージすればそのまま発動させることが出来るようになります』


『また一般の生物はダンジョン内に入ることにより目の前にマスターと同じよう透明なタブレットが出現するようになります。そのタブレットで所持者のステータスや覚えたスキルや魔法などを確認することが出来るようになります』

 

 定番の「ステータスオープン」とかではないのか…

 知れば知るほどかなり奥深く、やりこみ要素は高いのかもしれないな…ただ俺には縁のない話ではある。


 多分自分の寿命はそこまでやり込むほど残ってはいまい…。


 人類の進化のチャンスを潰して居るのではないか?と心のなかで後悔すらしている。


 ただこのダンジョン運営が進展しなかったとしても、人類は現状維持するだけだ……と思おう。


 自分が死んだ後、ひょっとしたら次の持ち主として妹あたりに託しても良いのかな?それともダンジョンコアが新たに選んだ他の後継者の元へ行ってしまうのかもしれないしな。 


 もしかしたら自分の前にも誰か知らない所でダンジョン運営をしていたのだろうか?など頭の中で色々考えてしまう。


 何にせよ夜中に掌握したエリアの得られるポイントが如何程かのほうが気になるところではある。


 確か新宿は世界で一番人が乗り降りしている駅としてギネスに乗ったとか何とかって聞いた事が有る。


 んー…と言う事は、多分新宿最強じゃね?って事は間違いなさそうだ。 


 このまま山手線一周とりあえず掌握していくのが良い気がする。


 きっとネズミとかも大量に居るのだろうし……だいぶ方向性は決まって来た所で母親と妹が御見舞に来たので今日はここまでになりそうだ。


 これからの治療方法など話しもしなければならなくなると考えると、気分がダダ下がりだが、家族にはそんな顔は見せられない。



 


 


 

 

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