第13話 学園祭? 生徒会? あんまり関わりたくねぇなぁ……。

 夏期の長期休暇が終わり、学校の大きな行事の一つである学園祭の準備が始まるのはこの時期だ。

 ちなみに遺跡から一日で戻ったら、学園長が呆れた顔で嫌味を言ってきたが、とりあえず詳細を報告し、更に呆れられた。

 んじゃこの金庫開けてみて? 的な挑発をされたので、本棚の奥にある重要書類が入ってそうな大きさの隠し金庫を指された。

 仕方がないので普段持ってるのピッキング道具を出して、一分以内に開けてやったらため息を吐かれた。

 とりあえず蓋を閉めて、今度は横にあるダイヤルをカリカリと左右に回し、取っ手をガチャリと九十度捻って開けると、目元を押さえながら手を払う様にしながら出て行ってちょうだいと言われたので、ついでなので魔力関知式にしてはどうですか? と言って退室した。

 まぁ、そんな感じで報告は済んだが、数日後に結局は王立考古学研究所という名目で、金貨三枚分が振り込まれていた。

 翻訳とかって単語数で値段が変わるとかって聞いた事があるし、ましてや解読できなかった文字と、暗証番号なしでの開錠って事で、それなりに出たんだろう。

 ちなみにプルメリアの倉庫への荷物運び三百日分だ。

 だらけない様にする為に、何となくで働いてるだけだから気にしてはいなかったけど、長期休暇が終わって倉庫の人達が悲しんでたとか、学校辞めてうちで働かないか? と本気で勧誘されたらしい。

 まぁ、残りの長期休暇は大体こんな感じだった。俺? 相変わらず用務員さんに混じって、学校内の修理関係の手伝いしてたよ。


「ルーク。学園祭のクラスの代表になってくれないか?」

「嫌です」

 午後の授業が全て学園祭の話し合いになっているが、開口一番で出たディル先生の一言がこれだ。

「何回も通ってて、教師経験もあるんだから勝手もわかってるだろ?」

 ディル先生は眉間に皺を寄せながら首を傾げた。

「だから嫌なんですよ。なのでアッシュを推薦します。学園生活の良い思い出作りに関しては、俺はもう十分です」

 俺はアッシュの座っている方を向き、何となく言ってみる。

「おい、なんで僕を巻き込むんだよ」

「リーダーシップを十分に発揮してくれ。ってか、実質クラスのまとめ役みたいなもんだろ?」

「なら主席のカルバサがいいだろ。僕は部活で放課後は忙しいんだよ」

「俺も期待の新人って事で、学園祭の模擬戦の訓練が忙しいぞ。ならルークがいいだろ? 活動してるかどうかわからない、薬草部とか錬金術部とか魔法理論部を掛け持ちしてるんだから」

「はぁ? 結構活動してるんだが? ランプの光源をいかに低燃費で明るくする研究とかで、今は論文をまとめてんだぞ?」

 現行してるモデルで俺も関わってるけど、自慢してるっぽくなるのから、それは黙っている。

「んじゃー……。誰もやりたくないんじゃ投票にすっか」

 ディル先生は持ってきた箱を逆さにしてバンバン叩きながら言っているが、最初から投票にするつもりだったな? 相変わらず面倒くさがりな人だ。

 ってかほぼこの三人の誰かに決まりじゃん。

「んじゃこのなにも書いてない紙に、名前書いて入れろー」

 そして先生は、安くてザラザラした紙を配り始めたので、もう投票は決まりみたいだ……。


「学園祭なんてやらなければ良い……。滅びろ生徒会……」

 俺は呪詛の様につぶやいた。だって大差で俺に表が集まっている。

 ちなみに縦線が四本に横線が一本になっている、日本で言う正の字を書く様な奴が、黒板に四個と数本俺の名前の下にある。

 投票自体を否定したいが、それだと投票制度事態を否定する事になるのでやめておいた。

 ってかこのクラスは三十人のはずだ。おかしい。何で俺に二十三票も入ってるんだ?

