第11話 彼女の仕事

『で、結局タカナシさんはうちの敷地で何をしているの?』

ハンモックに腰掛けて足をぶらぶらさせながら私は尋ねた。

タカナシさんは『それは難しい質問ですね』と困ったように眉をひそめた。


すると、少し間をおいて『まあ、良いか』とどんぶりを持って立ち上がる。

『付いてきてください。お嬢様。お見せしますよ。』


私はハンモックから飛びおりると、自分が使ったお椀を持ってその背中を追った。

そして、タカナシさんは先ほどラーメンを持って出てきた小屋の扉を私の目の前で開けてくれた。


私は唖然とした。

森があったのだ。


……と言っても部屋の中にウネウネと木が生えていたのではない。

本だ。

本の森だ。

私の背丈よりも高く積み上げられた本の山が狭い部屋のあちこちにニョキニョキと生えている。その圧巻たる光景は『森』と呼ぶにふさわしい。


『どうですか?驚きました?ここが寝室兼仕事部屋です』

タカナシさんがニヤニヤといたずらっ子のように笑っていた。

私はそんな彼女をただポカンとした表情で見つめる。

『どうゆうこと?』

『タカナシの仕事はここで本を読むことです』

『そんな仕事あるの?』

『ええ。ここにある本をとにかく片っ端から読むこと。それがお嬢様のご両親から命じられたタカナシの仕事です』

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