第15話(最終話) 幸せな日々は続く。

 ピピピ、ピピピ……とスマホのアラームが耳にとどき、のそのそと手が伸びる。

 けど、伸びた手はスマホでなく同じベッドに眠る妻の体に触れた。


「ん、んん…………。ぉはよぉ~……♪」

「悪い、起こしたか?」

「ん~ん。大丈夫だよぉ」


 寝惚け顔で妻は俺を見る。

 そんな彼女に謝ると、にへら~と笑顔を向けてくれる。

 ……かわいい。やっぱり俺の妻は世界一、いや、宇宙一かわいい。


 つるぺたすとーんという幼い見た目だけど、腕に抱くと簡単に包み込めるのがいい。

 すねると子供みたいに頬を膨らませて、プイッとするけど……寂しくなると「ぎゅーってして……」と甘えるように言ってくるのもいい。


 数年前に行った結婚式で着た妻の白無垢姿は綺麗だった。

 式自体は控えめの、互いの家族と親しい友人たちだけを呼んだ小さなものだったけど……、妻は『本当に結婚できたんだ……』と嬉しそうに笑い泣きをしていた。

 そんな彼女を心から愛したいと改めて思った。


 そして……、俺たちの子がすやすや眠るベビーベッドを見る。

 妻は自分がこうなった理由などを受け入れていたから、子供が出来るか不安だった。

 けど、そんな不安を打ち消すように妻は妊娠した。

 初めは信じられないと戸惑っていた彼女だけど、すこしずつ膨らんでいくお腹に実感が湧いてきて……やさしくお腹を撫でる姿が愛おしかった……。


「産まれてきてくれてありがとう……」


 産声を上げる我が子を見ながら微笑む妻、それを見て涙を流す俺。

 どれもいい思い出だ……。


「……どうしたの?」


 思い出を噛みしめていると、妻が少しずつ目を覚ましているみたいで俺を見ていた。

 そんな彼女を抱きしめ、耳元で囁く。


「いや、幸せだなと思ってさ……」

「……うん、わたしも幸せだよ。これからもずっと、ずっと、幸せになろうね」


 俺の言葉に頬を染め、妻はそう言ってやさしく微笑んだ。


 - 了 -

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女になってしまった友人と俺との物語。 清水裕 @Yutaka_Shimizu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