「なんで生徒会なんだ?」

 俺がクラス代表になって、教壇に立ってつぶやいた一言に男子の一人が反応した。

「身分とか関係ないって謳ってる学園だけど、実際はスゲー有名な貴族様の子供が毎年の様に生徒会長やってて、半私物化してて好き勝手やってるんだよ。スゲーウゼーのなんのって……。無能なのに威張り散らしてて、副会長とか書記みたいなのとゴチャゴチャ言ったり、陰でなんかブツブツ言ってるから、過去に全員腹パンや太股の外側を蹴って黙らせたら、相手の親と学園長が出るくらい面倒な事になって、在学中も卒業してからもしばらく命を狙われ続けた。ちなみにそこに書類を出しに行くのがクラスの代表。理解したか?」

 もちろん男子は腹パンで、女子が太股の外側だ。子供が産めなくなったとか流れたとか騒がれたくないし。

 まぁ、流れたって言われたら全寮制の学校なのに、どう妊娠したとか諸々反撃材料はあるけど。

「マジかよ……。助かった……。ゴブリン族なんか行ったら、相手にされないな」

「社交界みたいな感じになってるのか」

 候補に挙がっていたカルバサと、アッシュがつぶやいた。他人事だと思いやがって……。

「ムカついたから全員の実家を半壊させたら、事が思いの外大きいってわかったらしく、王様が出て来て暗殺者を送り込むのを止めろって命令が下ったけど。しばらくは各家からの暗殺者が来てたから、そいつ等を全員ごうも……尋問後に殺して家を全壊させた」

 命を狙ってきてるんだから、助けてやる義理もないしな。

「ルークならやりそうだよな?」

「やりそうっていうより、絶対やるわね」

「うん。むしろ再建が始まって良い感じに仕上がりそうな時に壊しに行くと思う」

「王様出てくるのに、止めない方も壊す方も悪くない? 私はそう思うけど」

「俺への遠慮のない意見をありがとう。けどな、こっちが手を出さないと向こうがどんどん暗殺者を送り込んでくるんだよ」

 でもね、その貴族の領土に成長力を爆発的にしつつ種を出さない様にして、シソ科の一年草と掛け合わせて品種改良? 魔改造して、地下茎も冬に死滅するミントの種を、肥沃ひよくな土地にばら蒔いたんだよなぁ。

 土地の栄養を全部吸って他の植物が枯れるか満足に育たないら、二年から三年くらい土地の作物がまともに収穫できなくて、国で備蓄している小麦を出す羽目になったりして、アスターを筆頭に物凄く怒られた。

 いざって時の戦略兵器扱いって事で、種の提出で許されたけど、一瓶没収って酷くない? まぁ、刈り取って放置してると、勝手に根を伸ばしてまた増えるし、地下茎がちょっとでも残っても増えるから、駆除にも時間がかかる。

 根絶やしにしたいなら地下茎も燃やさないといけない、クソ迷惑な奴に仕上がって、個人的に満足している。ちなみに隠してたからあと一瓶残ってる……。

「ま、決まったからにはやらせてもらう。ってな訳でー、基本的に多いのは喫茶店の真似事だな。贔屓ひいきにしてる店から入荷して、儲けとかほとんどなしで提供するのが市民には受けが良い。安く人気店のお菓子が食べられるから。ま、そういうのは貴族の奴が手を回して、他の奴らには売るなって脅して、最終的にはドロドロになるけど、巻き込まれた店舗がかわいそうな事になる。夜逃げ同然で街を出て行くとか……。結果的に人気店が一つ潰れる。市民に影響も出る。とりあえずやりたい物があったら挙手しろ」

