🐻

3

 ヤン一家はなにかの事件に巻き込まれて行方不明、とゆうことになった。


 ベティちゃんの標本棚はずっと、空のままだ。


 ヤンはアメリカでがんばってる。


 標本棚を見るたび、ぼくたちは気持ちを強くした。




 「フウ、夏休み、一緒に沖縄に、」

 朝顔のスケッチをしながらハルカが耳元できいてくる。

 「いかない!」

 ぼくは思いきりハルカの顔を手で押し退けて、

 「悪いけどぼくは、東京ばな奈ほど安くはないんだ」

 「まだ気にしてるの? 東京ばな奈はさいこうのお菓子だ」

 「知らないよ! それに夏休みは、パパがジョン・ミューアにあいくって」


 「と、ゆうことは、あれですね!」

 シュウがうれしそうに顔を上げた。はれやかにメガネをずり上げる。

 「あれだ、」

 ハルカも笑う。

 「やっぱりお義父さんは、フウに甘い」

 「なにそれどうゆうこと?」


 笑うみたいにトンビがないて、ぼくたちは梅雨間近の空を仰いだ。

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【🐻完結 5分読書①🔫】ベティちゃん誘拐殺人事件 浩太 @umizora_5

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