Prologue2...7/19~8/2

誰かの独白

 世界は、巻き戻る。

 激しい音とともに崩れ去った匣庭は、再び起点へと遡っていく。

 八月二日、赤い満月の夜から、七月十九日、新月の日の夕暮れへと。

 理由なんて、分からない。

 永遠に繰り返されるメビウスの輪の起点なんて、知るわけがない。

 ただ、私が願うのは。

 この鎖された匣庭が開かれる瞬間だけなのだ。


 変わらない毎日。

 変わらない始まりと終わり。

 変えようとすることすらできないのなら。

 一体どうすれば、この世界を終わらせられるというのだろう。


 ああ、また始まっていく。

 ああ、また終わっていく。

 私にできるのはただ。

 予定された悲劇の観測者になることだけ。


 でも、諦めたりはしない。

 この迷宮には、必ず出口があるのだと信じて。

 私はまた、惨劇に挑む。

 謎と陰謀に塗れた匣庭へ、落ちていく。


 何度だって、苦しんでやる。

 何度だって、悲しんでやる。

 けれど、その果てに私は必ず辿り着く。

 この物語の終着点へと。


 事件は起こる。

 赤い満月は昇る。

 その度に、私は嗤おう。


 ほら――また、始まった。

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