第2話「敬愛」
「ベン様がアリッサ様に抱かれている感情は敬愛だとおっしゃるのですね?」
「そうだ!
俺はアリッサに対して邪な感情を抱いたことなどない!
俺はただアリッサの側にいて見守りたいだけなんだ!」
「そうですか」
「だが俺は侯爵家の嫡男だ!
家を継いで、結婚し、跡継ぎを残さなければならない!」
「そうですか」
「しかし幸いにも俺には地味だが頭の切れる婚約者がいる!
家のことは地味な妻に任せて、俺はアリッサと一緒に隣国に行きアリッサを見守る!
どうだこれなら侯爵家とアリッサ、両方を守れるだろう!?」
ドヤ顔で語るベン様。
「そうですか」
私は面倒くさいので同じ言葉を繰り返している。
「最後に一つだけ質問してもよろしいですか?
「なんだ?」
「私とアリッサ様、どちらが大切ですか?」
「そんなものアリッサに決まっているだろう!
メアリーの分際でアリッサと同格かそれ以上の存在になれると思っていたのか?
厚かましい女だ!」
今の話を聞いてベン様への愛情が完全になくなりました。
「ベン様のお好きなようになさってください!」
「ありがとう!
メアリーなら分かってくれると思っていた!」
ベン様はそう言って私の手を掴みぶんぶんと振る。
気持ち悪いですわ、あとで手をよく洗って消毒しておきましょう。
「ベン様、今日は我が家での夕食会にトーマ侯爵家の皆様をご招待しているのですが……」
「そんなものはキャンセルだ!
俺が行かなくても両親が参加すれば問題ないだろ!
俺はアリッサにこのことを伝えてくる!」
そう言ってベン様は笑顔で走って行った。
「今日の夕食会は私の十八回目の誕生祝いも兼ねていたんですけどね……」
ベン様は私の誕生日すら覚えていないようです。
「幼馴染を敬愛する婚約者様、そんなに幼馴染を優先したいならお好きにどうぞ。
ただし私との婚約を解消してからにしてくださいね」
隣国に嫁ぐ幼馴染を側で見守るために隣国について行くなどと、世迷言をぬかす婚約者様とは今日でお別れです。
ベン様が今日私に言ったことを父とベン様のお父様のトーマ侯爵に話し、ベン様との婚約を解消します。
「はぁ……夕食会が婚約解消の話し合いの場になるなんて、ベン様のせいで最悪の誕生日になりそうです」
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