恋愛ドラマみたいな告白

 

恋愛ドラマみたいな告白

女「私、これから遠いところに行かなきゃならないの。だから、もうあなたとは会えないわ」


男「ふうん。1ヶ月ぐらい旅行にでも行くんだね。それなら、何か美味しいお土産よろしく」


女「ち・が・う。そういう意味じゃない。私、自殺するの」


男「自殺?なんで?」


女「病気で亡くなった彼氏に会うためよ」


男「自殺したら会えるっていう保証はどこにあるの?」


女「信じてればきっと会えるわ……きっと」


男「……ぬくもりが欲しいだけなら、僕とで良かったらセックスでもする?」


女「あなたデリカシーの欠片もないのね」


男「これが君を救う唯一の手段ならそれでもいいさ」


女「私が欲しいのは、彼のぬくもりなのよ。あなたのぬくもりじゃないわ」


男「じゃあ、君はその間、ずっと目を閉じていればいい」


女「無理よ。そんなの馬鹿げてるわ」


男「それなら、僕が彼の顔に整形する。これならどうだい?」


女「もう、やめて。私が好きなのは彼だけなの。その事実は、あなたが彼の顔に整形したって変わらないわ」


男「君は、ないものねだりしすぎだよ。人生で必ずしも欲しい物は手に入らない。20年以上生きてきたのなら、君も心の奥底ではわかっているはずさ」


女「でも、私にはあの人しかいない。あの人じゃなきゃダメなの」


男「じゃあ、最後の手段だね。電気ショックで彼氏の記憶ごと消しちゃおう」


女「だから、そういうことじゃないってば」


男「ん?どういう意味?」


女「こういう時は、あなたが私を抱きしめて、『僕が絶対、君を幸せにしてみせるよ』って言うの。恋愛ドラマだったら、常識でしょう?」


男「僕が絶対、君を幸せにしてみせるよ」


女「ほらほら、棒読みになってる。もっと感情込めて」


男「僕が絶対、君を幸せにしてみせるよ」


女「よしっ、OK。良かったわ。これで私たち恋人同士ね」


男「何このクソ茶番?君、彼氏が病気で亡くなったんじゃなかったの?」


女「そうよ。でも、1回ぐらいこういう恋愛ドラマみたいな告白されてみたかったのよね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛ドラマみたいな告白   @hanashiro_himeka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