「うわ……やりたくねぇ……」

「貴族ってそこまでやるの?」

「もしやるなら、自分達で作れば良いんじゃない?」

 とりあえず過去の例を出してみたが、喫茶店の流れは減っている。面倒だから俺がやりたくないだけだけどな……。

「そういやルークって色々旅してたよな? 他の国の珍しい料理とか知ってるんじゃね?」

 なんかやばい流れになっているな……。勘弁して欲しい……。

「この国じゃあまり食べられない、珍しい料理とか受けは良さそうね。私は賛成よ。覚えれば親にも作ってあげられるし」

 そしてその女子が挙手をして、珍しい料理を提供とか言ったので、俺はため息を吐きながら黒板に書いた。

「もうそれで良いよ。いらない物とか持ってきて、蚤市フリーマーケットをやったってつまらないだろうし。なにより実家が王都にない奴もいるし」

「俺の実家は馬車で五日かかるし……。いいんじゃね? 俺も賛成だ」

 蚤市の可能性は潰れました。アレは値段書いて座ってるだけだから、楽っちゃ楽なんだよな。

 たまに貴族がやって来て、貴族が出した美術品なんかを買っていくけど。



「はい……、異国の簡単軽食になりました……。店名は、食わなきゃソンソンです……。先に言っておくが、飲食店はクソ面倒くさいぞ?」

 俺はテンションだだ下がりで言い、クラスメイトから、なんか簡単な異国の軽食教えてくれーとか言われている。

「お前達……。結局全部俺頼みじゃねぇかよ」

「だってさー、五十年くらい旅してたんだろ? なんかあるだろー」

「うんうん。美味しくて手軽なの絶対知ってるよねー」

 俺はチョークを指に挟み、教壇に両手を付いてため息を吐く。

 なんで中国風な名前になっているとか突っ込みたい気持ちはあるが、この世界にも中国風な国は存在しているし、日本風みたいな島国で独自の文化を遂げている国もある。むしろ世界各国風がある程度存在している。

 刀風な武器や日本風の甲冑を纏いながら、左手を前に出して魔法を使うのは、本物の日本の歴史をある程度知っている俺からすれば、結構異様な光景だった。

 けど日本の有名な武将が魔法とか使う光景を想像しただけで、ちょっと笑えてくる。信長とか、水魔法を使える奴がいたら助かってたとか思うと、ソレはソレで熱いが。

 ちなみにお土産としてこけしも売っているので、こけしちゃんが日本風の国に行ったり、こけしの存在を知ったら怒られるかもしれないが、在学中は多分大丈夫だろう。

「はいはい……。なら経験則から言わせてもらうが、メニューは少ない方が良い。アレコレと頼まれると作るのが面倒だし、客も悩むから選択肢を与えるな。って事で、個人的にホットドックを推したい」

 そう言って黒板に簡単な絵を描き、材料も書き出していく。

「簡単だ。鉄板でソーセージを焼き、端の方でパンを温め、注文があったらそれらを詰めて渡すだけ。ゴミは殆ど出ないし、歩きながら食える。飲み物は他のクラスに任せろ。材料は全部その辺で買えるから店にも迷惑かけない。茹でるのもあるが、個人的に焼いてある方が好きだから焼くぞ」

「教室内で火の使用は可能なの?」

「過去の学生生活で、全て許可が下りている。最悪校庭や闘技場の観客席の通路でも、調理可能なカートの許可をもらえばいい」

「一個いくらだ?」

「ソーセージとパン、野菜の値段によるなぁ……」

 そう言いながら飲食店で働いてた記憶を思い出しつつ、材料一個あたりの単価と、一食分の分量を書き、大体で計算していく。

「儲けなしで銅貨二枚から三枚の間だな。ここに人件費とか運搬費とか材料の維持費とか上乗せしないから、計算が簡単で涙が出る。さらに人手は三十人で使いたい放題。こんな贅沢な事はないな」

