わたしっ推しのスマホに転生しました!!

だら子

今日から私

彼の指がわたしの肩に触れると、震えたくなるぐらい体がポーッとする。

仕事中、少しの時間でも…という気持ちが伝わってくる。


彼はわたしに依存している。そして、わたしも…。



「勉強しないでマサマサばっかり言って、スマホばっかり見てるなら、彼のスマホなればいいわ!」

ママは、キレ散らかしている。


わたし 「白須真帆」はアイドルグループ「mango」の「加藤マサ」を推している。


小学生のとき、いじめられていた。

上履きに落書きされて、泣きながら帰った日、たまたま歌番組で聴こえてきたマサの歌声に癒された。


私は一人じゃない。マサがいる!!!


歌声は私の応援歌になった。


それからずっと、虜。

中学3年生になった今も私は、お小遣い全てをつぎ込んで、マサのグッツを買い、スマホで情報を調べている。彼のSNS、目撃情報を調べるのは全く苦痛じゃないのに、辞書で1個の英単語を調べるのも苦痛。そしてこのテストのありさま。


ひどい点数のテストが見つかったのとママの生理で機嫌の悪さが合わさって、ギャグではない、マジギレの5秒後。もう一度ママが言った。


「あんたはもう、マサのスマホにでもなればいい!!」


その鬼の顔を見て、私は気絶した。






目をさますと、見覚えのある美しい顔が覗き込んでいた。フサフサなまつ毛、小さい顔。高くて形の整った鼻。ちょっと厚ぼったい唇。


マサだ!!がわたしをのぞきこんでいた。その近さにびっくりしたのと、顔の毛穴にひびった。そしてすぐ気がついた。


「転生して、推しのスマホに?わたしが?」


え、「まさかマサのスマホになるなんて」。

あ、オヤジギャグ言ってしまった…。


とりあえず高らかに宣言する。


今日からわたし、推しのスマホになりました!!


マサは、スマホで友人や女の子に連絡をとり読めない漢字や意味がわからない言葉を逐一調べる。プライベートも仕事も熱い男だ。


そりゃ最初は「女子 バッグ」なんて検索されたら、わたしの身体はカーっと熱くなるし、「雰囲気」も読めないなんてショックだった。中学生でも読めるのに、マサ今、高校生でしょ(失笑)


手当たり次第女の子に連絡する夜は、

「俺じゃだめか?」と抱きしめたくなった。

女でスマホだけど。


でも今は、自分のやるべきことを見つけた気がする。


最近芸能人の情報流失すごいでしょ。マサはほんとひどいから、女の子への連絡が。今日もドラマ収録の後、女の子と遊ぶみたい。


今日は、アイドルグループ「juice」のミキちゃんか。この「あざと可愛いタイプの子」に弱いのよね。


とにかく、マサと女の子のやりとりや写真を流失しないようできるのが私のチート能力。週刊文冬に売られたら大変だかね。


この前だって、駆け出しのモデル、ナツキちゃんがマサとのキス写真「流出させたかった」みたいだけどどうしてもデータが送れないらしいって。噂になっていた。文冬デジタルに証拠写真が載せられないんじゃ意味ないよね。信憑性に欠けるし。


あ、わたしの充電がなくなりそう。



みんなっお忙しいようだけど、スマホばかり見ないて、第二話も見てよね!!

あ、そっか。わたしもスマホか(苦笑)

   


 (続く)

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