【完結】「幼馴染を敬愛する婚約者様、そんなに幼馴染を優先したいならお好きにどうぞ。ただし私との婚約を解消してからにして下さいね」

まほりろ

第1話「幼馴染を優先する婚約者様」



「メアリー・ブラウン!

 俺は隣国に嫁ぐアリッサについて隣国に行く!

 お前は親が決めた婚約者だから仕方がないから結婚してやる!

 結婚後は侯爵家のことはお前が一人で切り盛りしろ!

 年に一回帰国して子作りはしてやるからありがたく思え!」


婚約者で侯爵家の嫡男のベン様にこう言われたとき、私は開いた口が塞がりませんでした。


ある日のお昼休み、ベン様が私のクラスに訪ねてきた。


そのまま「大切な話がある」と言われ裏庭に連れて行かれました。


今日は私の誕生日、もしかしてプレゼントを渡されるのかしら?


人前だと恥ずかしくてプレゼントを渡せないのね。


ベン様にも可愛いところがあるじゃないと期待した私は愚かでした。


……まさかこんな話をされるとは。


ベン様は漆黒の髪に黒真珠の瞳の見目麗しい少年。


そしてベン様の幼馴染のアリッサ様は、公爵家の令嬢。


アリッサ様は腰まで届くふわふわの金色の髪に、サファイアのような青い瞳、メリハリがついたナイスバディの目鼻立ちが整った美人です。


対する私は伯爵家の長女で、土のような茶色の髪と瞳に、メリハリが少ない幼児体型、ブスでも美人でもない地味な顔立ち。


ベン様が美人の幼馴染を自慢したいのはわかるわ。だからって地味な私を傷つけていい理由にはならない。


「ベン様一つ確認します」


「なんだ?」


「ベン様はアリッサ様がお好きなのですか?」


「アリッサへの感情は好きとか嫌いとかそんな生々しいものではない!

 俺は女神のように美しいアリッサを敬愛しているのだ!

 美麗な女神像を信仰するのに理由があるのか?

 いや、いらないだろう!

 秀麗なものにはそれだけの価値があるのだから!」


キラキラと目を輝かせて熱弁するベン様。


「はあ……そうですか」


だめだ何を言ってもこの人には響かない……。


私はこのときベン様に期待するのを止めました。


ベン様は私との約束をすっぽかし、アリッサ様からの呼び出しを優先してきた。


今までベン様にはお茶会、学園主催のパーティ、王家主催のパーティ、誕生日、婚約記念日……ありとあらゆるイベントをすっぽかされてきた。


アリッサ様の家から使いが来ると、ベン様は理由も聞かずに飛び出して行ってしまう。


そしてそのまま帰ってこず、翌日「アリッサのお見舞いに行った」、「アリッサとカフェに行った」、「アリッサとお芝居を見てきた」と得意げに話すのです。


ベン様は、

「アリッサが病気のとき一人でいるのは心細いと言うから」

「アリッサが知らないお店に一人で入るのが怖いと言うから」

「アリッサが一人で芝居を見たくないと言うから」

と弁解した。


お見舞いはともかく、婚約者との予定をドタキャンして婚約者以外の女性とカフェやお芝居に行くのはいかがなものかと思いますわ。


浮気と取られても文句は言えませんよ。



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