「経験豊富なエルフってスゲー」

「出し物としての飲食店なのもあるけど、絵を見る限り銅貨五枚でも休日に街中で見たら絶対買っちゃうわね」

「多分だけど、近所が肉屋で学校に通うまでに働いてた、マユちゃんの伝手つてがあれば更に話はスムーズだろうな」

 俺は嬉々として、イノシシを解体するマユちゃんの姿を忘れる事はないと思う。そんな技術を身につけるまで働いてるって事は、店長も多少贔屓はしてくれるだろう。

「多分平気だと思うよー」

 もう俺があだ名で呼んでも皆は気にしない。だってクラスの半分以上があだ名だし。


「んじゃ黒板の奴を正式な書類にして提出してくるから、解散して良いぞ? 他のクラスは授業中のところもあるから静にな」

 そう言って先生からもらった正式書類に清書していき、俺は立ち上がった。

「私も行こうかな?」

 学園祭の出し物の意見を出し合うのに消極的だったプルメリアだが、長期間同じ街に居続けたから意見が出しにくいって事で、大人しく聞いていただけみたいだ。

「絶対に怒らない?」

「手を出されなければ怒らない」

「なら平気だ。生徒会の偉い奴がよほどの暴君じゃなければだけど。あと、ある程度したら俺も止めるから」

 そう言いながら教室を出て生徒会室のある校舎に行き、最上階の日当たりの良い方へ行くと、なんか数名ほど俺と同じ様な紙を持って並んでいる。

「混んでるな」

「だねー。書類出すだけでしょ? 何で?」

「さぁな」

 そう言いながら最後尾に並び、少し待ってるとドアが開き、生徒がとぼとぼと出てきて俺の後ろに並んだ。

「……何があった?」

「ん? 作法が違うとか言って、書類出すのに追い出された。ここに並んでるのは、そういう奴ばっかりだよ」

「そうか……」

 まだそういうのは健在だったか。クソみてぇな事を未だにやってんのかよ。

 ってか、正しい作法じゃないとやり直しさせます。とでかでかとドアに看板が……。


 ドアが開き、前にいた奴が書類を出せずに怒った顔で出てきた。

「お疲れさん。とりあえずお前等の鬱憤を晴らしてやるよ」

 俺は胸ポケットから屑魔石を二個取り出し、かなり魔力を込めてからドアを少し開け、隙間から投げ入れ、大きな音と昼間なのにドアの隙間から閃光が一瞬だけ見えたので、ドアを開けて堂々と入室する。

「えーっと。スタンプスタンプっと……」

 どこにあるのか知っているので、気を失っていたり、お茶を落としたのか目を押さえて熱がっている奴を無視し、勝手にスタンプを持って書類に押してトレーの真ん中ぐらいに滑り込ませ、そのまま退室してきた。

「馬鹿の相手は程々にな。顔が割れると面倒だから、さっさと帰らせてもらうわ。あ、聞こえてないと思うけど、中の奴には話すなよ?」

 軽く右手を挙げてヒラヒラとさせて歩くが、並んでいる奴が良い笑顔で頭を縦に振ったり、親指を立てている。

 ドアを開けっ放しだったから中の様子は見えているので、大体どんな感じだかは理解していると思う。

「誰だ! 無礼だぞ!」

「叫んでるなぁ。このまま皆に被害が行くかもしれないし……。ちょっと様子見てくわ」

 俺はそう言いながらドアを閉めてもう一度に並び直すが、声的に中の奴が中々快復しない。爆音と閃光が強すぎただろうか?

「気絶してるぞ! 回復魔法をかけろ!」

「わかりました!」

「おー。慌ててるねぇ……」

「お兄ちゃんってさ、たまにやる事が大胆だよね」

「まぁな。特権階級にあぐらをかいて、傲慢ごうまんな奴が嫌いだし。さて、そろそろか」

 俺はドアをノックし、少し待っても返事がないので、ドアを開ける。

「どうしました? 返事もないですし、何か騒がしかったので失礼を承知で入室させていただきましたが」

「う、うむ。痴れ者に生徒会室が襲撃され、一名が気絶させられた。君は……エルフか……。何か見ていないかね?」

「いえ。廊下で待機しておりましたが、その様な者はおりませんでした」

 目つきが鋭く、どう見ても二十台後半にしか見えない彫りが深い男が聞いてきたので素直に答える。

「情報感謝する。で、君はどの様な件で来たんだ? 学園祭用の書類を持っていないが?」

「書類を出すにあたり、わからないところがありましたので、お伺いいたしました」

「ふむ。聞こうか」

 あれ? 以外に普通の対応だな。

「飲食店を出すのですが、火の使用制限と過去に取られた安全対策方法を知りたいのです」

「そうか。火の使用制限だが、三人掛けの机二つ分……六席と言うか六個までだ。過去に取られた安全対策だが、水を出せる魔法使いを常に一人は教室に滞在させる事と、大量の油を使用しない持ち込まない。火の粉が過剰に舞うような物を使わない。もし火の粉が飛ぶようなら、来園した一般人の方に火の粉が飛ばないように仕切を付ける。この辺りを守れば許可は下りる。他はないか?」

「いえ、ありません。ご丁寧にお教えいただき、ありがとうございました」

 一応外面だけは良く見せるのに、頭は下げておく。

「いや、かまわん。あぁ、あと個人的な事なんだが、先日は妹が世話になった。父も喜んでいたよ」

 妹? 父? そういや、アスターの学生時代そっくりだな……。髪の色が違うけど。

「父から何も聞いていないか? ふむ……。ちょっと別室で話せないだろうか?」

「かまいませんよ」

 俺は返事をして、未だに並んでいる生徒達を見る。

「あぁ、卒業後は上官や上司に報告する場合も多いから、生徒会ではその作法を学ばせるために、正式な作法を取らないと最初からやり直しさせている。貴方が思っている生徒会とは、かなり変わった。良い方向に。だから安心して付いて来て欲しい」

 彫りの深い男は生徒開室の横にある、備品や書類を入れておく部屋のドアを開け、中に入っていたので、プルメリアと一緒に入る事にした。


「学校にいる変な髪型のエルフ、一緒にいる銀髪の女性には最大限敬意を払え。怒らせるな、敵に回すな、できるなら恩を売れ。そう言われている。ルークさんですよね? それと婚約者のプルメリアさん」

 テーブルも椅子もないので、立ったまま彫りの深い男がこちらを向いて口を開いた。

「あぁ……。その口振りからすると、親はハ……ん゛んっ。アスターか」

 危うく子供の前で、親の悪口にも聞こえるあだ名を言いそうになった。ってかハゲは悪口だけど。けどあいつハゲてないしなぁ……。

「別に気にしていません。父から散々ハゲと呼ばれていたと、グチを聞いていますので。あと人の目がないので、口調は変えさせてもらいます」

「そうか、もうハゲは訂正したけどな。その妹さんの事で行った時に」

「そうですか。で、先ほどの閃光と爆音は……ルークさんですよね? あぁ。申し遅れました。私はユリウスと言います」

「一応こっちからも名乗ろう。ルークだ。こっちがプルメリア。俺が学生時代の時の生徒会のままだと思ってな。目と耳を潰してからスタンプを押して、そのままトレーに書類を紛れ込ませたから、処理の方は頼む」

 自己紹介されたので、向こうが知っていても、こっちも一応自己紹介をする。

「ふぅ……。父から聞いたままですね。とりあえず生徒会や学園長、国はルークさんのやった事を重く見て、普通の学生がする様な物になっております。次からはしないで下さいね?」

 ユリウスは眉間を押さえながら首を振り、大きくため息を吐いて現状を話してくれた。

「わかった。次からは気をつけよう」

「お兄ちゃんってさ、結構決めつけて動くよね?」

 プルメリアが、なんかニヤニヤしながら話かけてきた。だって先手を打たないと、どうなるかわからないし。

「仕方ないだろう。誰だって数回も通ってる学校の生徒会が変わってるとは思わないし、嫌な思いはしたくない。なら強硬手段に出るしかないだろ?」

「んー。今度から学園の中の事だったら、一回は我慢しよう」

「……うっす」

「本当変わったエルフだ。とりあえず書類の方は探して確認しますが、不備があったらお戻しします。それと……。頼み辛いのですが、学園祭中の巡回警備なんですが、受けてもらえないでしょうか? 教師だけでは数が足りないので。当日は入り口で犯罪歴の検査はしますが、冒険者の方も多く来ますし」

 ユリウスは、なんか申し訳なさそうに言ってきた。今後国王にならなくても、第二第三王子なのは確かなんだし、もう少し偉そうにしてても良い気もするが……。俺が相手だから、こんな態度なんだろうか? それとも素でこれなのか?

「一応クラスの出し物もあるし、空き時間で良いなら」

「助かります。変なナイフを持って、なんかウネウネ動く訳のわからない近接格闘術を使うと聞いていますので。それは無手でも物凄く強いとも聞いています。一般人に威圧感を与えない為にも、巡回は無手で強い方にお願いしているんです」

 あーうん。確かにあれはウネウネしてる気がする。義勇兵時代に知り合いから教わった奴。システマっていうんだけど。こっちに来てからも独自に訓練してたし、それっぽくはなってるはず。

「お兄ちゃんが出るなら私も出るか」

 プルメリアもなんかノリノリだ。何もない所に拳を出して、バシバシ鳴らしてるし。ってかソニックブーム出てません? 音速超えてる拳とかの対処って、俺じゃ絶対に無理なんだけど?

「助かります。女性絡みだった場合、やはり同じ女性の方が対処しやすいので」

「ですよねー。スカートの中とか下着の中とかに物を入れられたら、男性じゃ対処にくいでしょうし」

「同じ女性でも、難しいと思うぞ?」

 薄型テレビとか、スカートの中に入れて店から持ち出そうとしてる防犯カメラの映像とか見た事あるし、アニメとか映画なんかで谷間に機密情報とか入れたりだし。そういや学園長も入れてたな。

「同感です……。ではその様に進めておきますので、当日までには腕章が届くと思いますので、よろしくおい願いします」

「わかった。空き時間に見て回る」

 俺はそう言い、ドアを開けてプルメリアと廊下に出たら、学園長が腕を胸の下で組み、胸を強調させて笑顔で立っていた。

「学園長室ですかね?」

「もちろん」

 そして階段の方を親指でさし、重くなった足取りで学園長室に同行され、校舎内で魔法を使うなと十分ほど注意された。

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